五色に溶けた空の色



 ストーカー事件は、音声を提出し先生に相談し、適切な対応を取ってくれるということだった。この場合、あいつよりも処分が重くなることは考えにくいが、当分は安全だろう。そして僕はこれに北川くんも一役買ってくれたとも報告を付け加えておいた。北川くんのことを許しているわけではないが、それぐらいの感謝は僕にだってできる。

 僕と花梨の彼女説についても二組男子の匿名チャットに『花梨が付き合っているのはどうやら嘘らしい 』と北川くんが流してくれたし、僕たちのクラスには僕がクラスチャットで説明したことでおおよそ整理がついた。もう、手をつなぐこともないのかもしれない。

 あの時のハグをした間に僕が具体的に何を言ったのかは覚えていないし、花梨に何を言われたのかも正直覚えていない。その理由は彼女の涙で流されてしまったからなんていうと怒られるだろうけれど、覚えていないのは本当だった。その時の僕だけが覚えていれば十分だろう。今日の僕と数日前の僕、ちょっぴり違う部分があるのは当たり前で、それは素直にいいことなんだなと思う。残像があるだけで僕は満足だ。

 ただ、一つだけ忘れられないのは——たった一つの星を見つけてしまったことだろうか。その一つの星が何を意味するのかはまだ確かではないけれど、おそらくはそういうことなのだろう。僕の選択すべき人はよく言えば運命的にも、悪く言えば皮肉にも見つかってしまったかもしれない。隠れていないで出てきてしまったんだと。

 久しぶりに、自販機でパックの小さな牛乳を買ってみた。容量が小さかったからすぐに飲み干してしまった。そんな飲み終わった牛乳パックを遠くからごみ箱に投げた。意外にもそれはゴミ箱の中に吸い込まれていった。そして手についた牛乳をふき取って、皆のいる屋上に走って向かった。

 ——いつかは、きっと。僕自身が選んだのだから。