「にゃっこにゃこ!」



「おーい、ソウタ! 何してんだよー!」

離れたところから声が聞こえてきた。どうやら、ソウタがいないことに気づいた友人が戻ってきたらしい。
ソウタが友人に向かって手を振っていれば、男の子がソウタの服の裾を引いて話しかけてきた。どうやら、かなり人懐こい子のようだ。

「お兄ちゃんは、おともだちと遊んでたの?」
「うん、そうだよ」
「そっか! おともだち、いいねぇ。ボクもね、保育園で、おともだち、いっぱいできたんだよ。たっくんとか、みかちゃんとか、ゆうきくんとか! あのね、みんなといっしょに遊んでね、にこにこって笑ってる顔見るの、すっごく好きなんだぁ」

そう話してくれた男の子は、大輪の花が咲いたような顔で笑った。
――その顔が、一瞬、大切な“あの子”と重なって見えた。

「……うん。俺も、大切な人たちが笑ってる顔を見るのは好きだよ。笑顔には人を幸せにしてくれる力があるってこと、世界一大切で大好きな友達に教えてもらったんだ」
「ふーん、そうなんだ!」

男の子は言葉の意味をあまりよく分かっていない様子で首を傾げながらも、やっぱりニコニコと楽しそうに笑っている。
そんな男の子の頭を最後にもう一度優しく撫でたソウタは、ゆっくりと立ち上がった。

「……それじゃあ、俺はもう行くから。じゃあね」
「うん! バイバイ、お兄ちゃん!」

離れたところから見守っていた母親に頭を下げて、男の子に手を振り返してから、背を向けて歩き出す。


陽が暮れ始めた空は、夕焼け色から紫色に変わっていく。
すんと鼻を鳴らせば、冬のにおいがする。

吹く風は冷たいけれど、心の中はほんわか温かくて、ソウタの胸には穏やかな気持ちが広がっていた。



Fin.