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「ソウタ、この服どうしたの? こんなに泥だらけにして……」
「ごめんなさい、お母さん。派手に転んじゃったんだ」
「全くもう、気をつけるのよ。それからテストの結果はどうだったの?」
「はい、これ」
「あら、今回も満点だったのね。さすがママの子だわ。これからもしっかり勉強するのよ? そうすればいい学校に入れて、将来楽ができるんだからね」

帰ってきた御主人を迎えに行けば、リビングでお母さんと話をしていた。
会話の内容はよく分からない。だけどおれは、御主人の今の顔が好きじゃない。
何ていうか、笑っているのに、笑ってない。変な顔をしてるんだ。
笑いたくもないのに無理やり笑っているその意味が、猫のおれにはよく分からなかった。

「あ、にゃこ! ただいま」

お母さんはキッチンの方に行ってしまった。
おれに気づいた御主人は、にぱっと明るい笑顔を浮かべて近づいてくる。

――御主人がおれに向けてくれるこの笑顔は、すごくすごく好きだ。いつもこんな風に笑っていればいいのに。そう思う。猫であるおれが、それを伝えることはできないけどさ。