家に帰り、ちぐはぐな僕の画用紙が脳裏に浮かぶ。
僕と、お母さんだけの絵。
考えをとっぱらうように宿題を机の上に置いた。
僕が帰ってきた気配を察知して、ニャン吉は机の上にすとんと乗った。ここは自分の指定席だといわんばかりに、ノートの上を陣取った。かわいいと思うのは最初の10秒くらいだ。そのうちに、くるくると回る僕の鉛筆に気を持っていかれた前脚が伸びてくる。ぱしんと当たり、鉛筆の先がぐにゃっと歪む。ニャン吉を机から下ろすが、再びのぼってくる。何度かのやり取りの後で諦めた僕は鉛筆を置いた。だめだ、進まない。
とりあえず友達の家にでも遊びにいこうとカバンを肩から下げた。飽きたのか毛づくろいをしはじめる気まぐれなニャン吉の前でため息をついて、背中を撫でてやる。そのままぼうっとしていると、ニャン吉はふと毛づくろいを止めて、ピタリと止まった。
視線の先には、カラーボックスがあった。おもちゃがぎゅうぎゅうに中身が詰まっているので、ニャン吉の入る余地はない。ニャン吉はすぐに諦めた。
玄関で誰かが帰宅してきた音がした。この時間ならたぶん、お母さんだ。リビングまで行くと――違った、おじさんだ。僕をみて「ただいま」といった。
「おかえり、いつもより早いね」
「うん、今日はお母さんの方が遅くなると思う。夕飯作るからね」
いつもの落ち着いた口調で、ほんのりと笑うとダイニングテーブルに買い物袋を置いた。
僕なんかより早くおじさんに懐いたニャン吉も、リビングへとやってくる。おじさんの大きな手で、何度か撫でられていたニャン吉は、ごろごろといっていたがピタリと視線がまた止まった。
視線の先には、僕の部屋と同じサイズのカラーボックスがあった。
3段のカラーボックス、箱が詰まっていてそれなりに中身は入っているけど、隙間が空いている。ダメ、と制止しようとしたけれど、ニャン吉の素早さには勝てない。
ニャン吉は、カラーボックスに飛び込んだ。
するっと入り込むと、ななめになったはずみで中身の箱ごと落ちた。ニャン吉は落ちた箱の中でも、いちばんちょうどいいサイズの箱に入り、中身をペーンっと後ろ足で弾いた。僕が隠していたものが落ちてきた。
僕と、お母さんだけの絵。
考えをとっぱらうように宿題を机の上に置いた。
僕が帰ってきた気配を察知して、ニャン吉は机の上にすとんと乗った。ここは自分の指定席だといわんばかりに、ノートの上を陣取った。かわいいと思うのは最初の10秒くらいだ。そのうちに、くるくると回る僕の鉛筆に気を持っていかれた前脚が伸びてくる。ぱしんと当たり、鉛筆の先がぐにゃっと歪む。ニャン吉を机から下ろすが、再びのぼってくる。何度かのやり取りの後で諦めた僕は鉛筆を置いた。だめだ、進まない。
とりあえず友達の家にでも遊びにいこうとカバンを肩から下げた。飽きたのか毛づくろいをしはじめる気まぐれなニャン吉の前でため息をついて、背中を撫でてやる。そのままぼうっとしていると、ニャン吉はふと毛づくろいを止めて、ピタリと止まった。
視線の先には、カラーボックスがあった。おもちゃがぎゅうぎゅうに中身が詰まっているので、ニャン吉の入る余地はない。ニャン吉はすぐに諦めた。
玄関で誰かが帰宅してきた音がした。この時間ならたぶん、お母さんだ。リビングまで行くと――違った、おじさんだ。僕をみて「ただいま」といった。
「おかえり、いつもより早いね」
「うん、今日はお母さんの方が遅くなると思う。夕飯作るからね」
いつもの落ち着いた口調で、ほんのりと笑うとダイニングテーブルに買い物袋を置いた。
僕なんかより早くおじさんに懐いたニャン吉も、リビングへとやってくる。おじさんの大きな手で、何度か撫でられていたニャン吉は、ごろごろといっていたがピタリと視線がまた止まった。
視線の先には、僕の部屋と同じサイズのカラーボックスがあった。
3段のカラーボックス、箱が詰まっていてそれなりに中身は入っているけど、隙間が空いている。ダメ、と制止しようとしたけれど、ニャン吉の素早さには勝てない。
ニャン吉は、カラーボックスに飛び込んだ。
するっと入り込むと、ななめになったはずみで中身の箱ごと落ちた。ニャン吉は落ちた箱の中でも、いちばんちょうどいいサイズの箱に入り、中身をペーンっと後ろ足で弾いた。僕が隠していたものが落ちてきた。



