○前と同様に広い庭
視界は悪いが、避けた雰囲気がなかったため、赤鬼がニヤニヤ
赤鬼「大口叩いたくせにもうおしまいか?黄鬼は、うちで最弱だぞ?」

返事がなかったことで終わったと思い込んだ鬼たちは、館に帰ろうと歩き出す
が、楽しそうな声が庭に響いた
蒼「へえ、一番弱いんだ」
煙が薄れて見えてきたのは、護符で防御壁を張っている蒼の姿
防護壁を解除。それと同時に黄鬼は吹き飛ばされ、壁にぶつかる
ぶつかった背中と、防護壁を殴った痛みで喚く
黄鬼「いってぇ!くそっ、次はぶち倒す」
蒼「威勢はいいね」
護符を地面に貼る。地面を割って出てきた植物が黄鬼の足元に絡みつく
黄鬼「うお、気持ち悪!」
黄鬼すぐに飛び退く。青鬼が上空を見て慌てる
黄鬼が植物に視線を取られている間に、蒼は靴裏に護符を貼る
その瞬間、上空へと飛んだ
青鬼「黄鬼!上見ろ上!」
黄鬼「は?」
気づいた時には遅く、上空に飛んでいた蒼に思いっきり蹴られて地面に叩きつけられる
黄鬼「ぐはっ!」少量の血を吐く
追い討ちのように植物で地面に縫い付けて戦闘終了

鬼一同、唖然

蒼は使った護符を靴裏から剥がす
護符は使い捨てで、使い終わったらその場で燃えて消える
蒼「私の勝ち。じゃ、掃除よろしく」呼吸を整えながら笑顔で
朧も蒼の後に続く
呆然と立ち尽くす鬼たち
我に帰った赤鬼は、呟く
赤鬼「最弱とは言ったが、まさか倒しちまうなんて……」
黄鬼「ちくしょう!俺はまだやれるっての!!」
黄鬼、もがくが植物はちぎれない


○主の部屋
蒼「ふう……なんとかなった」気の抜けた表情
一人息を吐き、消費した分の護符を補充する
朧「護符の使い方うまくなったスね」わずかに微笑む
蒼「朧のおかげだよ。助かっ」
振り返った拍子にバランスを崩す蒼
朧「おっと」朧が蒼を支える
朧「戦闘苦手なんスから、無茶しないでくださいよ」
蒼、朧の顔が近くて目を逸らしつつ
蒼「……だ、だってムカつくんだもん!私だって短期戦なら全然勝てるし!」
朧に支えられたまま、蒼は自作の護符を朧に見せつける
達筆な文字を見て、朧は過去を思い出した

○回想(今から三年前)・東雲家、庭
蒼「朧!もっと強くなりたいから護符の使い方教えて!」
朧「なんで、か弱い主に教えなきゃならないんスか?俺が守ればよくね?」
朧、心底不思議そうな顔をする
蒼「いつまでも守られてるわけにもいかないから!」
へなへなの文字で書かれた護符を取り出す蒼
その護符を眉を顰めながら見つめる朧
朧「字きたなっ!」
蒼「筆で文字書くの難しいよ!」ムッとする
朧「それじゃ発動しませんよ。まず綺麗に書けるように練習しないと」
蒼「ええ〜」
朧「ええ〜じゃない。ほら、練習練習」

○回想終わり・主の部屋
朧「字、綺麗になりましたねぇ」
蒼「今それ言う?」眉間に皺寄せ
蒼「……まあいいや。掃除サボってそうだし、様子を見に行こうか」
朧「ウス」成長した蒼に少しモヤっとしながらも背中を追いかける

○広間
緑鬼「あ、えと……こんにちは」箒を持って小さく会釈
蒼「緑鬼、こんにちは。一人で掃除?他は?」
緑鬼「青鬼くんはそこに」
青鬼、隅で静かに読書
蒼「いたんだ……」緑鬼が指差す方向を見て驚き
話を聞いていた青鬼。本から目を離し、蒼を睨む
青鬼「最初からいたが!?なんでここに来る人間は俺をすぐに見つけられないんだよ!」悔しそう
朧「そりゃまあ、そんなのがついてたら……あ、やっぱ今のなし」
青鬼「はっ!?今何を言おうとした!?」本を投げ捨て朧に詰め寄る
蒼「それについては、掃除を真面目にすれば教えなくもないよ」
青鬼「言ったな!?絶対だぞ!?」
すぐにでも掃除を始めようとする青鬼
蒼は「ただし」と言って、人差し指を青鬼に突き出す
蒼「赤鬼と黄鬼も掃除に参加させてね」
青鬼「いや、流石にそれは……ハードルが高すぎる……」
一瞬で掃除のやる気を無くした青鬼だった