***
おれと御主人は、とりあえず近くをぶらぶらと歩くことにした。
猫の時にも御主人に連れてきてもらったことがある並木道には、桃色の花がたくさん咲いている。暖かい風が吹いてきて、気持ちがいい。
「ふあぁ……何だか眠くなってきたな」
「お前……遊ぼうって誘ってきておいて、まだ何にもしてないじゃないか」
「ち、違うぞ! 今、何をして遊ぼうか考えてたところなんだ!」
その時、おれの腹から“ぐうぅっ”と情けない音が響いた。
「……何だか、腹が減ったな」
「眠いの次は、腹減りかよ。何つーか、欲に忠実なやつだな」
はぁ、とため息を漏らした御主人は「ちょっと待ってろ」と言ってどこかに行ってしまった。おれは言われた通り、近くの芝生に座って大人しく待つことにする。
「お待たせ」
御主人はすぐに戻ってきた。その手には、さっきまではなかったピンク色の三角を二つ持っている。
「それは何だ?」
「クレープ。もしかして食べたことないのか?」
正直に頷けば、御主人は二つのクレープとやらをおれの目の前に差しだしてきた。
「苺バナナと、ツナにしてみた。どっちがいい?」
顔を近づけて鼻を鳴らせば、片方から懐かしく感じる、美味しそうな匂いが漂ってくる。
「こっちだ!」
「ツナの方な。ほら」
御主人から受け取ったクレープにかぶりつく。二口、三口と食べ進めていけば、おれの好物のツナにたどりついた。
御主人が作ってくれたご飯にも、よくこのツナが入っていたことを思い出す。だけど、猫の時に食べていたものとは、ちょっと味が違う気がする。多分、猫と人間では種類が違うのだろう。でも、そんなの気にならないくらい、すごく美味しい。
夢中になって食べていれば、右隣からふっと吐息を漏らすような、微かな笑い声が聞こえてくる。



