ただ、君に笑っていてほしかった。~30日の奇跡と、空白の19日の秘密~

 目が覚める。
 いつの間にか、公園のベンチで寝てしまっていたみたいだ。
 ねむ……。
 幽霊になっても、眠いんだな、と思う。
『……今何時だろ』
 公園にあった時計を見る。
『11時20分……』
 辺りは真っ暗だ。
 夜だなー、という感じ。
 やることも行くところもないので、その辺を歩いてみる。
 でも、すぐに飽きてしまった。
 誰もいない。
 つまらない。
 幽霊でさえもいない。
 寂しい。
『……もう一回寝ようかな』
 そう呟いておきながら、全く眠くはない。
 なにもやることがない。
 ……家に帰ろうかな。
 帰りたいわけではないけれど、行くところがないんだよな。
 ぼんやりとした意識の中、家に向かって歩き出す。
『死んだら、楽になれると思ったけど、やることがなさすぎて、つまらないな。早くあの世に行きたい』
 寒いとか、暑いとか、特になにも感じないし、お腹もすかない。
 物に触ることができないくせに、壁はすり抜けられない。
 おかしい。
 矛盾している。
 でも、それが幽霊。
 ……どっちのほうが楽なんだろう。
 結局、俺の運命は神様が握っている。
『……結局、神様に愛された人が勝ちだよな』
 俺は、神様に愛されなかった。
 だから、家ではあんな目に……。
 ……いや、違うか。
 俺のせいか。
 ……俺が、母さんを殺したんだ。
 俺のせいで、母さんは、……倒れたんだから。
 俺は、ずっとワガママだった。
 そのせいで、母さんを追い詰めた。
 俺は、誕生日プレゼントで、どうしてもゲームが欲しかった。
 他のみんなが持っていたのに、俺だけ持っていなかったから。
 母さんと父さんにお願いしたけど、渋い顔をされた。
 高かったからだ。
 でも、どうしても欲しかった。
 だから、母さんにずっと頼んだ。
 「お願い、買ってよ」、「なかったら、仲間はずれにされるかもしれない」、「お手伝いもちゃんとするから」、「勉強するから」。
 母さんは、なんともいえない表情をしていた。
 でも、ある日を境に、母さんは急に忙しくなっていた。
 その理由を、俺は知らなかった。
 母さんは専業主婦だ。
 俺を産んで、仕事を辞めた。
 父さんの収入だけでも、生活できたから。
 ……母さんは、俺のために、働いていた。
 詳しくは知らないけれど。
 家にいることが少なくなった。
 父さんと母さんの仲が悪くなった。
 ……全部、俺のせいだった。
 俺が、ワガママ言ったせいだった。
 母さんには、限界が訪れた。
 学校から帰って来て、友達と遊ぶ、って母さんに伝えて、すぐに家を出ようと思っていた時。
 キッチンでは、タイマーが鳴り続けていた。
 お湯が溢れ出している音がした。
 嫌な予感がした。
 ……キッチンを見ると、母さんは倒れていた。
 すぐにテーブルの上に置いていたスマホで救急車を呼んだ。
 ……でも、間に合わなかった。
 俺のせいだ。
 俺が、ワガママなんて言っていなければ……。
 俺が、もっと早く帰っていれば……。