⋯⋯さて、ここからどうする⋯⋯マスターは
自分の身を守っているから、無理に行動は出来ない

でも、マスター⋯⋯あまねの運動神経は、私の魔力も相まって
      相手の攻撃の回避はなんとかできる

「⋯⋯ミロク!策や相手の弱点は俺がなんとか探す!
だからミロクは出来る限り攻撃を耐えてくれ⋯⋯!」

「⋯⋯あ!わ、分かりましたマスター⋯⋯!」

ミロクの強さは、さっきので大体分かった⋯⋯
希望的観測でしかないが、俺の守護神であるミロクはめっちゃ強い

でも相手は⋯⋯相手の守護神は、俺たちには見えない

だからこそ、ミロクは今苦戦を強いられているのだろう

⋯⋯そして俺も、出来る限り早くこの状況に適応しなければならない

まだ、この世界に守護神という存在が降り立ってから
そんなに時間は経っていない⋯⋯!時間との戦いだ⋯⋯

「せっかく手に入れた俺の新しい人生、力、守護神⋯⋯
 こんな所で奪われるものか⋯⋯!絶対に、殺す!」

「っは、おいおい⋯⋯もうコイツ、正気を失ってるだろ⋯⋯」

「あまねは、あの人みたいに正気を失わないでくださいね⋯⋯?」

「っは、大丈夫だミロク⋯⋯勝機を掴む思いでやってやるよ!」

「⋯⋯最高ですよ、あまね⋯⋯このまま勝ちましょう!」

その次の瞬間、再び爆発音が鳴り響いた⋯⋯
俺はなんとかミロクから貰った魔力で防ぎ、
ミロクも謎のモヤモヤで自分の事を守っていた

当たり前だが⋯⋯くっそ熱いし、めっちゃ痛い。
 今までの人生の中でー番痛い目に遭っている

しかし、アドレナリンがたくさん分泌しているからだろうか⋯⋯
  そんな痛すぎる状況でも、俺はなんとか立っていられた

きっと、魔力がなかったら死んでいた。直感でそう分かる

でも、それでも今のこの戦況が⋯⋯そしてこの戦いが
  始まる前のあまりにも非現実的な言葉の羅列

守護神、マスター、能力⋯⋯それらの好奇心だけが、
今の俺を支えているモノだろう。ただ、好奇心が故に

「⋯⋯マスター!血が⋯⋯!すぐ、治します⋯⋯!」

「な、治す⋯⋯!?そ、そんな事も出来るのか⋯⋯?」

「治療専用の能力ではないですから、
魔力だけで出来る簡易治療ぐらいですが⋯⋯」

「それでも良い!それだけでも今は十分だ⋯⋯!
  それに、ミロクはあいつの守護神である
爆発に注意しなきゃだし⋯⋯あまり、ミロクの意識を俺に⋯⋯」

「守護神にとって、マスターという存在がー番です!
   なので今はあまねを速攻で簡易治療し、
そのあとに爆発の守護神である相手をどうにかします!」

ミロクがそう言ったその瞬間。俺の身体から少しずつではあるが、
   痛みが引いていく⋯⋯出血も、段々と少なくなってくる

しかし、ミロクの言う通り完全ではなかった。
  決して万全の状態までには戻らなかった

でも、今はそれだけで十分だ⋯⋯それに多分、
魔力と言うのだからきっと無限ではなく有限だ

だから、あんまり⋯⋯俺に対して、魔力を使ってほしくない

⋯⋯マスターであるあまねも、色々状況を理解しようと必死⋯⋯
対してあまねの守護神である私は、相手をどうにかしないといけない

だけど、まさか今ここで戦う相手が⋯守護神の見えないタイプの人と
       戦うことになるなんて⋯⋯正直、想定外だ

しかも、その爆発の能力を持っている守護神のマスターは、
正気を失って半ば狂気的になっている。常識は通用しない

⋯⋯いや、守護神とかの時点でとっくに⋯⋯
  常識なんていうのこの戦いにない、か

「⋯⋯そっちも守護神か⋯⋯っは、面白い
お前のところの守護神も理解したところで⋯⋯」

「俺の守護神である爆発の能力で⋯⋯跪け」

「お前のような、自分勝手な奴に私なんか理解できない。
 私の事を完全に理解できるのはこの世でたったー人」

「そう、あまね⋯⋯私のマスターだけ⋯⋯!!!」

守護神であるミロクから凄い嬉しいことを言われた⋯⋯が
その言葉に感謝するほど今はそんな余裕なんてものはない

そして、俺も考えるんだ⋯⋯見えない守護神、
そして爆発の能力を使う⋯⋯そのマスターも、正気を失っている

つまり俺たちはコイツよりも冷静だということだ。
その冷静かそうじゃないかで、この戦いは決まる

⋯⋯だが、どうやって?俺はついさっきまではただの人。
  生まれてから今の今まで、ー度も戦った事すらない

他より、少しだけ運動神経が良いだけ⋯⋯ただそれだけだ

(ドォーン)

⋯⋯もし、もろに食らっていれば、今のあまねならば
   ー瞬で吹き飛ばされ、即死だっただろう

しかし、ミロクの超反応により爆発とあまねの間に
ギリギリ入り、ミロクが身代わりする形で防いだ

⋯⋯だが、ミロクの身体はボロボロになりかけていた。
無理もない、すぐ間近でその爆発を食らってしまったから

「⋯⋯マジで、痛すぎる⋯⋯ってか非常識すぎて、
   痛みの前に混乱が生じているんだが」

「⋯⋯マスター、大丈夫ですか⋯⋯?」

外傷こそは、ミロクからは見られなかった。でもあの爆発⋯⋯
きっとさっきミロクが言っていた、魔力による簡易治療だろう

でも、完全に全て治せるわけじゃない⋯⋯
ミロクも内部ダメージはどんどん蓄積され、やばくなっているはずだ

⋯⋯でも、どうしろって言うんだ⋯⋯俺はミロクとは違って、
 超越した存在でもなければ、戦闘経験のある人でもない

ただの生身の人間⋯⋯ちっぽけな人間なのだ

なのに、なのに⋯⋯そんな中、どうしろと⋯⋯

⋯⋯考えろ、考えるんだ⋯⋯ミロクは思考する時間より、
  相手の爆発の守護神との戦いの時間の方が多い

その分、戦いに参加出来なくても思考することは出来る俺。
  だからこそ、この戦いは⋯⋯俺にかかってる⋯⋯

「⋯⋯マスター⋯⋯どうしますか、確率は低いけどここを離れるか」

「それとも⋯⋯目の前にいる奴を、どうにかするか⋯⋯」

その言葉を聞いた俺は、つい笑ってしまった

「⋯⋯っは、おいおい⋯⋯ここまで来て、逃げる、か⋯⋯」

「⋯⋯命令だ、ミロク⋯⋯俺と一緒に、アイツを殺す⋯⋯!」

「こんな、血まみれになった俺と満身創痍のミロク⋯⋯
だったらそのまま、その『お返し』ってもんを渡さないとなぁ???」

「⋯⋯私は、あまねの守護神⋯⋯命令は絶対」

「っふ、もちろんですマスター⋯⋯目の前にいる男と、その守護神を殺します」

刹那、ミロクは一気に男の方に突っ込んでいき、
      思いきり攻撃をぶつけた

しかし、男に触れるその直前。ミロクの攻撃は止まった

まるで、何か透明なものに防がれいるような⋯⋯そんな感覚

「⋯⋯透明守護神⋯⋯厄介な相手だ⋯⋯!」

でも、今はそんな透明な守護神を⋯⋯
どうやって倒せばいいんだ?姿も、何もかもが見えない

⋯⋯ミロクの攻撃が男の方に伝わっていない⋯⋯?
    まるで、透明な壁があるみたいに⋯⋯

いや、違う!あれが⋯⋯見えない守護神!
爆発の能力のみ分かっていたが、ちゃんと原型はある!

⋯⋯だが、透明だから見えない⋯⋯

そこで、あまねはある推測をする

⋯⋯待てよ?今、ミロクはその爆発の守護神に触れている⋯⋯
   つまり、だ。透明だけど実際には触れられる⋯⋯

「ミロク!そのまま、その透明な何かを掴んで攻撃しろ!」

『バシッ!』

きた!伝わった!透明な何かだけど、当たった感触がある!

「あまね!触れられた!見えない守護神だけど、
実際にその場所にはいる!だから攻撃できる!」

「やっぱりな⋯⋯でも油断はするな、ミロク」

「そのまま、その透明な何かは絶対に離すな⋯⋯!
絶対に逃したら次こそはチャンスなんてない!」

「わ、分かった!マスター!」

「⋯⋯おいおい⋯⋯まさか俺の守護神だけが、
お前たちの敵だって思ってないか⋯⋯?」

『ドンッ!』

「っう!?」

ミロクは、透明な守護神を掴んでいるため⋯⋯
その男からの攻撃は防ごうとしても防げない状態だった

加えて、ミロクがその攻撃の重さで理解した⋯⋯
この男も、爆発の守護神から魔力を貰っていると

「ミロク!大丈夫か⋯⋯!」

「え、えぇ、なんとか⋯⋯でも、男の攻撃もかなり⋯⋯」

ミロク、かなりキツイ表情を浮かべている⋯⋯あれ?でも待てよ

あの男は、俺と同じ生身の人間⋯⋯そんな人間に、
守護神かつ超越した力を持っている俺の守護神、
ミロクにあんなキツそうな表情を浮かべるか⋯⋯?

⋯⋯いや、違い⋯⋯!魔力によって強化された攻撃⋯⋯!

あまねが考えた結論、それは⋯⋯狂気的な結論だった

「⋯⋯え?あ、あまね⋯⋯?」

『ドカッ!』

「⋯⋯っぐ、お前⋯⋯お前も、か⋯⋯!?」

他の奴らは、驚愕していた。しかしそれは、もはや必須の反応だ

⋯⋯生身の人間が、爆発が起きて即死するような環境に⋯⋯
自身の身を守らずに、その守らなかった魔力を攻撃に利用する

そんな、バカげた事を⋯⋯ただー人、そこにはいた

「⋯⋯魔力貰ってるアンタがその芸当を出来るんなら⋯⋯
同じく魔力を貰っている俺にも出来る芸当だよな⋯⋯?」

「⋯⋯マスター⋯⋯!き、危険すぎます⋯⋯!」

「ミロク、何かあったらすぐに俺を庇ってくれ⋯⋯
    そうすれば、死ぬことはまずない」

「だ、だとしても危険です!マスター!」

「爆発を発動する直前であれば、爆発の守護神は
   何かしらのアクションを取るはずだ」

「そしてその爆発の守護神は今、俺の守護神が掴んでいる」

「何かあっても、ミロクならすぐに対応できるはず」

ってことは、あまねは⋯⋯私を信頼してこんな行動を⋯⋯!

「⋯⋯この、狂人がぁ⋯⋯!」

「始めようぜ、きたねぇ殴り合いを」

「原始人の戦いみたく⋯⋯生身の人間同士でなぁ⋯⋯!!」