「……お父さん?」
「そう……パパの……お父さん」
ゆっくりと顔を僕の方に向ける、にゃーちゃん。
「パパのお父さんは、パパのこと……心配してるよ」
「……」
「『あいつ、大丈夫か?』って言ってる」
小さい頃、まだ離婚する前……良く笑っていたお父さんの顔が急に蘇ってきた。僕は目頭が熱くなり、ぽろりと涙が流れた。
「……そんな」
「まだ死んじゃったばかりだから。いるよ? そこに」
「えっ?」
腰を上げて、窓の外を見てみる。綺麗な月が浮かぶ。
「まぁ……パパは無理か」
「……見えない」
「もうちょっと経ったら……いなくなっちゃうけどね」
「……」
にゃーちゃんは何も言わずに、無言で僕を見つめる。
「……だいぶ親不孝だったから。呆れてるだろうなぁ……」
「……」
「小さい頃は、酷かったと思う」
「……」
「……毎日いらいらしてたしな」
「別に……そこまで気にしてないみたいだよ。パパのお父さん」
「えっ?」
「むしろ、離婚とか自己破産とか……迷惑かけたなって言ってる」
「……」
「でも、もうちょっとしゃべって欲しかったみたいだね。パパに」
何だ?
何で……僕やお父さんしか知らないことを……にゃーちゃんが知ってるんだ……本当にお父さんなのか……後から後から……涙が溢れてくる……
「うぅぅ……」
「パパのお父さんにも……そういう時期はあったから……それは仕方ないって」
「……」
「全然? 親不孝じゃ無かったって言ってるよ」
「……」
「これからの人生、ちゃんとやれよって」
テレビの横に置いているティッシュに手を伸ばして……目にあてる。
「パパのお父さん、ちゃんとパパのこと……分かってるんだね」
「……えっ?」
「今の喫茶店のお仕事……頑張れってさ」
「……」
「これまで色々……パパなりに辛い思いをしてきたから、喫茶店のお客さん達に優しくできてるんだろって」
「……うぅぅ」
「わたしと……喫茶店を好きでいてくれる人達を大切にしろよって」
「……分かってる」
「それができるなら……親不孝なんかじゃないし……もしできないのなら、親不孝だって。お父さん言ってる」
(……はぁ)
涙で、もう前が見えない……呼吸も苦しい。
にゃーちゃんは空から部屋の中に視線を移し、いつも通りの表情に戻っている。
「……落ち着いた?」
「……無理」
「……そうだよね。仕方ない」
「……」
「でも、良かったね。パパのお父さんが……まだ近くにいて」
「……うん。いづれ……いなくなるの?」
「うん。遠くから見守ってはくれるんだけどね……こんな感じの声は、もう聞こえなくなるかな」
「……そうなんだ」
「不思議だよね」
「……うん」
「あと……何か言ってた? お父さん」
鼻を何回かんで、ぐすりと鼻をすすりながら、僕は聞いた。
「ん? お客さん達と、わたしを大切しろよって」
「ははっ……本当、そうだね」
「あと」
「……あと?」
「ありがとうだって」
……僕はまた、テレビの横にあるティッシュに手を伸ばす――
「そう……パパの……お父さん」
ゆっくりと顔を僕の方に向ける、にゃーちゃん。
「パパのお父さんは、パパのこと……心配してるよ」
「……」
「『あいつ、大丈夫か?』って言ってる」
小さい頃、まだ離婚する前……良く笑っていたお父さんの顔が急に蘇ってきた。僕は目頭が熱くなり、ぽろりと涙が流れた。
「……そんな」
「まだ死んじゃったばかりだから。いるよ? そこに」
「えっ?」
腰を上げて、窓の外を見てみる。綺麗な月が浮かぶ。
「まぁ……パパは無理か」
「……見えない」
「もうちょっと経ったら……いなくなっちゃうけどね」
「……」
にゃーちゃんは何も言わずに、無言で僕を見つめる。
「……だいぶ親不孝だったから。呆れてるだろうなぁ……」
「……」
「小さい頃は、酷かったと思う」
「……」
「……毎日いらいらしてたしな」
「別に……そこまで気にしてないみたいだよ。パパのお父さん」
「えっ?」
「むしろ、離婚とか自己破産とか……迷惑かけたなって言ってる」
「……」
「でも、もうちょっとしゃべって欲しかったみたいだね。パパに」
何だ?
何で……僕やお父さんしか知らないことを……にゃーちゃんが知ってるんだ……本当にお父さんなのか……後から後から……涙が溢れてくる……
「うぅぅ……」
「パパのお父さんにも……そういう時期はあったから……それは仕方ないって」
「……」
「全然? 親不孝じゃ無かったって言ってるよ」
「……」
「これからの人生、ちゃんとやれよって」
テレビの横に置いているティッシュに手を伸ばして……目にあてる。
「パパのお父さん、ちゃんとパパのこと……分かってるんだね」
「……えっ?」
「今の喫茶店のお仕事……頑張れってさ」
「……」
「これまで色々……パパなりに辛い思いをしてきたから、喫茶店のお客さん達に優しくできてるんだろって」
「……うぅぅ」
「わたしと……喫茶店を好きでいてくれる人達を大切にしろよって」
「……分かってる」
「それができるなら……親不孝なんかじゃないし……もしできないのなら、親不孝だって。お父さん言ってる」
(……はぁ)
涙で、もう前が見えない……呼吸も苦しい。
にゃーちゃんは空から部屋の中に視線を移し、いつも通りの表情に戻っている。
「……落ち着いた?」
「……無理」
「……そうだよね。仕方ない」
「……」
「でも、良かったね。パパのお父さんが……まだ近くにいて」
「……うん。いづれ……いなくなるの?」
「うん。遠くから見守ってはくれるんだけどね……こんな感じの声は、もう聞こえなくなるかな」
「……そうなんだ」
「不思議だよね」
「……うん」
「あと……何か言ってた? お父さん」
鼻を何回かんで、ぐすりと鼻をすすりながら、僕は聞いた。
「ん? お客さん達と、わたしを大切しろよって」
「ははっ……本当、そうだね」
「あと」
「……あと?」
「ありがとうだって」
……僕はまた、テレビの横にあるティッシュに手を伸ばす――



