僕は真宙さんの気持ちを知ることができて嬉しかったのに、素直には喜べなかった。たまらなく胸が苦しくなる。思わず、繋いだままの手を強く握り、もう片方の手を重ねた。忘れていたわけではないが、僕は寮生なのだ。この夏休みが終わる直前には、当然、高校の寮へ戻らなければならない。そして今は、八月二十二日。夏休みは残りわずかだ。つまり今後、僕は高校を卒業するまで、真宙さんとは簡単には会えなくなるということだった。
卒業までの半年間は、きっと忙しい日々が続くだろう。最後の文化祭、体育祭。そして大学受験へ向けての猛勉強。好きな人とデートに行く余裕があるかどうかはわからない。けれど、それでも僕は真宙さんとの時間を諦めたくなかった。
「真宙さん……」
「うん?」
「真宙さんの……、スマホの番号教えてください。僕、次の冬休みにはまた帰ってきます。秋も、連休で帰れそうなときは帰ってくるし、ちゃんと連絡もします。会えないときは電話もします……。だから、忘れないで好きでいてください……」
「葵くん……、俺は――」
「僕は真宙さんからしたら、まだ子どもだけど……。がんばって早く大人になるので、待っててくれませんか……。僕、真宙さんと、つっ……、付き合いたいです……」
真宙さんと付き合いたい。真宙さんの彼氏になりたい。真宙さんとスマホの番号を交換して、電話をしたり、メッセージでたくさんおしゃべりをしたい。休みが合うときには、僕は必ず帰ってくるようにするから、そのときはデートだってしてみたい。それから――。
「それから来年、大学もおんなじとこ受けたいです……。真宙さんと……」
僕は今、ちょっと理性を失っているのかもしれない。好きな人が在籍していて、しかもその人が両想いだったというだけで、大学を決めるべきではない。それくらいのことはちゃんと頭で理解している。けれど、僕は真宙さんとなるべく一緒にいたくて、離れている時間を思うと寂しくてたまらなくて、もうそれしか選択肢が頭に浮かばなかった。
「ずっと、一緒にいたいです……」
「葵くん、こっち見て」
真宙さんは懇願する僕の頬に、そっと手を当てる。それから、覗き込むようにして僕を見つめた。真宙さんが今、なにを考えているのか、不思議なほど伝わってきて、僕はぐっと目を瞑る。そのあと、僕の唇は真宙さんのそれによって、優しくふさがれた。
「んっ……」
これまで経験した緊張感や、胸の高鳴りなんか比べものにならないほど、胸がドキドキした。それはもう今にも胸が爆発してしまうのではないか、と思うほどだ。はじめてのキスは、思っていたよりも長くて、真宙さんの唇は見た目からは想像もつかないほど柔らかく、熱を持っていた。どのくらいそうしていたのかわからないが、必死に止めていた呼吸がちょっと苦しくなってきた頃、真宙さんの唇はそっと僕の唇から離れていった。僕はわずかに寂しさを感じたが、間もなく。僕の体は、真宙さんにぎゅうっと抱きしめられた。
「真宙さ――……」
「こちらこそ、彼氏になってください。よろしくお願いします……!」
真宙さんがそう言った途端、ただでさえ火照っていた僕の頬はさらに熱を帯びる。
「じゃあ、あの……、あ、あの――」
「葵くん、大好きだよ……」
耳元で囁かれ、抱きしめられ、頬だけではなく、体じゅうが火照るものの、僕もまた真宙さんを強く抱きしめる。今夜は夜風があるとはいえ、あいかわらずの熱帯夜。体はもう汗だくだった。それなのに、真宙さんの体温は途方もなく気持ちよく感じられて、僕は恥じらいを忘れて、彼の胸の中で思いっきり甘えた。
卒業までの半年間は、きっと忙しい日々が続くだろう。最後の文化祭、体育祭。そして大学受験へ向けての猛勉強。好きな人とデートに行く余裕があるかどうかはわからない。けれど、それでも僕は真宙さんとの時間を諦めたくなかった。
「真宙さん……」
「うん?」
「真宙さんの……、スマホの番号教えてください。僕、次の冬休みにはまた帰ってきます。秋も、連休で帰れそうなときは帰ってくるし、ちゃんと連絡もします。会えないときは電話もします……。だから、忘れないで好きでいてください……」
「葵くん……、俺は――」
「僕は真宙さんからしたら、まだ子どもだけど……。がんばって早く大人になるので、待っててくれませんか……。僕、真宙さんと、つっ……、付き合いたいです……」
真宙さんと付き合いたい。真宙さんの彼氏になりたい。真宙さんとスマホの番号を交換して、電話をしたり、メッセージでたくさんおしゃべりをしたい。休みが合うときには、僕は必ず帰ってくるようにするから、そのときはデートだってしてみたい。それから――。
「それから来年、大学もおんなじとこ受けたいです……。真宙さんと……」
僕は今、ちょっと理性を失っているのかもしれない。好きな人が在籍していて、しかもその人が両想いだったというだけで、大学を決めるべきではない。それくらいのことはちゃんと頭で理解している。けれど、僕は真宙さんとなるべく一緒にいたくて、離れている時間を思うと寂しくてたまらなくて、もうそれしか選択肢が頭に浮かばなかった。
「ずっと、一緒にいたいです……」
「葵くん、こっち見て」
真宙さんは懇願する僕の頬に、そっと手を当てる。それから、覗き込むようにして僕を見つめた。真宙さんが今、なにを考えているのか、不思議なほど伝わってきて、僕はぐっと目を瞑る。そのあと、僕の唇は真宙さんのそれによって、優しくふさがれた。
「んっ……」
これまで経験した緊張感や、胸の高鳴りなんか比べものにならないほど、胸がドキドキした。それはもう今にも胸が爆発してしまうのではないか、と思うほどだ。はじめてのキスは、思っていたよりも長くて、真宙さんの唇は見た目からは想像もつかないほど柔らかく、熱を持っていた。どのくらいそうしていたのかわからないが、必死に止めていた呼吸がちょっと苦しくなってきた頃、真宙さんの唇はそっと僕の唇から離れていった。僕はわずかに寂しさを感じたが、間もなく。僕の体は、真宙さんにぎゅうっと抱きしめられた。
「真宙さ――……」
「こちらこそ、彼氏になってください。よろしくお願いします……!」
真宙さんがそう言った途端、ただでさえ火照っていた僕の頬はさらに熱を帯びる。
「じゃあ、あの……、あ、あの――」
「葵くん、大好きだよ……」
耳元で囁かれ、抱きしめられ、頬だけではなく、体じゅうが火照るものの、僕もまた真宙さんを強く抱きしめる。今夜は夜風があるとはいえ、あいかわらずの熱帯夜。体はもう汗だくだった。それなのに、真宙さんの体温は途方もなく気持ちよく感じられて、僕は恥じらいを忘れて、彼の胸の中で思いっきり甘えた。
