「にゃこ、聞いてくれる? ……ボクね、また学校でいじめられちゃったんだ。勉強ばっかりして、生意気だって。でも、お母さんに言ったら、話が大事になっちゃいそうでさ。だから我慢してる。本当はボクだって、勉強ばかりしていないでみんなと遊びたいけど……そうすると、お母さんを怒らせちゃうからさ」
御主人は、おれをぎゅっと抱きしめながら、またあのヘンテコな笑顔を浮かべた。
――やっぱりおれには、人間の世界のことはよく分からない。それでも、御主人が悲しい思いをしているってことだけは分かった。
「……にゃーご」
「ん? もしかして、慰めてくれてるの? ありがとう、にゃこ」
御主人の頬をぺろりと舐めれば、“元気出せよ”っておれの気持ちが伝わったのか、嬉しそうに笑ってくれた。
――おれは何があっても、ずっとずっと、御主人のそばにいよう。
話すこともできないし、お母さんにみたいに、頭を撫でてやることもできない。御主人がいつもしてくれるみたいに、ぎゅって抱きしめてやることもできない。
そんなおれだけど、御主人が辛い時には、すぐに気づいてやりたい。
おれはずっと御主人の味方だぞって、伝えてやるんだ。
そう心に決めながら、おれは御主人の身体にすり寄ったんだ。



