「ねぇ、葉月。……私の初恋は、琉偉だった」
突然、そう言った雪宮。
『え……?』
「アイツが死んでから気づいたの。……私は琉偉のこと、好きだった、って」
ポツリ、ポツリと話し出す雪宮。
「私にとって、琉偉は憧れの存在だった。……私は運動が苦手だったから、運動神経バツグンの琉偉が羨ましかった」
確かに、俺もサッカーがすごく上手い琉偉のことは、尊敬していたし、それと同じくらいの妬んでいた。
神様を恨んだ。
「他人とコミュニケーションをとるのも上手かったから、それも羨ましかった。私にはないものをもつアイツを、尊敬してた」
立ち止まって、空を見上げる。
……琉偉は、天国に行ったのだろうか。
「……でも、それは琉偉も一緒だった」
再び歩き出す。
「琉偉は、勉強ができる私に憧れてた。……小学校の時、そう言われたことがある」
ポツ、ポツと雨が降ってくる。
折り畳み傘をカバンから取り出す。
「その時は、正直モヤっとしたの。私にはないものを持ってるくせに、って。……結局さ、生きていくためにはコミュニケーションが必要でしょう?でも、私には、それが与えられなかった。それを、ずるいと思ってた」
俺も、サッカーができる琉偉を恨んだり、幼なじみで勉強ができる太一を羨んだりした。
……でも、琉偉も太一も、誰かを羨ましがっていたのだろう。
「……私、琉偉のこと、小学生の頃、あんまり好きじゃなかったんだよね。うるさいし、テキトーだし。……嫌いになりたかったんだと思う。苦しいから。私がないものばかりもっているアイツと一緒にいるのは」
どんどん雨足が強くなっている。
「……私、ずっとアイツのこと気にしてた。アイツと初めて同じクラスになった2年の時から。うるさくて、何かと突っかかってくるくせに、優しくて……。気になってた」
俺の家が近づいてくる。
「……私がアイツを……琉偉を好きだって気づいたのは、アイツがあの事件で死んだ後だった。……アイツ、私の目の前で刺されたんだよ。私を庇って……」
知らなかった……。
そんなこと、誰も言っていなかった。
「誰にも言ってないし。私、あの後、家を出られなかった時期があったけど、あの事件が起こったのは、中2の時だったでしょ?私、2年の時は別室登校してたじゃん。だから、いなくても不思議じゃなかったんだと思うな」
ああ、そうだったかも。
同じクラスだったのは、中1のときだけだったから、その後の関わりはあまりなかったのだ。
しかも、普通に教室に来てはいなかった。
……でも、定期テストで5教科、3教科の一位の座を誰かに渡したことはなかった。
テストの時と行事の時は来ていたのだ。
「……家を出られなかった時、琉偉は幽霊になって、私の前に現れた。……琉偉と一緒に過ごした後、好きだった、って気づいたの。もう遅いのに」
失ってから、気がつくことって、あると思う。
俺も、母さんがいなくなってから、なくてはならない存在だったと気づいた。
死んでから、生きていることは奇跡なのだと気づいた。
「……琉偉は、天国に行ったのかな」
平良川公園に着く。
「じゃあね、葉月。家、こっちでしょ?」
『あ、うん。また……』
……どうして、雪宮は急にこんな話…………?
「……葉月!」
『な、なに?』
「……葉月。……言っておきたかったこととか、やりたかったこととか、全部言ってね!……絶対、後悔しないでね、……旅立つ時に」
彼女の頬に、一筋の涙が流れた。
……綺麗だと思った。
『う、ん……』
そう返すのが、精一杯だった。
「またね!」
周りに誰もいない中、1人で満面の笑みを浮かべる彼女は、美しかった。
……満月のようだった。
彼女は、俺の暗闇に……、一筋の光を差し込んだ。
この夜を、明るく照らした。
俺にないものを持っている。
尊敬や、羨望とは違う。
友情でもない。
『これが、……好き?』
よく、わからない。
でも、当てはまる感情は、それしかないのではないだろうか……。
突然、そう言った雪宮。
『え……?』
「アイツが死んでから気づいたの。……私は琉偉のこと、好きだった、って」
ポツリ、ポツリと話し出す雪宮。
「私にとって、琉偉は憧れの存在だった。……私は運動が苦手だったから、運動神経バツグンの琉偉が羨ましかった」
確かに、俺もサッカーがすごく上手い琉偉のことは、尊敬していたし、それと同じくらいの妬んでいた。
神様を恨んだ。
「他人とコミュニケーションをとるのも上手かったから、それも羨ましかった。私にはないものをもつアイツを、尊敬してた」
立ち止まって、空を見上げる。
……琉偉は、天国に行ったのだろうか。
「……でも、それは琉偉も一緒だった」
再び歩き出す。
「琉偉は、勉強ができる私に憧れてた。……小学校の時、そう言われたことがある」
ポツ、ポツと雨が降ってくる。
折り畳み傘をカバンから取り出す。
「その時は、正直モヤっとしたの。私にはないものを持ってるくせに、って。……結局さ、生きていくためにはコミュニケーションが必要でしょう?でも、私には、それが与えられなかった。それを、ずるいと思ってた」
俺も、サッカーができる琉偉を恨んだり、幼なじみで勉強ができる太一を羨んだりした。
……でも、琉偉も太一も、誰かを羨ましがっていたのだろう。
「……私、琉偉のこと、小学生の頃、あんまり好きじゃなかったんだよね。うるさいし、テキトーだし。……嫌いになりたかったんだと思う。苦しいから。私がないものばかりもっているアイツと一緒にいるのは」
どんどん雨足が強くなっている。
「……私、ずっとアイツのこと気にしてた。アイツと初めて同じクラスになった2年の時から。うるさくて、何かと突っかかってくるくせに、優しくて……。気になってた」
俺の家が近づいてくる。
「……私がアイツを……琉偉を好きだって気づいたのは、アイツがあの事件で死んだ後だった。……アイツ、私の目の前で刺されたんだよ。私を庇って……」
知らなかった……。
そんなこと、誰も言っていなかった。
「誰にも言ってないし。私、あの後、家を出られなかった時期があったけど、あの事件が起こったのは、中2の時だったでしょ?私、2年の時は別室登校してたじゃん。だから、いなくても不思議じゃなかったんだと思うな」
ああ、そうだったかも。
同じクラスだったのは、中1のときだけだったから、その後の関わりはあまりなかったのだ。
しかも、普通に教室に来てはいなかった。
……でも、定期テストで5教科、3教科の一位の座を誰かに渡したことはなかった。
テストの時と行事の時は来ていたのだ。
「……家を出られなかった時、琉偉は幽霊になって、私の前に現れた。……琉偉と一緒に過ごした後、好きだった、って気づいたの。もう遅いのに」
失ってから、気がつくことって、あると思う。
俺も、母さんがいなくなってから、なくてはならない存在だったと気づいた。
死んでから、生きていることは奇跡なのだと気づいた。
「……琉偉は、天国に行ったのかな」
平良川公園に着く。
「じゃあね、葉月。家、こっちでしょ?」
『あ、うん。また……』
……どうして、雪宮は急にこんな話…………?
「……葉月!」
『な、なに?』
「……葉月。……言っておきたかったこととか、やりたかったこととか、全部言ってね!……絶対、後悔しないでね、……旅立つ時に」
彼女の頬に、一筋の涙が流れた。
……綺麗だと思った。
『う、ん……』
そう返すのが、精一杯だった。
「またね!」
周りに誰もいない中、1人で満面の笑みを浮かべる彼女は、美しかった。
……満月のようだった。
彼女は、俺の暗闇に……、一筋の光を差し込んだ。
この夜を、明るく照らした。
俺にないものを持っている。
尊敬や、羨望とは違う。
友情でもない。
『これが、……好き?』
よく、わからない。
でも、当てはまる感情は、それしかないのではないだろうか……。



