「えっ……? もう7時か……」
コインランドリーから帰って、そのまま朝の7時まで寝ていた。「とりあえず飯だな……」と思い、ぼさぼさの頭で財布と鍵を手に取る。
ガラララ……
さっきまで暗くなりかけてたのに、白い朝日が寝起きの目にはキツい。サンダルを履いてドアを開けた。
「にゃっ」
昨日の黒猫だった。玄関の軒下で、うずくまるような姿勢で俺に向かって鳴いた。
「おわっ……お前……まだいたのか?」
「にゃっ」
昨日と違って、必死にお願いしてくるような顔じゃない。朝、学校で友達に会ったかのような表情で、小さく鳴いている。
「『にゃっ』っじゃねぇよ。どけよ。飯買いに行くんだからよ」
「にゃっ」
「あぁーん」
すくっと立ち上がり、さっきよりも大きな声で俺に向かって鳴く。
「あ? 何言ってんだよ。言葉しゃべれよ」
「にゃあーー……ん」
「分かんねぇって。とりあえず行くからな」
俺は黒猫に構うことなく、車に向かう。途中振り返ってみると、その場でずっと俺を見続けていた。
(まったく……何だよ、あいつ……)
「はぁ」とため息をつきながら、いつものコンビニへと向かった。
「いらっしゃいませー!」
夕方の学生バイトと違って、朝は元気な声が飛ぶ。主婦だろうか?女性たちがてきぱきと機敏に動いて仕事をしている。
(……ぜってぇ無理だな。俺)
この中に混ざり、こんなに手早く笑顔で仕事をするのは……俺には絶対に無理だなと、ぼさぼさの頭を少し押さえながら思った。
(いっぱいあるな。からあげ弁当……)
どの弁当も一番上まで積んである。迷うことなく、積み上がったからあげ弁当を1つ取り、カゴに入れる。そしてコーラを1本。
(……)
「……一応な」そう思いながら、俺はペット用品売り場に向かい、昨日と同じキャットフードを2つ、カゴにぽいと入れた。
――
――
――
「にゃあああー……」
玄関に向かって歩く俺に気付いたらしく、黒猫は立ち上がって鳴き出した。「待ってたよ」と言わんばかりに……。
「……お前、ずっといたのかよ」
「にゃああー……」
夕方だったり、落ち着かなかったりで、気が付かなかったけれど……よく見てみると黒い毛はつやつや。俺は猫を飼ったことがないけれど、元気そうだし……怪我とかしてなさそうに見える。……まぁ、これだけ元気ににゃーにゃー鳴くなら元気なんだろう。
「飯。買ってやったぞ」
「でも、また後でな」
不満そうな黒猫を横目に、俺はドアを開けて家に入って行った。
「にゃー!」
「にゃああああー……」
「あぉーー……ん」
ドアの向こうで鳴き続ける黒猫。ガラス張りのドアの向こうには、黒い物体の影が見える。動く気配はまったくなく……こっちに向かって、ずっと鳴き続けている。
「あー……! もう……」
俺は閉めたばかりのドアをガラッ!と勢いよく開けた。
「あんっ!」
嬉しそうな表情で鳴くじゃねぇか……。目がきらきらと輝いているように見える。
「何だよ……お前。うるせぇなぁー……もう」
「にゃあ!」
「『にゃあ』じゃ、ねぇんだよ……」
台所から昨日の皿を持ってきて、買ったばかりのキャットフードを乗せる。
「ほら。少しな」
「にゃー!」
(マジかよ……だりぃな)
がつがつを朝飯を食っている黒猫の横に、俺も座り込む。逃げる様子はない。……相変わらず飯に目がないらしい。
「……俺も、食うか」
玄関先で買ってきたからあげ弁当のビニールをはがし、黒猫の横で食べ始めた。
「にゃーん!」
今さっき食べていたキャットフードから顔を上げて、今度は俺のからあげ弁当に向かって鳴き始める。
「あ!? やんねーぞ?」
「にゃあー!」
しゅんとしたかのように、再びキャットフードを必死に食べ始めた――
コインランドリーから帰って、そのまま朝の7時まで寝ていた。「とりあえず飯だな……」と思い、ぼさぼさの頭で財布と鍵を手に取る。
ガラララ……
さっきまで暗くなりかけてたのに、白い朝日が寝起きの目にはキツい。サンダルを履いてドアを開けた。
「にゃっ」
昨日の黒猫だった。玄関の軒下で、うずくまるような姿勢で俺に向かって鳴いた。
「おわっ……お前……まだいたのか?」
「にゃっ」
昨日と違って、必死にお願いしてくるような顔じゃない。朝、学校で友達に会ったかのような表情で、小さく鳴いている。
「『にゃっ』っじゃねぇよ。どけよ。飯買いに行くんだからよ」
「にゃっ」
「あぁーん」
すくっと立ち上がり、さっきよりも大きな声で俺に向かって鳴く。
「あ? 何言ってんだよ。言葉しゃべれよ」
「にゃあーー……ん」
「分かんねぇって。とりあえず行くからな」
俺は黒猫に構うことなく、車に向かう。途中振り返ってみると、その場でずっと俺を見続けていた。
(まったく……何だよ、あいつ……)
「はぁ」とため息をつきながら、いつものコンビニへと向かった。
「いらっしゃいませー!」
夕方の学生バイトと違って、朝は元気な声が飛ぶ。主婦だろうか?女性たちがてきぱきと機敏に動いて仕事をしている。
(……ぜってぇ無理だな。俺)
この中に混ざり、こんなに手早く笑顔で仕事をするのは……俺には絶対に無理だなと、ぼさぼさの頭を少し押さえながら思った。
(いっぱいあるな。からあげ弁当……)
どの弁当も一番上まで積んである。迷うことなく、積み上がったからあげ弁当を1つ取り、カゴに入れる。そしてコーラを1本。
(……)
「……一応な」そう思いながら、俺はペット用品売り場に向かい、昨日と同じキャットフードを2つ、カゴにぽいと入れた。
――
――
――
「にゃあああー……」
玄関に向かって歩く俺に気付いたらしく、黒猫は立ち上がって鳴き出した。「待ってたよ」と言わんばかりに……。
「……お前、ずっといたのかよ」
「にゃああー……」
夕方だったり、落ち着かなかったりで、気が付かなかったけれど……よく見てみると黒い毛はつやつや。俺は猫を飼ったことがないけれど、元気そうだし……怪我とかしてなさそうに見える。……まぁ、これだけ元気ににゃーにゃー鳴くなら元気なんだろう。
「飯。買ってやったぞ」
「でも、また後でな」
不満そうな黒猫を横目に、俺はドアを開けて家に入って行った。
「にゃー!」
「にゃああああー……」
「あぉーー……ん」
ドアの向こうで鳴き続ける黒猫。ガラス張りのドアの向こうには、黒い物体の影が見える。動く気配はまったくなく……こっちに向かって、ずっと鳴き続けている。
「あー……! もう……」
俺は閉めたばかりのドアをガラッ!と勢いよく開けた。
「あんっ!」
嬉しそうな表情で鳴くじゃねぇか……。目がきらきらと輝いているように見える。
「何だよ……お前。うるせぇなぁー……もう」
「にゃあ!」
「『にゃあ』じゃ、ねぇんだよ……」
台所から昨日の皿を持ってきて、買ったばかりのキャットフードを乗せる。
「ほら。少しな」
「にゃー!」
(マジかよ……だりぃな)
がつがつを朝飯を食っている黒猫の横に、俺も座り込む。逃げる様子はない。……相変わらず飯に目がないらしい。
「……俺も、食うか」
玄関先で買ってきたからあげ弁当のビニールをはがし、黒猫の横で食べ始めた。
「にゃーん!」
今さっき食べていたキャットフードから顔を上げて、今度は俺のからあげ弁当に向かって鳴き始める。
「あ!? やんねーぞ?」
「にゃあー!」
しゅんとしたかのように、再びキャットフードを必死に食べ始めた――



