……その後、時間の許す限り、春歌ちゃんはミミとハナと一緒に過ごした。
やがて最終便の時間が近づき、港に人が増えてくるも、彼女たちはこれまでの空白の時間を埋めるかのように、人目をはばからずに戯れていた。
「あれ? 小夜、迎えに来てくれたのかい?」
そうこうしているうちに船が港に着岸し、おじーちゃんが降りてくる。
その場で事情を説明すると、元飼い主が現れるなんて前代未聞だと驚いていた。
「そろそろ出港時間なので、乗船する方はお急ぎください! 本日の最終便です!」
その時、船の係員をしている士郎さんが走ってきて、そう声をかけてくれる。
彼は状況を察して、ギリギリまで待っていてくれていたようだ。
その言葉を聞いた春歌ちゃんは一瞬だけ悲しそうな顔をするも、最後にミミとハナの頭を優しく撫でて、すぐに立ち上がる。
「……本当に連れて帰らなくてもいいのかい?」
船に向かって歩き出した彼女に、おじーちゃんが優しく声をかける。
「はい。お父さんは相変わらず猫が嫌いですし……この島で元気にしているのがわかっただけで十分です。また、会いに来ます」
彼女は振り返り、そう口にする。その顔に涙はなく、穏やかな笑顔があった。
「……ミミ、ハナ、またね」
「またね。ハルカ」
「……元気で」
そして、自分がつけた名前ではなく、島で得た新しい名前で彼女たちを呼び、猫たちもそれに応えた。
「それじゃあ、小夜さん、お世話になりました!」
春歌ちゃんは最後に一礼すると、晴れやかな顔で船に乗り込んでいく。
そんな彼女がタラップを渡るとすぐに、船は港を離れていった。
「……ハルカは優しい子に育った」
「いやいや、ハルカは昔から優しい子だったよ」
離れゆく船のデッキから、いまだに手を振り続ける春歌ちゃんを見送りながら、ミミとハナはそんな会話をしていた。
ちなみに、彼女たちは手の代わりに、懸命にしっぽを振って応えている。
そんな光景の中に、あたしは彼女たちの間にある確かな絆を見た気がした。

