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「うー、さみぃ。これ、そろそろ雪でも降るんじゃねーの?」
「降るとしても、都心じゃそう積もらないだろうな」
「あ、それじゃあ今年の冬休みは皆でスノボでも行かない?」
「スノボかぁ。俺、やったことないけど」
「ソウタは運動神経いいし、すぐに滑れるようになるって! それより早く行こうぜ! マジでさみぃよ……!」
背丈のある茶髪の男は、ぶるりと大袈裟に体を震わせてみせると、ソウタを追い抜いて駆けていく。今は二人で、近くのコンビニに買い出しに行くところだ。
ソウタは大学三年生になった。
親しい友人もでき、楽しいスクールライフを送っている。
小さくなっていく友人の後ろ姿を見ながら、ソウタはのんびり歩く。行き先は分かっているので、後で合流すればいいだろうと思ったからだ。
「にゃあ」
耳に届いたのは、猫の鳴き声だ。辺りを見渡せば、塀の上を器用に歩いている白猫の姿があった。首輪がついているから、飼い猫のようだ。
「気をつけて帰るんだぞ」
ソウタが声を掛ければ、白猫は一瞬ソウタの方を見て、けれど当然返答があるわけもなく、そのまま歩いていってしまった。
ふと何かを思い出したソウタは、スマホカバーを外して裏返した。そこには一枚のプリクラが貼ってある。口角に人差し指を添えて笑顔を作っているそのプリクラには、ソウタ一人だけが映し出されている。
けれど、ソウタには見える気がした。確かに隣にいたはずの、大切なあの子の姿が。



