とある地域のとある学校に、神々しいほどに真っ白な毛並みを持ち、右目は空のような青、左目は新緑に染まったオッドアイを持つ、一匹の野良猫が住み着いていた。

 猫は朝早くに起きると、学校の校門前にやってきて、部活の生徒達の登校を見守る。

「猫様だ! 猫様、おはよー!」と声を掛けていく生徒達に、大きな欠伸で返答している。

 二人組の女子生徒が通って、元気良く挨拶をする。

 楽器ケースを持った男子生徒が、猫を撫でる。

 慌てて猫の隣にやってきたつなぎ姿の男性が、生徒達に挨拶を返す。

 きちっとしたスーツ姿の女性が男性に挨拶をし、猫に視線を向ける。



 そして、本を読みながら歩いていた女子生徒が、猫に気が付いて顔を上げる。

「おはよう、猫様」

 少し眠そうな瞳を猫からまたすぐに本に戻した女子生徒を、猫は目を細めて見つめる。




 いつからこの学校に住み着いているのかも分からないその白猫は、今日もまた、人々のために奔走する。

 それが、学校の猫様の仕事だった。




 終わり