例年より幾分早く梅雨が明けた。それを追うように迫っていた夏のジリジリとした暑さが、セミの力強い鳴き声とともに早くもやってきた。——ということは、夏休みも確実に近づいている。
今年の夏休みは、いつもよりずっと待ち遠しい。というのも、とある子の提案で夏休み、皆でどこかに行くことになったのだ。そして満場一致で決まったのが、夏祭り。高校生の輝いたひと夏を過ごせるのはもちろん、最近、妙に意識してしまう秀雪くんに、夏の夜空に溶け込んだ私の浴衣姿を見てもらえるかもしれないというイベントも待っている。とはいえ、着るべきかまだ悩んでいる。
「——ねえ、??」
「……あ、海虎くんごめん。ちょっと考え事してた」
浮かれるのもいいが、今は目の先のことを考えなければいけない。高校生活初の試験という高い壁が立ちはだかっていた。そのために、私たちは勉強会を開いていたのだ。赤点を取れば補習という名の地獄が待っており、祭りすらも危うくなってしまうかもしれない。それに——。
「眠くなっちゃったんじゃない? ほら、最近、??ちゃん、夜遅くまで頑張ってるみたいだし」
水飴の子が優しくフォローを入れてくれた。半分正解で、半分は不正解。たしかに最近は勉強が苦手な私なりに夜遅くまで頑張っているけれど、意識が別のところへ向いていたのは、私の数十センチ先にいる秀雪くんのせいだ。彼がノートに走らせるかすかなペンの音に、まるで引力で操られているかのように、私の意識が奪われてしまったのだ。
「教科書のここはテストに出るかもって先生言ってたし、線を引いておいた方がいいよ」
「そうか、ありがとう。……あ、ここ、漢字、間違えてるよ」
「化学のワークの問一、解けた人いる? 難しすぎて頭こんがらがってきた!」
「解けたかも! 教えようか?」
四人の会話が遠いBGMのように流れる。私だけは、この空間から一人取り残されているような気もする。けれど、この場所にいるだけで、私たちは今日も普通の高校生の一幕を全うしている——そんな風に思える。
それにしても、なんだか最近、妙に疲労感が増しているように感じるのも気のせいじゃないと思う。思い当たる節がないわけではない——でも、それを私は致し方ないとして、飲み込んでいる。この高校に通い続けられるのも、あの人がいるからなのだから。
私は手を痛くなるまで強くつねり、私には似合わないエナジードリンクを体に注入することで問題集を進めた。



