それから、俺はどんなに探しても真夏ちゃんを見つけられなかった。
気がつけば三年の月日が経ち、俺は涼波食品の話題の若社長になっていた。

「涼波社長、婚約者の佐々木様がお見えです」

扉をノックして強張った顔で入室してきた秘書の間口は真夏ちゃんを傷つけた戦犯だ。
敢えて側において厳しく接する事で、俺はストレスを解消していた。

「ああ、案内してくれ。飲み物は用意しなくて良い。直ぐに追い返すからな。それから、この資料作り直せ。競合他社のデータの数値が間違ってるぞ。数字も読めないなら幼稚園からやり直せよ」

「そ、そんな初歩的なミスするはずが⋯⋯」

「社外に出してるデータじゃなくて、内部データ持って来いって言ってるんだよ」
俺が怒鳴りつけると、彼女は資料を握り締め逃げる様に社長室の外に出て行った。

入れ違うように佐々木雫が部屋に入ってくる。間口は社長室の直ぐ側で彼女を待機させてたのだろう。俺の顔を見るなり、彼女は顔を顰めた。

「相変わらずひどい顔してるよ。鏡で自分の顔を見てからメディアに出ないと、爽やか若手社長のイメージが台無し」