玄関に入った直後、我慢していた感情が一気にこぼれてくる。
 リビングと廊下を隔てているドアを開けると、「ニャー」と二匹が足元に擦り寄ってくる。
 けれど、もう言葉は聞こえない。

 飴の効果が切れたんだと思う。
 言葉は一切聞こえない。

「……あたし、お別れしてきたよ。ちゃんと笑ってお別れしたよ」

 その場にかがむと、ユズとメイが擦り寄ってくる。

『大丈夫?』

 まるであたしを心配しているみたいにまっすぐに見つめてくる。

「二人とも心配してくれてありがとね。お利口にお留守番してくれたご褒美におやつ食べようか」

 涙を拭って立ち上がり、猫のごはんをストックしている棚へ向かえば「ニャー」と元気よく鳴きだす。

「はいはい、待ってまって」

 言葉は聞こえずともきっと心は繋がっている。

 これがあたしの日常なんだ。