嫌がらせが人の形をして息をしている。何か問題でも?

ヒューマンドラマ

嫌がらせが人の形をして息をしている。何か問題でも?
作品番号
1767676
最終更新
2025/12/03
総文字数
8,385
ページ数
3ページ
ステータス
完結
いいね数
0
 お前は、生きているだけで「嫌がらせ」になるんだ。
 面白くて、笑いが止まらないな。

 * * *

 ヘンリーの「父親」であるミルズ侯爵は、大変邪悪な人間である。

 ミルズ侯爵は、政略で結ばれた妻に興味を示さず、とある貴族夫人との関係にのめりこんだ。愛情のない生活に長年耐えていた侯爵夫人は、結婚から十年過ぎた頃、破れかぶれとなり自分もまた「火遊び」をする。

 その時期に生まれたのが、ヘンリーだった。

 夫人は出産に命を使い果たし、息子の生まれに関して自らの言葉で語る前に死んだ。

 社交界のゴシップ好きから、侯爵家の使用人や出入りの業者に至るまで、誰もがヘンリーの父はミルズ侯爵ではないと知っていた。

 しかし、ミルズ侯爵はヘンリーを嫡子として認めた。

 正妻が産んだ最初で最後の子であるからして、侯爵家の跡継ぎとして遇するのは当然であると、内外に示したのだ。

 結婚以来、死ぬまで妻を顧みることもなかった男が、ついに情を示したのか?

 そうではなかった。

 ミルズ侯爵は、自分の弟や甥のことが大嫌いだったのだ。彼らに対しての嫌がらせとして、ヘンリーが生きることを認めたのだった。ヘンリーはそう信じていた。

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