五色に溶けた空の色

【【私は、海虎くんが好きだ】】



 この感情は、私を幸せへと導いてくれるものなのか──。深い霧に包まれた森の中を手探りで歩いているみたいに、私はまだ数歩しか前に進めていない。

 その答えを見つけるのは、絡まり合った知恵の輪を解くよりも、たぶんずっと難しい。

 ただ一つ、確かなことがあるのだとすれば、恋は「落ちる」つもりがなくても、気づいたときにはもう心が奪われている。そんな重力みたいな不可抗力だから、きっと誰も逆らえない。

 今の私は、いわゆる「陰キャ」の象徴ともいえる分厚い眼鏡をかけている。けれど、それは高校デビュー。

 中学までの私は、どちらかといえば太陽の光が差し込む和気あいあいとした「陽キャ」の輪に入っていた。けれど、高校受験の第一志望校の不合格と、卒業式の日に心にべったりと塗りつけられた泥のようなトラウマが、私を気づかぬうちに別人へと変えてしまった。中学の知り合いがほぼいないこの高校で、私は何色にも染まらない「陰キャ」として生きることを選んだのだ。

 とはいえ、元々「陽」側にいた私にとって、色を失った日常は退屈で仕方がなかった。休み時間はただ席に縛り付けられたかのごとく読む気もない小説を開くか、視線を遮るように机に伏せるだけ。そんな、張りぼての日常を送っていた私に、何気なく声をかけてくれたのは、同じクラスの海虎くんだった。
 
「ねえ、よかったら僕らと一緒にお昼食べない?」

 あまりにあっけない一言だった。けれど、閉ざされた扉を開け、私をグループの一員とするにはそれで十分だった。

 海虎くんに救い出されたことで、私はようやく呼吸の仕方を思い出した。もしかしたら彼は、私の胸に空いた隙間を見透かしていたのかもしれない。

 ……ある人から、この五人——花梨(かりん)一葉(ひとは)凛音(りおん)秀雪(ひでゆき)、そして海虎(かいと)——で過ごした四月から六月のことを話してほしいと頼まれた。前書きはいつでもいいと言われたので、私はこれを六月の終わりに綴っている。そして、一つだけ約束された。自分と同じ性別の子の名前は伏せること。だから、二人の女の子のことは「青リボンの子」と「ヘアピンの子」と呼ぶことにする。

 それでは物語の始まりへ、いってらっしゃい——。
 


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