ただ、君に笑っていてほしかった。~30日の奇跡と、空白の19日の秘密~

葉月(はづき) 麻人(あさと)くん』
 最寄駅についてから、父親が迎えにきているという雪宮(ゆきみや)と別れた。
梨桜(りお)、さん……』
『待ってたんだー。愛梨(あいり)、車で帰るから。君と会えたら良いなー、と思って。芽依(めい)ちゃんが駅に向かってるの見えたから』
 陽キャだな……。
『あ、愛梨(あいり)?』
『私の幼なじみ。私のことが視える人』
 ああ、あの女の人のことか、と納得する。
『君、どうして死んだの?事故?』
『まあ、そんな感じ、です』
 自殺、とは言い難い。
梨桜(りお)さんは……?』
『私?私は……突然死』
『え?』
『心臓突然死、ってやつ』
 なんとも言えない表情でそう言う梨桜(りお)さん。
『原因は、わからないんだってさ。お母さんたちがそう言ってたの、聞いたんだよね』
 どこか遠くを見つめながら、そう話す梨桜(りお)さんの横顔は、少し寂しそうだった。
『まだまだやりたいこと、たくさんあったのにな……。現世(ここ)にいられるのは、あと5日。……君は、後悔なく旅立ちなよ?』
 後悔なんて、ない。
 俺は事故じゃなくて、自殺だから。
 ……梨桜(りお)さんじゃなくて、俺だったら良かったのに。
 梨桜(りお)さんは、突然死じゃなければ、死なないだろう。
 …………少なくとも、自殺はないだろう。
 どうして、死にたくない人が……。
『生きている時には気づかなかったけどさ、死んでから気づくことって、たくさんあると思うんだよね。……君は、あと何日?』
『……今日を入れて、29日、です』
『そう……。残りの時間、大切に過ごしなよ?……じゃあ』