ただ、君に笑っていてほしかった。~30日の奇跡と、空白の19日の秘密~

『ねえ、雪宮(ゆきみや)さんさ、梨桜(りお)さんってわかる?三輪(みわ) 梨桜(りお)さん』
「知ってるよ。……最近死んじゃった子。突然死、とか言ってたよ。葉月(はづき)、知り合い?」
『まあ、そんな感じ』
 月曜日、学校に行く途中で、そんな話をする。
梨桜(りお)ちゃん、塔英高校だよね?公立高校の中でこの辺ではトップの」
『ああ、うん』
梨桜(りお)ちゃんはね、私のライバルだったの。小学の時にね」
 梨桜(りお)さんとの思い出を語る雪宮(ゆきみや)
「……梨桜(りお)ちゃんは、私が三年生の時に初めて同じクラスになったの。梨桜(りお)ちゃんは、衣織(いおり)っていう私の友達の友達だったの。で三年の時はよく話してたんだけど、それから六年になるまではクラス違って、関わりなかったんだよね。六年になってさ、美晴(みはる)以外の仲良かったコ……衣織(いおり)(かなで)ちゃん、心壱(こいち)ちゃん、月季(つき)ちゃん、伊波(いなみ)ちゃんとクラス離れちゃって……。美晴(みはる)とは、五年の時クラスが違って、その時、梨桜(りお)ちゃんと、……愛梨(あいり)ちゃんっていう梨桜(りお)ちゃんの幼なじみと仲良くなっててね。必然的に三人組になったの」
『じゃあ、雪宮(ゆきみや)さんって、愛梨(あいり)さんとも知り合い?』
「え?あ、うん。友達だよ。同じクラスになったのは一年の時だけだったけど……。六年になって、梨桜(りお)ちゃんと仲良くなってから、結構話すようになったし」
 俺と梨桜(りお)さんがどこで知り合ったのか、不思議なのだろう。
 どこかぼんやりしながら階段を下る。
「あ、そっか。梨桜(りお)ちゃん、まだ死んでから49日経ってないのか……」
芽依(めい)ちゃん……?」
 後ろから声がする。
 ……どこかで聞いたことがあるような……。
「あ、愛梨(あいり)ちゃん」
 あ、そうだ。
 梨桜(りお)さんのことが視える人。
 LU:NA.のライブ会場で会った人。
「久しぶり、芽依(めい)ちゃん。小学校ぶりだよね?私、今日は寝坊しちゃってさ。いつも早く行ってるから、問題はないんだけどね」
 俺には気づかない。
 ……霊感がある、とかではないんだなぁ。
「久しぶり!……え、でも白雪って遠いよね?」
「まあ、今からなら余裕で間に合うよ。芽依(めい)ちゃん、夏芽だよね?すごい!」
「ありがとー。でも白雪なら大学エスカレーターで行けるじゃん。羨ましい〜」
 白雪女学院。
 中高大一貫校で、歴史のある学校。
 愛梨(あいり)さんって、白雪の生徒なんだ……。
 この辺では、白雪の人は、お嬢様で頭が良い、というイメージがある。
「じゃあね、芽依(めい)ちゃん。私、下りだから」
「うん、またねー」
 駅のホーム。
 雪宮(ゆきみや)は、スマホのメモ機能を使って、俺とコミュニケーションをとることにしたらしい。

葉月(はづき)は、なにする?学校行くの?』

『ああ、まあ、うん。一応、そのつもり』

『そっか。分かった。帰りは?』

雪宮(ゆきみや)、美術部だよな?待ってるよ。一緒に帰ろう』

『OK』

 下り線の電車が到着した。
 愛梨(あいり)さんの姿は、もう見えない。
 ……愛梨(あいり)さんの近くに、梨桜(りお)さんはいなかったな、と思う。
 梨桜(りお)さんの残りは、4日。
 梨桜(りお)さんは、最後を誰と、どこで過ごすのだろう。
 俺は、最後の日を、誰と、どこで過ごすのだろう。
 ……家族とだけは、絶対に嫌だな。