『バレンタインどうする?』
冬休みも終わり、私たちはいつも通りの日常を送っていた。嫌なほど定期的に起きてきた災難は、一月は何も起こらなかった。強いて言えば、海虎くんが風邪を引いたことぐらいだろうか。とはいえ、数日寝込んでいつもの姿に戻ったわけだし、とくに大きな問題でもなかった。
それはそうと、街ではハート型の飾りを多く見かけるようになった。もうすぐバレンタインが近づいているのだ。バレンタインといえば、私たちのグループには海虎くんと秀雪くんがいる。このイベントを素通りすることはできない。なので女の子三人で作戦会議中だ。
『んー、誰も付き合ってるわけじゃないし、仲がいいとはいえ、手作りは重いのかな? 経験豊富そうな▼▼ちゃん、どうかな?』
「私? 経験豊富そうって、そんなことないよ、高校生になってからは彼氏なんてできたことないし」
霜柱みたいな子に「経験豊富そう」と言われてどこか恥ずかしくなる。私がそういう感情を持つと、家という空間で、どうやら私は足を触る癖があるみたいだ。片手でスマホを持ちながら体を猫のように丸くしている。このモフモフのパジャマがなかったらきっとこの熱はすぐに逃げ出してしまいそう。
「ただ、重くはないんじゃないかな。あの人たちなりに私たち三人のこと愛してくれてると思うし。……じゃあ、こういうのはどうかな。作ったものと、買ったもの、二つ渡すの」
海虎くんも秀雪くんもきっと誰かを好きであろう。あくまで平等には愛してくれていない。それは当たり前だし、人間ならそうあるべきだ。でも、私のことも一人の人間として、きっと海虎くんも秀雪くんも愛してくれていることだけは確かだと思う。
『じゃあ、そうしようか!』
『私も、その案でいいと思う』
霜柱みたいな子と、風花みたいな子が賛成してくれた。2人は料理は得意だろうから問題ないだろうけれど、そうなると、チョコをどこで購入するかの話になってくる。
「じゃあ、チョコ、こことかどうかな? 今リンク送ったお店。ちょっと高めのチョコだけど、三人で分ければそんなに負担にはならないと思うし」
私は、中学二年生のバレンタイン時代に付き合っていた彼氏に渡したチョコレートを買ったお店を紹介した。そのときは彼氏からなかなか遊んでくれないという理由で相手から振られたっけ。ただ、あの時に自分にも買ったチョコがとてもおいしかったことを覚えていたからここを紹介した。
でも、なんで別れるとわかっていながらも私はかつて多くの人に尽くそうとしたのだろう。時間も、お金も。どうせ別れるのだからそこまで使うことなかったのかもしれない。ただ、私たち五人のはあくまで友情だ。友情の方がずっと固い。
『へー、ここいいじゃん! おいしいそう!』
『私もここで賛成。▼▼ちゃん、いいお店紹介してくれてありがとうね』
『……あ、ごめん! そういえば私、明日までの課題終わってないんだった。先に抜けるね』
『じゃあ、作る日とかはまた今度決めようか。おやすみ』
「うん、二人ともおやすみ」
私たちは通話を終了させた。まだ日付を回っていなかったが、なぜかあくびが不意に出てしまった。それを早く寝なさいという合図だと悟って、押し入れから小さい頃に使っていた柔らかい小さな毛布を引っ張り出して、いつもの布団の上に置いて眠りについた。その日は、昔の夢を見たような気がする。でも、起きたらその夢はほとんど余韻を残すことなく消えていた。



