俺をすきだと言った後輩とよく似たひとが護衛騎士になりました

 駅員室に彼女を送り届け、ホームへと戻ったところで、画面に表示されたのは御影の名前だった。焦って混乱していたけど、俺の手元にはずっと連絡先があったことをさっき思い出した。
「すごいな」
 通話ボタンを押すことなく、目の前に立つ心配げな顔を見上げる。自分がどこにいるのか、何があったのかを送ったのはほんの数分前だったのに。護衛騎士ってあだ名がぴったりすぎて笑える。
 はあ、と吐き出された息には呆れではなく安堵が濃い。「まったく」と呟きが落ちるのに従って、大きな肩が沈む。全身の力が抜けるほどの出来事だったのだとわかって申し訳ないのに、どこかくすぐったい。いや、笑ったらいけないんだけど。きっと睨まれてもこわくない。目の前にいるのは、無表情の皆藤くんではなく、俺のよく知る御影だから。顔どころか全身で感情を伝えてくれる。そういうところが、すきだった。
「なにやってんですか」
「いや、さっき送った通りなんだけど。乗り間違えたら痴漢見つけて、それで――」
 ぎゅっとまだ硬いブレザーに包まれる。どうして気づかなかったのかと不思議なくらい、懐かしい匂いがする。
「先輩はなにもされなかったんですよね」
「うん」
「こわくなかったんですか」
「あー、正直言うと、めっちゃこわかった」
「じゃあ、どうして」
「御影が助けてくれたからだよ」
 厚手のブレザーをそっと押し返せば、互いの心音さえ聞こえそうな距離で視線が繋がる。
「こわかったことってさ、簡単に忘れられないけど。それ以上に助けられたことのほうが、忘れられないって、俺は知ってるから。だから、頑張れた」
 ありがとう、と続けるよりも早く、再び強く閉じ込められる。まるで俺がどこかに消えてしまうかのように、ぎゅっと。
「……御影?」
「また――避けられたのかと、思った」
 息に近い、か細く震える声が鼓膜に届く。
「すきだなんて言わなければよかったって、ずっと後悔してました」
 音よりも息が、熱が先に触れた。
「だって言わなければ、ただの後輩でいたら、先輩は普通に会いに来てくれたでしょう。俺が告白なんてしたから、だから、卒業してから一度も来なかったんですよね」
「それは……」