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「はぁ、楽しかったなぁ~」
御主人と写真を撮った後は、公園ですべり台やブランコっていう遊具に一緒に乗って遊んだり、土手に行って、御主人が買ってきてくれたボールを投げ合って遊んだりした。
おれは体力があまりないらしい。すぐに疲れちゃったんだけど、それに気づいた御主人は「少し休もう」って声をかけてくれる。優しいところも、やっぱり変わってないんだよなぁって、嬉しくなる。
「もう夕方か」
土手の芝生に寝転べば、おれの隣に腰を下ろした御主人は、空を見上げてポツリと呟く。青かった空は、すっかり温かなオレンジ色に染まっていた。
そういえば「夕焼け小焼けで日が暮れて」って、昔、御主人が歌っていたことがあったっけ。懐かしいな。
「……なぁ、ナコタ」
「うん? どうしたんだ?」
御主人がおれの名前を呼ぶ。だけど、次の言葉が聞こえてこない。不思議に思って首を動かせば、御主人は真っ直ぐな目でおれを見下ろしていた。
「ナコタって、本当にお前の名前なのか?」
「……うん? そうに決まってるだろ?」
「……こんなこと言ったら、頭がおかしいやつって思われるかもしれないけど。でも、でもさ……」
グッと顔を歪めた御主人は、今にも泣き出してしまいそうな顔で“本当のおれの名前”を口にする。
「お前は……“にゃこ”なんじゃないのか?」
――御主人が、その名前を口にした瞬間。
おれの身体は、眩い光に包まれた。
「っ、まぶし……っ、にゃこ!?」
御主人の慌てた声がする。眩しさに閉じていた目をそっと開ければ、何だか、目線が下がってしまったような気がする。手を持ち上げてみれば、ふわふわの毛で覆われた丸い手が見えた。
――どうやらおれの身体は、人間から猫の姿に戻ってしまったらしい。手足をよく見てみれば、少しずつ透けていっているのが分かる。……もう、お別れみたいだ。



