アドベントカレンダー2025  白熊君とあざらし君の日々

 手紙は、お泊まりの日に交換しよう。

 封筒や便箋を買った後に、白熊からそう提案されて、時間をもらえたことに確かに安堵したというのに──時間が過ぎるのは早い。

 残り三十分で、十九日になる。

 眠って、学校に行って、そうしたら白熊の家に行くことになって……。そう考えると顔が熱くなり、書くべき文字をまともに考えられない。
 早く書いて寝てしまわないと、明日に響く。分かっているのに行動に移せない。あざらしは頭を抱え、時計の針が進む音を聞いていた。

 何を伝えたいか。

 それはもちろん、白熊が好きだということ。
 一緒にいると安心する、ご飯が美味しく感じる、というのは何度も伝えてきたから、今さら文字にするのは控えた方がいいだろう。

 なら、他に何があるか。

 頼りになる? 笑い掛けてくれることが嬉しい? 時折低くなる声にどきっとする?
 取り敢えずノートに書き出してみたが、これをどう文章にするべきかで、やっぱり頭を抱えてしまう。今まで習ってきた国語を思い出そうとしても、そういえば恋文の書き方は習っていない。

「……好きって、どう伝えればいいのか」

 そう思うと、あざらしは改めて白熊のすごさを感じてしまう。白熊はあざらしの目を見て、臆することなく想いを伝えてくれた。それに比べて自分は……。

 ちゃんとしなければ。

 白熊が、あざらしを好きになって良かったと思えるような、そんな恋文を書かなくては。
 ノートにどうにか他のことも書いていく。おにぎりを作る時の手付きが優しい、美味しいおにぎりを分け与えてくれる、あざらしが言葉につっかえた時に怒らず待ってくれる、それから──。

 間もなく、十九日になる。

 ノートを退けて、便箋を手元に置いた。シャーペンを握り直し、脇に置いたノートに視線を向ける。
 白熊に伝えたいこと──感謝。
 白熊のことを想えば想うほど、感謝を伝えたくなってきた。深呼吸をすると、頭の中で文章を組み立て、そして、シャーペンを動かしていく。

『白熊先輩はいつも優しいです。僕のことをよく見てくれていて、いつも気遣ってくれます。
 僕は白熊先輩に、優しさに対するお返しを、できているでしょうか? できていなかったら、言ってください、白熊先輩に優しさのお返しがしたいです。
 白熊先輩が傍にいてくれることが何より嬉しいですし、これからも傍にいさせてほしいのです。
 いつも僕と一緒にいてくれて、ありがとうございます。美味しいおにぎりをくれて、ありがとうございます。優しくしてくれて、ありがとうございます。
 あまり口にできなくて申し訳ないのですが、僕も、白熊先輩のことが好きです。白熊先輩以外の人のことは考えられません。
 あなたのことが、誰よりも好きです。』

 便箋一枚書き切った所で、読み返し、恥ずかしくなってきたあざらし。
 だが、これ以上のものは書けそうにない。

「……僕のいない所で、読んでもらおう」

 そう呟きながら、便箋を封筒に仕舞い、寝支度を始めた。もう夜は遅い。学生はもう寝ないと。