【青春BL】秘密のリレー小説の中では甘いふたり

「新木 陽(あらきよう)、シャツのボタンは上まで――」

 高校二年生の六月中旬。今日は朝から良くない気分だった。なぜなら同じクラスの風紀委員、中島 流星(なかしまりゅうせい)に注意されたからだ。尖ったような視線と声に俺はムッとした。

「別にいいじゃん。ボタンとめてないの俺だけじゃないし、誰かを傷つけてるわけではないし……」

教室内を見渡すと他にも注意されるべき生徒たちが沢山いたのに、なぜ俺だけ。

注意されたのは一回だけではない。前髪が長くて目にかかっているなど、校則とは関係のない細かいところまで注意してくる。ちなみに前髪は大人っぽくなりたいから伸ばしている。だからこれ以上注意されないように、学校では前髪をヘアピンでとめていた。

個人的に俺に対して気に入らないことがあるのか? ずんとした気持ちのまま、窓際の一番前の席に着く。背後から中島が何か呟いている声が聞こえたけれど、頬杖をつき聞こえないフリをして窓から曇り空を眺めた。



 それから三日経った日の夜。俺は部屋の机の上にある、四歳上の一番目の姉からお下がりでもらったピンク色のノート型パソコンを開いた。そしてときめき掲示板をぼんやりと眺めていた。ちなみにこの掲示板は、ひたすら妄想ばかりを呟く掲示板だ。最近はSNSで話題にもなり、結構盛り上がっている。 二歳上の二番目の姉から「ネームは教えないけれど私も書いてる!」と、ここの存在を教えてもらった。俺もどちらかといえば、姉たちの影響で少女漫画などを数多く読んできたから妄想は得意なほうだと思う。

俺も何か書いてみようかな。何を書こうか。正反対のふたりが恋におちる、短い物語にしてみようかな。

 マイページを開くと、書き込むボタンを押した。

そして――。

***

タイトル

優等生とヤンキーのボーイズラブでピュアラブな初恋物語

【第1話】俺たちの出会いだ

 俺、冬見奏人、高校二年生。夏、学校に行くために乗る電車が目の前に止まった。

「あぁ、だるおも~」

 混んでいる車内を眺め、これからこの人ごみの中でいつものように押しつぶされるのかと考えながら、そう呟いた。

 人ごみに逆らい、隅の方に立つ。少しすると、めまいがしてきたから壁に寄りかかり、目を閉じた。朝ご飯食べなかったからかな……。次の駅に停車したから、いつものように押し寄せてくる人の波に潰される覚悟を決めた。

 だけど、運命の日は違った。

 潰されなかったから、目を開いてみた。するとなんと、隣の街にある高校の制服を着た、真面目な雰囲気が全身からだだ漏れな黒髪イケメン男子生徒が目の前にいたのだ。偶然か分からないけれど、セキュリティとなって俺のことを守ってくれていたのだった。彼は俺よりかなり長身のため、自分は安心安定なバリアに包まれているようだった。それにしても、距離が近い。近すぎるせいか、胸のあたりがなんか、変。

突然、トゥンクトクと心臓の音は乱れ、揺れた。
電車の揺れ以上に。もしやこれは――。

だけど、彼はどう見ても優等生な雰囲気で俺とは正反対だ。もしも関わることがあっても、いがみ合う仲となるだろうと予想はできた。だけど、奇跡は起こったのだ。

(初投稿初小説☆途中まで書いたけど続きが思いつきません。よくある展開ですが、続きを誰か書いてほしい!よろしくお願い! )

***

 投稿者のところに【ようちゃん】と打ち込むと、パソコンの画面を閉じた。誰か書いてくれるだろうか。誰も書いてくれないと、寂しいな~。

 誰かが書いてくれたかなと気になりすぎて、頻繁にその掲示板を覗いた。なんと、二日後の朝、第2話が投稿されていた。まだ眠たくて少ししか開かない目を擦りながらなんとか文章を読んだ。

***

【第2話】春木視点、君が心配だ

 毎日電車に乗り、高校へ向かう。その日は、汗が滴るほどに暑い日だった。

電車の中は人がぎゅうぎゅうであるから、乗り込む瞬間はいつも深く息を吐いてから、全身に力を入れて乗り込む。そしていつも隅に立っている君の生存確認をする。君は殺伐とした世の中にあるオアシスだ。君はいつも隅の方にいた。いつもと変わらぬ姿だと思ったが、いつもと違うのではないか?と、違和感が。いつもはツヤツヤで血色がよい色白美肌な君。だがしかし、よくよく観察を試みてみると、本日は顔色があまりよろしくない。次の駅に着いた時にはなだれのように人が乗り込んでくる。自分は人混みをかき分けて、君が潰されないように君の目の前に立った。そして見下ろした。

「まつ毛、長いな……」
「えっ?」

 心の中で止めておこうとした言葉が。君は思わず呟いてしまった言葉に反応して見上げてきた。

「いや、なんでもない。それよりも、汗がすごい。これで拭くか?」

 自分はローズ柄のタオルハンカチを君に差し出した。

「いや、いらないぜ」

 君は受け取らなかった。断られるとなんだか悔しさのような気持ちが込み上げてきて「拭きなさい」と言いながら、自分が彼の顔から溢れ出る汗を拭った。

 それから近距離のまま、自分たちは無言になった。チラリと君を見る。柔らかそうで触り心地の良さそうな君の茶色の髪。長い前髪は邪魔ではないのだろうか。目に悪影響がないか、心配だ。上から第三のボタンまで開いた白いシャツ。胸元がチラリしていて、下心ある者に狙われたりしないか、それもとても心配だ。今すぐに無理やり上までボタンをとめたい。

 そんなことを考えている時だった。君はふらふらとして倒れそうになった。自分は君が倒れないように君の体を全力で支えた。

「大丈夫か?」
「大丈夫だ。立ちくらみがしただけだから」と、君は拒否するような勢いで離れようとした。だが、ちょうどいつも君が降りる駅に着いたから、支えながら電車から降り、駅の中にあるベンチに座らせ、自分の水筒のお茶を飲ませた。その時ギュルルと君のお腹が鳴った。自分の鞄の中から、毎日学校で二時間目の授業の後にささっと口に入れる空腹対策の饅頭を取り出した。

「これ、食べるか?」

 質問形にすればまた拒否されるだろうか。自分は「これを食べなさい」と言い直し、袋から饅頭を出した。知らない人から食べ物をもらったらいけないと教わったから食べてはくれないだろうか?と予想したのだが「悪いな、ありがと」と言い、君は素直に食べてくれた。しばらくすると君の顔色はいつものように戻っていった。自分はほっと胸を撫で下ろす。

「ありがとな。見知らぬ相手にそこまでしてくれるなんて優しいな」

――実は、見知らぬ相手では、ないのだ。

(中途半端になってしまってはないだろうか。続きを楽しみにしております)

投稿者 キュン太

***


 そう来たか! 続きが気になりすぎる。でも続きは俺が考えるのか? どうしようか。

 それにしても、前髪が長いのが気になる部分やシャツのボタンの部分、あいつをなぜか思い出してしまうな。だけどあいつが妄想して小説を書くなんて、想像すらできない。

ああいう優等生なタイプは、いつも何を考えているのだろうか。

 なんて思っていたのだけど、もしかして?と思う出来事が後に。



 それは、二時間目の数学が終わった時間だった。ふと小説の饅頭のシーンを思い出し、なんとなく一番後ろ真ん中辺りに座っている中島を見てみた。すると食べていたのだ、饅頭を。それだけではない。昼休みに俺が中島の横を通り過ぎようとした時、中島がスマホを落とした。本当は拾いたくなかったけれど、無意識に拾っていた。

 その時、偶然見てしまった。

 中島のスマホのホーム画面に、学習アプリアイコンたちに紛れて、ときめき掲示板アプリのピンク色をしたアイコンが――。

 もしかして、もしかしてなのか?

 疑問は一気に頭の中に広がっていった。