「ぐああぁぁっ」
登場するや否や、ユラは尻尾を使って鈴木を薙ぎ払う。
ぶんっと振り回された尻尾をモロに喰らった鈴木が、数メートル飛ばされた。
いつやって来たんだ?
あ、もしかしてひとつだけ遠くにあった気配って、ユラだったのか!?
「ユタ……ユタドラゴン……成体……」
「マズいんじゃないのか」
「アルパディカも六頭……自由を手に入れる前に、これじゃあ死んでしまう……」
ユラの登場は獣人族に効果的だったようだ。
ユタのスピードにも劣らない獣人族も、成体のユタドラゴンには勝てないってことか。
「ひいぃぃっ」
「ぎゃああぁぁっ」
あちこちで悲鳴が上がる。獣人、人間。どっちの悪党もアルパディカの奥様方やユタ、そしてレイアの攻撃に逃げ回っていた。
「クソッ。ドラゴンだと? こんなチビがか!?」
「あら。チビというけれど、私よりあなたの方、が、チビじゃないかしら?」
「ぅぐ……クソッ、クソがっ。てめぇら! 一旦出直しだっ。獣人ども、俺たちが前略的撤退を成功させるまで、こいつらを押さえとけよっ」
す、鈴木……戦略的撤退って、お前。カッコよく言ってるけど、それただ逃げるだけだろ?
「あら、逃げるの?」
「獣人ども、命令だ! こいつらと戦えっ。バンッ、バンバンッ」
「ぅぐ、ぐぎぎぎぎぎぎっ」
「う、うぐああぁぁぁぁっ」
命令に逆らえないんだ。「バン」がスイッチなのか。
無理やり従わせて、自分だけ逃げようって。あいつらしいと言えばあいつらしいが、人の命までかかっているんだぞ!
無我夢中で襲って来る獣人たち。殺意はなく、ただただ苦痛に顔を歪めて襲ってくる。
「ガキども! あのデカい方のトカゲにしがみつけっ。行け! バンッ」
「痛いっ」
「うわあぁぁぁん」
なっ。子供まで連れて来ていたのか!?
見た目はニーナぐらいだ。七、八歳ぐらいの子だろう。もう少し小さい子、大きい子もいる。
十数人の子供たちが、泣き叫びながらユラへと群がった。
「ちょっと、止めなさい。子供は――」
「ユラッ。その子たちは鈴木に操られているんだっ。だから」
「わかってるわ。でもこれじゃっ、あ、危ないから離れなさい」
自分にも子供がいる。だからだろう。ユラは獣人の子供に手を出せないでいた。
「ちっ。大人はともかくだ、ガキはさすがにやれねぇ」
「そうね。種族が違えど、子供は……」
「なんって卑怯な人間なのよ。あぁん、逃げ足だけは速いんだからっ」
「とりあえず、子供たちを捕まえるとしようではないか」
氷が得意なアルパディカのディアがふぅっと息を吹くと、傍にいた子供たちの足に氷でできた枷がはめられた。
「うわぁぁん、取れない。取れないよぉ」
「助けて。殺さないで。食べないで」
「食べないから安心なさい。あなたたちよりニンジンの方が、よっぽど美味しいに決まっている」
ニンジンと比べるのはどうかと思う。
他の奥様方も次々と子供たちを捕まえ、気づけば大人の方は大部分が逃げていった。
鈴木を追いかけたのだろうか?
あいつの「バン」の効果はまだ持続中なようだ。さっきよりは少し痛みは引いたようで、呻くほどではない。でも、顔は時々、苦痛に歪むことがある。痛みの波でもあるかのように。
「くっ……お、お前を……お前を捕まえて、連れて行けば……」
「もうやめよう。鈴木は逃げたんだっ。あんたらを捨てて逃げたんだよ!」
「だと、しても……連れて行けば……」
そうか。鈴木がどこに逃げたのか知っているんだ。そこに俺を連れて行けば、あの痛みから解放されて自由になれる――そう、信じているんだな。
でもな、悪党が約束を守るなんて思ってはダメだ。そんなの、現実でも漫画でも必ず裏切るって決まっているんだ。
「鈴木を信用するなっ」
「信用など、して、いない。だが、こうするしか……お前に恨みはない。すまないっ」
そんな……信用はしないのに、奴の言葉に従うのか?
飛びかかてきた獣人族。ユラは子供の相手で手いっぱいだ。
俺が自分で――その時、小さな影が躍り出た。
「クアッ!」
「ぐっ」
赤い鮮血が飛び散る。その血は……獣人族の腕から流れたものだった。
「クククククッ。シドー、オイラ、マモル! オマエ、ワルイ!!」
「オレが悪い……あぁ、そうだな。悪党の言い成りになるオレは、悪い獣人だ。だがこうしなければ、守れないのだ! 悪く思うなよっ」
守れない。彼は守れないと言った? それは自分のことではない、他の誰かの事だろう?
その誰かというのが誰の事なのか、すぐにわかった。
再び襲い掛かる獣人の男。だが彼は突然、ガクっと体勢を崩した。
その足からわずかに血が流れている。もしかしてさっきユタが腕を攻撃した時に、足にも一撃加えていたのか!?
「クアアァーッ!」
鋭い爪を振り上げるユタは、そのまま跳躍。
男は諦めたのか、それとも腕を犠牲にしてでもと考えたのか、顔の前で両腕をクロスさせた。
その時、瓦礫の向こうから飛び出してきた影がある。
「兄ちゃんを殺さないでっ」
女の子だ。獣人の女の子が両手を広げて飛び出してきた。
「ユタ、待つんだ!!」
「ンアッ」
ユタは振り上げた腕をすぐに引っ込め、更にアルマジロのように体を抱えて丸くなった――で、そのままの勢いで女の子へ衝突。
「きゃあぁっ」
「グエェ」
二人がごろごろと転がった。そこへ男が飛び出して、転がる二人を受け止める。
「パティ!!」
女の子が飛び出して来た時、「兄ちゃんを」って言った。
この二人は、兄妹!?
そして男が守る相手とは、この子なのか。
その男の首筋には、白銀の刃が添えられている。
レイアだ。
「大人しくして。殺したくはないの。でも……あなたが志導くんを傷つけるというなら、私は……やらなきゃいけないの」
「レイア……君にそんなこと、させたくない。なぁ、頼むよ。もう止めよう。鈴木はここにはいないんだし、もう」
「無理だっ。この……この隷属の首輪がある限り、オレたちに自由はない!」
隷属の……首輪?
あ、あぁ。首輪をしているな。全員同じ首輪……。
その首輪を意識して見たことで、解析眼が発動した。
「あー、その首輪。外せるけど?」
俺がそう話すと、男は女の子を抱きかかえたままこちらをじっと見つめる。
それから。
「はあぁぁぁぁぁ?」
っと、間の抜けた声で叫んだ。
登場するや否や、ユラは尻尾を使って鈴木を薙ぎ払う。
ぶんっと振り回された尻尾をモロに喰らった鈴木が、数メートル飛ばされた。
いつやって来たんだ?
あ、もしかしてひとつだけ遠くにあった気配って、ユラだったのか!?
「ユタ……ユタドラゴン……成体……」
「マズいんじゃないのか」
「アルパディカも六頭……自由を手に入れる前に、これじゃあ死んでしまう……」
ユラの登場は獣人族に効果的だったようだ。
ユタのスピードにも劣らない獣人族も、成体のユタドラゴンには勝てないってことか。
「ひいぃぃっ」
「ぎゃああぁぁっ」
あちこちで悲鳴が上がる。獣人、人間。どっちの悪党もアルパディカの奥様方やユタ、そしてレイアの攻撃に逃げ回っていた。
「クソッ。ドラゴンだと? こんなチビがか!?」
「あら。チビというけれど、私よりあなたの方、が、チビじゃないかしら?」
「ぅぐ……クソッ、クソがっ。てめぇら! 一旦出直しだっ。獣人ども、俺たちが前略的撤退を成功させるまで、こいつらを押さえとけよっ」
す、鈴木……戦略的撤退って、お前。カッコよく言ってるけど、それただ逃げるだけだろ?
「あら、逃げるの?」
「獣人ども、命令だ! こいつらと戦えっ。バンッ、バンバンッ」
「ぅぐ、ぐぎぎぎぎぎぎっ」
「う、うぐああぁぁぁぁっ」
命令に逆らえないんだ。「バン」がスイッチなのか。
無理やり従わせて、自分だけ逃げようって。あいつらしいと言えばあいつらしいが、人の命までかかっているんだぞ!
無我夢中で襲って来る獣人たち。殺意はなく、ただただ苦痛に顔を歪めて襲ってくる。
「ガキども! あのデカい方のトカゲにしがみつけっ。行け! バンッ」
「痛いっ」
「うわあぁぁぁん」
なっ。子供まで連れて来ていたのか!?
見た目はニーナぐらいだ。七、八歳ぐらいの子だろう。もう少し小さい子、大きい子もいる。
十数人の子供たちが、泣き叫びながらユラへと群がった。
「ちょっと、止めなさい。子供は――」
「ユラッ。その子たちは鈴木に操られているんだっ。だから」
「わかってるわ。でもこれじゃっ、あ、危ないから離れなさい」
自分にも子供がいる。だからだろう。ユラは獣人の子供に手を出せないでいた。
「ちっ。大人はともかくだ、ガキはさすがにやれねぇ」
「そうね。種族が違えど、子供は……」
「なんって卑怯な人間なのよ。あぁん、逃げ足だけは速いんだからっ」
「とりあえず、子供たちを捕まえるとしようではないか」
氷が得意なアルパディカのディアがふぅっと息を吹くと、傍にいた子供たちの足に氷でできた枷がはめられた。
「うわぁぁん、取れない。取れないよぉ」
「助けて。殺さないで。食べないで」
「食べないから安心なさい。あなたたちよりニンジンの方が、よっぽど美味しいに決まっている」
ニンジンと比べるのはどうかと思う。
他の奥様方も次々と子供たちを捕まえ、気づけば大人の方は大部分が逃げていった。
鈴木を追いかけたのだろうか?
あいつの「バン」の効果はまだ持続中なようだ。さっきよりは少し痛みは引いたようで、呻くほどではない。でも、顔は時々、苦痛に歪むことがある。痛みの波でもあるかのように。
「くっ……お、お前を……お前を捕まえて、連れて行けば……」
「もうやめよう。鈴木は逃げたんだっ。あんたらを捨てて逃げたんだよ!」
「だと、しても……連れて行けば……」
そうか。鈴木がどこに逃げたのか知っているんだ。そこに俺を連れて行けば、あの痛みから解放されて自由になれる――そう、信じているんだな。
でもな、悪党が約束を守るなんて思ってはダメだ。そんなの、現実でも漫画でも必ず裏切るって決まっているんだ。
「鈴木を信用するなっ」
「信用など、して、いない。だが、こうするしか……お前に恨みはない。すまないっ」
そんな……信用はしないのに、奴の言葉に従うのか?
飛びかかてきた獣人族。ユラは子供の相手で手いっぱいだ。
俺が自分で――その時、小さな影が躍り出た。
「クアッ!」
「ぐっ」
赤い鮮血が飛び散る。その血は……獣人族の腕から流れたものだった。
「クククククッ。シドー、オイラ、マモル! オマエ、ワルイ!!」
「オレが悪い……あぁ、そうだな。悪党の言い成りになるオレは、悪い獣人だ。だがこうしなければ、守れないのだ! 悪く思うなよっ」
守れない。彼は守れないと言った? それは自分のことではない、他の誰かの事だろう?
その誰かというのが誰の事なのか、すぐにわかった。
再び襲い掛かる獣人の男。だが彼は突然、ガクっと体勢を崩した。
その足からわずかに血が流れている。もしかしてさっきユタが腕を攻撃した時に、足にも一撃加えていたのか!?
「クアアァーッ!」
鋭い爪を振り上げるユタは、そのまま跳躍。
男は諦めたのか、それとも腕を犠牲にしてでもと考えたのか、顔の前で両腕をクロスさせた。
その時、瓦礫の向こうから飛び出してきた影がある。
「兄ちゃんを殺さないでっ」
女の子だ。獣人の女の子が両手を広げて飛び出してきた。
「ユタ、待つんだ!!」
「ンアッ」
ユタは振り上げた腕をすぐに引っ込め、更にアルマジロのように体を抱えて丸くなった――で、そのままの勢いで女の子へ衝突。
「きゃあぁっ」
「グエェ」
二人がごろごろと転がった。そこへ男が飛び出して、転がる二人を受け止める。
「パティ!!」
女の子が飛び出して来た時、「兄ちゃんを」って言った。
この二人は、兄妹!?
そして男が守る相手とは、この子なのか。
その男の首筋には、白銀の刃が添えられている。
レイアだ。
「大人しくして。殺したくはないの。でも……あなたが志導くんを傷つけるというなら、私は……やらなきゃいけないの」
「レイア……君にそんなこと、させたくない。なぁ、頼むよ。もう止めよう。鈴木はここにはいないんだし、もう」
「無理だっ。この……この隷属の首輪がある限り、オレたちに自由はない!」
隷属の……首輪?
あ、あぁ。首輪をしているな。全員同じ首輪……。
その首輪を意識して見たことで、解析眼が発動した。
「あー、その首輪。外せるけど?」
俺がそう話すと、男は女の子を抱きかかえたままこちらをじっと見つめる。
それから。
「はあぁぁぁぁぁ?」
っと、間の抜けた声で叫んだ。



