しまねことサヨ


 船が見えなくなるまで見送ったあと、あたしはおじーちゃんと帰路につく。

 その道中、あたしの脳裏に浮かんでいたのは、春歌ちゃんにミミの言葉を伝えた時に彼女が見せてくれた、心の底からの笑顔だった。

 思い出すだけで、あたしの心まで温かくなる。

 あたしの力によってあの笑顔を生み出すことができたのなら、これ以上の喜びはない。

 ――猫と話ができる、この不思議な力。

 これまではなんとなく猫たちと会話をしてきたし、あたし自身、この力をひた隠しにしてきた。

 だけどこれからは、もっと積極的にこの能力を使うべきかもしれない。

 猫たちの思いを人に伝える……それこそが、この力を与えられたあたしの役目ではないか……そんな強い気持ちが、ふつふつと湧き上がってきているから。

「小夜、どうしたんだい? なんだか嬉しそうだね」

 そんな感情が顔に出ていたのか、おじーちゃんが不思議そうな顔であたしを見てくる。

「ん、なんでもない」

 手始めに、親友たちにあたしの力を打ち明けてもいいかな。

 そんなことを考えながら、夕日に染まる路地を歩く。

 そこから見える屋根や石垣の上には、何匹もの猫たちがいて、覚悟を決めたあたしを応援してくれているような、そんな気がした。


                                しまねことサヨ・完