「────できたっ!!」
しばらくして、男の子が勢いよく顔を上げた。
差し出された絵には、雨の下で楽しそうに並ぶ二つの小さな傘。
その真ん中で笑っている親子の姿。
「わあ……前よりずっと上手じゃないの」
母親の声は本当に嬉しそうで、ミケもなんだか、胸の奥がほっこり温かくなった。
男の子は絵を胸に抱えながら、照れたように言った。
「お父さんにも見せたい。きっと喜ぶよね?」
「当たり前にゃ。こんなにがんばって描いたんですものにゃ」
雨が止んだのか、外から夕暮れの光が戻ってきた。
二人が扉へ向かうと、男の子が振り返って言った。
「バイバイ、猫さん!! また来るね!! ぼく、ここだーいすきっ!!」
「待ってるにゃ。またあったかいの作るにゃ!」
ミケはそんな男の子に大きく手を振り返して笑った。
そんな約束は、きっともっともっと、いつかの未来。
今のままの男の子と会う日は来ないけれど。
きっとまた、巡ってくるだろう。
チリン、とドアベルの音と共に扉が閉まり、店に静けさが戻る。
雨の匂いと、ココアとミルクティーの甘い香りだけが、混ざり合って残った。
ミケはふう、と一息つきながら笑った。
「次の人生でも、たくさん思い出を描き重ねていくと良いにゃ」
そう呟きながら、濡れた足跡をゆっくりと拭いていった。



