五色に溶けた空の色



「最後の外したのがまだ悔しいんだが。プレッシャーに弱いな」

「もー、おいしいところ渡したのに!」

 こういうおいしいところを最後に決めてくれるのが筋っていうものだけれど、それが外れるという結果もそれはそれで面白い。だから、僕はあくまで風のような彼をいじってみせた。

「まあ、いいじゃん、二人とも頑張ったんだし。仮に最後のシュートが入ったところで、逆転は無理だったんだから」

 一葉の言う通り、仮に最後に歓声が上がろうが、僕らが掴めたのはせいぜい感動的なシュートでしかならない。

「まあ、それはそうだけど」

 おいしいところを無駄にした彼は拗ねているようではあったけれど、目の前にあるおいしそうなパフェには思わず口を進めていた。バニラアイスを鼻の下にちょこんとつけたまま、メロンをかぶりつく。ようやく気付いたのか、彼はティッシュでふき取った。

 このカフェは前に行こうとしたけれど、とある事情があり行けなかった。そこで今回リベンジマッチということで、凛音が試合お疲れ様パーティーもかねて提案してくれたのだ。たしかに、そんなこともあったが、僕はそのことをすっかり忘れていた。

 試合は後半も巻き返すことがほとんどできず、八点差で負けてしまったけれど、自然と悔しい気持ちはしない。むしろ、まだまだなんだなと嬉しい意味で痛感させられた。明日から切り替えて次を目指すに限る。

「そういえば、××くんのフリースロー、かっこよかったよ」

 凛音がそれを言葉にした瞬間、口に入れたみかんが急に甘酸っぱく感じる。今日の一番の見せ場となったあのシーンが再び脳内で再生された。部長からも試合後、「あの緊張感の中でよくやってくれた」と言いながらスポーツドリンクを奢ってくれた。

「うん、私たち三人で入れ入れって願ってたもん」

「花梨もありがとな。おかげでかっこよく決められたよ」

 でも、僕がその時聞いたはずの『××くんなら決められるよ!』という魔法みたいな言葉は、あれは実際、誰かが本当に言ってくれていた言葉なのだろうか。僕が期待したから、自分の中でそう聞こえたと思ったに過ぎないのだろうか。とはいえ、自分でこんなことを聞いたら耳から火が出そうだったので聞くことはできない。

「とはいえ、秋の思い出はまだ文化祭が残ってるからね。衣装も期待してて!」

「ああ、細かいところまで凝られてたもんな」

 汗を流す熱い戦いの後の楽しみもまだ残っている。一か月後に控えた文化祭は、クラスの準備も着々と進んでいる。内装担当になった僕は、インターネットでヒットした画像を参考にしつつ案を練り上げている最中だ。一昨日は、一葉から衣装を着た画像も送られてきて、文化祭への熱気も感じたところだ。もちろんその写真は趣味とかではなく、あくまで内装の参考ために頼んだにすぎない。

「ねえ、凛音ちゃんと花梨ちゃん、一緒に写真撮らない? 今日の思い出もSNSにあげたいなと」

「いいよ、あげよあげよ」

「もちろん」

 女の子三人は半分ほど食べ終わったパフェとともに、輝く宝石のような瞳をして自撮り写真を撮る。そして、それを慣れた手つきでSNSにアップする。僕も自分のSNSアカウントはあるものの、放置しっぱなしだったなと思い、このみかんのパフェでも投稿しておこうかと思い立ち、写真をパシャリと撮った。実物のようにおいしそうに見えるかは微妙だが、初心者が撮るとなると、こんなものなのだろう。

「なあ、一葉、これでいいのか?」

「うん。自己紹介欄、殺風景だからもっと情報を入れた方がいいんじゃない?」

「そういうものなんだ」

 一葉に、画像の編集方法を教えてもらい、早速投稿をした。投稿することはできるが、SNSには比較的疎い。そして、殺風景といわれてしまった自己紹介欄には、出身の小中学校の名前と、今の高校名とクラスを書き足した。とはいえ、フォロワーがギリギリ二桁のSNSを、鍵垢ではないとはいえ見る人などいるのだろうか。だけれど、中学校の友達から早速「いいね」がついた。それだけで、気づいてくれた喜びを覚える。