(あー……っ……くそが……!)

負けた。

(くそっ……)
(真美子に何て言や良いんだ……)

俺は薄い長そでを乱暴にまくりながら……鼓膜が破れるほどの音楽を背に、自動ドアから薄暗い外に出た。

「……はぁ」

10月の夜は、まだまだ暑い。

胸の小さなポケットに無造作に入れてある煙草。1本取り出し、ため息をつきながら火を付ける。

(……)

細く揺れるように輪っかを描く、白い煙。サーッと秋の風がかき消していく。

(10……20……)

俺の頭の中は、通帳に残っている金。そして家のタンスに入れてある現金のことでいっぱいだった。何度数えても、増えることはない。

「……はぁ」

朝起きた時には……全財産30万円あった。今日のパチンコで10万円増えて、40万円になるはずだったのに、夜9時になると5万円減って……全財産は25万円になってしまった。

ガン!と増えることはなく、じわじわと減っていく金。

(……どうすんだよ)

ぽいと灰皿の水に煙草を投げ捨てて、俺は車へと向かって歩いた。