朝食を食べてゆっくりした後で、あざらしは家の中を掃除していく。
大掃除はいつも年末にやっているが、それとは別に、今日の内にやっておきたかった。
部屋の風通しをし、踏み台に乗って電灯を拭いたり、はたきで埃を落として、部屋の隅から隅まで掃除機を掛け、消臭剤を掛けて客用布団を干す。掃除が済めば買い物にも行った。いつもより多く食材を購入する。
まだ話してはいないが、断られる気はしなかった。──白熊を、自宅に泊める。
泊めてもらったからそのお礼に、というのもあるが、一番の理由は、あざらしの自宅なら誰もいないから。そう考えて、あざらしの顔は赤くなる。誤魔化すように買ってきたばかりの食材を冷蔵庫に詰めていく。
先週の土曜日、おにぎり屋の日替わりおにぎりは、赤飯だったらしい。白熊の祖母に明らかに声を聞かれていたのだろう。昨日会った時にそのことが頭にあって、少し気まずかった。
受け入れてくれる白熊の祖母の気持ちは嬉しいが、やはり恥ずかしいものは恥ずかしい。かといって、もうやめてくれとは微塵も思えない自分は、かなりのすけべになってしまったのだろう。
明日は、クリスマス。恋人達にとっては特別な日。……まあ、それは今日でも言えることだが、今日は準備の一日にする。明日明後日をゆっくり、白熊と過ごす為に。
「……わがまま言っても、いいんですよね?」
確認するように呟くと、脳裏に、白熊の笑顔を思い浮かべる。昨日も会ったのに、もう会いたい。早く一緒に住めるようになりたいと思いながら、台所を離れて勉強机に向かった。
宿題が出ているんだ、進めていかないと。やる余裕がなくなってしまうかもしれないし。
机の上に必要なものを全部出して、それからは一言も発することなく宿題をやっていくあざらし。白熊と勉強した所が出てきた時は、少し笑みが溢れてしまった。
また学校が始まったら一緒に勉強をしたいが、祖母の手伝いもあるだろうから、週に何回、と決めた方がいいはず。そういうことも、白熊と話し合っていきたい。
昼頃から始めていたが、あざらしの集中力は夕方まで続き、スマホのバイブ音で顔を上げた。
誰からだろうと思うのと同時に、白熊からだったらいいなと考えていたら、白熊からで、しかも電話だった。
すぐに電話に出ると、あざらし君と、嬉しそうに白熊から呼ばれる。
『今、大丈夫だった?』
「大丈夫です。宿題やっていました」
『初日からちゃんとやるなんて偉いね』
「明日、思いっきり楽しみたいので」
『……そんなに、楽しみにしてくれてるんだ』
「もちろんですよ」
その後、待ち合わせをどこにするか、何時に集まるかを話し合った後、白熊が鮫島や斑鳩との話をしてきて、あざらしはそれを楽しそうに聞いていた。
『だから今日の夕食は、ベルーガが作ってくれることになって』
「洋食屋さんでしたよね、ご実家。美味しそうです」
『食べに来る? そのまま泊まる?』
「人数が増えたら大変だと思うので、またの機会に。……それと」
『ん?』
明日、言おうかと思っていたが、このまま訊いてみることにした。
「明日、僕の家に泊まりませんか?」
『……いいの?』
「是非」
『……ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えて』
嬉しそうに言ってくれる白熊の声に、あざらしの頬も緩んでくる。明日、ここに白熊が来るのが、これで決まった。
「一日中、一緒にいられますね」
『最高のクリスマスだね』
「はい!」
『……忘れられないクリスマスにしようね』
「しましょう、はい!」
夕方のチャイムが外で鳴り響く。
あざらしが外に視線を向けると、もう日は暮れて真っ暗だった。冬は暗くなるのが早い。
白熊用の布団を取り込まないといけないと思い出し、名残惜しいが、電話を切ることにした。
「では、そろそろ」
『うん。……あのね、あざらし君』
「何ですか?」
『……好きだよ。今ね、すっごい好きって言いたくなった』
「……好きです。僕も、白熊先輩のこと、大好きです」
ありがとう、の声に、こちらこそ、と返して、あざらしは通話を終えた。
「……好き」
頭の中で思い浮かべた白熊の笑顔に、もう一度想いを伝えて、あざらしはベランダに向かった。
大掃除はいつも年末にやっているが、それとは別に、今日の内にやっておきたかった。
部屋の風通しをし、踏み台に乗って電灯を拭いたり、はたきで埃を落として、部屋の隅から隅まで掃除機を掛け、消臭剤を掛けて客用布団を干す。掃除が済めば買い物にも行った。いつもより多く食材を購入する。
まだ話してはいないが、断られる気はしなかった。──白熊を、自宅に泊める。
泊めてもらったからそのお礼に、というのもあるが、一番の理由は、あざらしの自宅なら誰もいないから。そう考えて、あざらしの顔は赤くなる。誤魔化すように買ってきたばかりの食材を冷蔵庫に詰めていく。
先週の土曜日、おにぎり屋の日替わりおにぎりは、赤飯だったらしい。白熊の祖母に明らかに声を聞かれていたのだろう。昨日会った時にそのことが頭にあって、少し気まずかった。
受け入れてくれる白熊の祖母の気持ちは嬉しいが、やはり恥ずかしいものは恥ずかしい。かといって、もうやめてくれとは微塵も思えない自分は、かなりのすけべになってしまったのだろう。
明日は、クリスマス。恋人達にとっては特別な日。……まあ、それは今日でも言えることだが、今日は準備の一日にする。明日明後日をゆっくり、白熊と過ごす為に。
「……わがまま言っても、いいんですよね?」
確認するように呟くと、脳裏に、白熊の笑顔を思い浮かべる。昨日も会ったのに、もう会いたい。早く一緒に住めるようになりたいと思いながら、台所を離れて勉強机に向かった。
宿題が出ているんだ、進めていかないと。やる余裕がなくなってしまうかもしれないし。
机の上に必要なものを全部出して、それからは一言も発することなく宿題をやっていくあざらし。白熊と勉強した所が出てきた時は、少し笑みが溢れてしまった。
また学校が始まったら一緒に勉強をしたいが、祖母の手伝いもあるだろうから、週に何回、と決めた方がいいはず。そういうことも、白熊と話し合っていきたい。
昼頃から始めていたが、あざらしの集中力は夕方まで続き、スマホのバイブ音で顔を上げた。
誰からだろうと思うのと同時に、白熊からだったらいいなと考えていたら、白熊からで、しかも電話だった。
すぐに電話に出ると、あざらし君と、嬉しそうに白熊から呼ばれる。
『今、大丈夫だった?』
「大丈夫です。宿題やっていました」
『初日からちゃんとやるなんて偉いね』
「明日、思いっきり楽しみたいので」
『……そんなに、楽しみにしてくれてるんだ』
「もちろんですよ」
その後、待ち合わせをどこにするか、何時に集まるかを話し合った後、白熊が鮫島や斑鳩との話をしてきて、あざらしはそれを楽しそうに聞いていた。
『だから今日の夕食は、ベルーガが作ってくれることになって』
「洋食屋さんでしたよね、ご実家。美味しそうです」
『食べに来る? そのまま泊まる?』
「人数が増えたら大変だと思うので、またの機会に。……それと」
『ん?』
明日、言おうかと思っていたが、このまま訊いてみることにした。
「明日、僕の家に泊まりませんか?」
『……いいの?』
「是非」
『……ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えて』
嬉しそうに言ってくれる白熊の声に、あざらしの頬も緩んでくる。明日、ここに白熊が来るのが、これで決まった。
「一日中、一緒にいられますね」
『最高のクリスマスだね』
「はい!」
『……忘れられないクリスマスにしようね』
「しましょう、はい!」
夕方のチャイムが外で鳴り響く。
あざらしが外に視線を向けると、もう日は暮れて真っ暗だった。冬は暗くなるのが早い。
白熊用の布団を取り込まないといけないと思い出し、名残惜しいが、電話を切ることにした。
「では、そろそろ」
『うん。……あのね、あざらし君』
「何ですか?」
『……好きだよ。今ね、すっごい好きって言いたくなった』
「……好きです。僕も、白熊先輩のこと、大好きです」
ありがとう、の声に、こちらこそ、と返して、あざらしは通話を終えた。
「……好き」
頭の中で思い浮かべた白熊の笑顔に、もう一度想いを伝えて、あざらしはベランダに向かった。



