「んだよー!!」
「ふざけんな!!」
静かになった平屋の中で、俺は暴れた。コップ……本……手当たり次第、壁に投げつけた。近くにあったゴミ袋も勢いで引き裂き、滅茶苦茶にした。
「くそーっ!!」
腹の中から湧き上がる、止めどない怒り……一気に爆発する。
「……!」
こうして家の中を滅茶苦茶にした俺だったけれど……どうしても投げることができなかったものがあった。それは、2人で肩を寄せ合い笑顔で写っている……俺と真美子の写真立て。
――
――
――
「……本日は、よろしくお願い……いたします」
「どうぞ。お掛け下さい」
眼鏡を掛けた、30歳くらいと思われる女性。俺にパイプ椅子に座るように促す。
「それでは、面接を始めさせて頂きます。まず最初に……」
俺はその次の日に派遣社員となるべく、面接を受けに来ていた。「どうせいつか戻ってくるだろう」と悠長に構えていたけれど……やはり24万円しかない状態は精神的にキツイと思ったからだ。
しかも最近は、真美子ばっかり働いていたから……俺だけだと金が入ってこない。出ていく一方だ。「仕方ない」と思い、夜にネットの求人サイトで求人に応募した。
「……なるほど。ありがとうございます」
「……」
シワが全身いたるところに入っている、よれよれのスーツ。「大丈夫か?」と思ったけれど、仕方ない。これしか持っていないのだから。
真美子がいれば……面接に行く前に、アイロンでもかけてくれたろうか?
「履歴書を拝見しますと……高校を卒業してからお勤めのようですが……2年程度でお辞めになっていますね? これは? どのような理由ですか?」
俺は答えに詰まってしまった。派遣の仕事なんて……誰でも採用になると簡単に考えていたからだ。まさか……履歴書を見て、細かく質問されるなんて、思ってもみなかった。
「はい……仕事内容が……自分に合っていないと思いまして……」
俺にしては、その場で考えたにしては上出来だ。
「……なるほど、分かりました」
(ふぅー……)
(……危ねぇ)
「では、お仕事をお辞めになってから……半年程度、現在お仕事に就かれていないようですが……これはどういって理由でしょうか?」
(あっ……しまった……)
(考えてねぇ。何も……)
目の焦点が試験官に定まらない。左を見て……右を見て……頭の中で必死に考える。
「……実は、前の仕事の時に、体を悪くしてしまって……」
こうして、俺の面接は終わった。
「こんなことがあるのか」と思った。面接が終わる際に「今回は残念ですが不採用とさせて頂きます」と面と向かって言われてしまったのだ。ただでさえヨレたスーツなのに……猫背になってしまい、より貧相に見える。
(……どうしようか)
(借金でもするか……?)
俺はまだ消費者金融のような所から金を借りた経験はない。何かとすべて真美子に頼っていたからだった。でも……真美子がしばらく戻って来ないなら、金はいづれ尽きる……。家に帰る途中、ずっと頭の中でぐるぐると考え込んでいた。
「……にゃぁーーー……ん……」
(……ん? 猫か)
「にゃあーー……ん」
「にゃあああーー……ん」
近くで猫が鳴いている。後、家まで2~3分といったところだけれど……あまり普段は猫の鳴き声は聞こえてこない。「珍しいな」と思いながら、家に向かって再び歩き出した。
「ふざけんな!!」
静かになった平屋の中で、俺は暴れた。コップ……本……手当たり次第、壁に投げつけた。近くにあったゴミ袋も勢いで引き裂き、滅茶苦茶にした。
「くそーっ!!」
腹の中から湧き上がる、止めどない怒り……一気に爆発する。
「……!」
こうして家の中を滅茶苦茶にした俺だったけれど……どうしても投げることができなかったものがあった。それは、2人で肩を寄せ合い笑顔で写っている……俺と真美子の写真立て。
――
――
――
「……本日は、よろしくお願い……いたします」
「どうぞ。お掛け下さい」
眼鏡を掛けた、30歳くらいと思われる女性。俺にパイプ椅子に座るように促す。
「それでは、面接を始めさせて頂きます。まず最初に……」
俺はその次の日に派遣社員となるべく、面接を受けに来ていた。「どうせいつか戻ってくるだろう」と悠長に構えていたけれど……やはり24万円しかない状態は精神的にキツイと思ったからだ。
しかも最近は、真美子ばっかり働いていたから……俺だけだと金が入ってこない。出ていく一方だ。「仕方ない」と思い、夜にネットの求人サイトで求人に応募した。
「……なるほど。ありがとうございます」
「……」
シワが全身いたるところに入っている、よれよれのスーツ。「大丈夫か?」と思ったけれど、仕方ない。これしか持っていないのだから。
真美子がいれば……面接に行く前に、アイロンでもかけてくれたろうか?
「履歴書を拝見しますと……高校を卒業してからお勤めのようですが……2年程度でお辞めになっていますね? これは? どのような理由ですか?」
俺は答えに詰まってしまった。派遣の仕事なんて……誰でも採用になると簡単に考えていたからだ。まさか……履歴書を見て、細かく質問されるなんて、思ってもみなかった。
「はい……仕事内容が……自分に合っていないと思いまして……」
俺にしては、その場で考えたにしては上出来だ。
「……なるほど、分かりました」
(ふぅー……)
(……危ねぇ)
「では、お仕事をお辞めになってから……半年程度、現在お仕事に就かれていないようですが……これはどういって理由でしょうか?」
(あっ……しまった……)
(考えてねぇ。何も……)
目の焦点が試験官に定まらない。左を見て……右を見て……頭の中で必死に考える。
「……実は、前の仕事の時に、体を悪くしてしまって……」
こうして、俺の面接は終わった。
「こんなことがあるのか」と思った。面接が終わる際に「今回は残念ですが不採用とさせて頂きます」と面と向かって言われてしまったのだ。ただでさえヨレたスーツなのに……猫背になってしまい、より貧相に見える。
(……どうしようか)
(借金でもするか……?)
俺はまだ消費者金融のような所から金を借りた経験はない。何かとすべて真美子に頼っていたからだった。でも……真美子がしばらく戻って来ないなら、金はいづれ尽きる……。家に帰る途中、ずっと頭の中でぐるぐると考え込んでいた。
「……にゃぁーーー……ん……」
(……ん? 猫か)
「にゃあーー……ん」
「にゃあああーー……ん」
近くで猫が鳴いている。後、家まで2~3分といったところだけれど……あまり普段は猫の鳴き声は聞こえてこない。「珍しいな」と思いながら、家に向かって再び歩き出した。



