――先輩のことがすきです。
 耳奥に刻まれた声が消えない。もう二年も前なのに。ネクタイを結ぶことにも慣れてしまったというのに。
 洗面所の鏡に映るのは、着慣れた制服と最終学年のカラーとなった青色のネクタイ。
 ――俺は……。
 あのとき自分の気持ちを自覚していたなら。返事をちゃんと返せていたなら。こんな痛みなんて知らずにいられたのだろうか。
 いまさら気づいたところで伝えることなんてできないのに。どうして過ぎてから気づくのだろう。あれが初恋だったかもしれない、なんて。