喫茶「凪」にも少しずつお客さんが来てくれるようになっていった。
商談前なのか……1人でノートパソコンを開くサラリーマン風の男性。女子会を楽しむ40代と思われる女性達……のんびりと本を広げる男性もたまに来る。
1日に10人くらいは来店してもらえるようになり、何とか……ご飯も食べられるようになっていった。
「このお店って、猫がいるんですか?」
よく分からないけれど、猫目当てで訪れてくれるお客さんも少しいるらしい。
「えっ? あ、はい。2階にいますけどね」
「えー! ほんとですか? 見てみたいなぁー……」
もちろん、衛生上の問題があるので、営業中にお客さんの前ににゃーちゃんを下ろすわけにはいかない。それに、ドアを開けた時に逃げてしまう可能性もある。
「今、2階で寝てると思いますよ」
僕はチーズケーキにフォークを添えながら、お客さんに伝える。
「絶対、福の神だと思うなぁ。黒猫ちゃん」
「……福の神」
「商売繁盛って言うじゃないですか」
「それって白猫だろ?
一緒に来ていたお客さんがつっこむ。
(……確かに)
にゃーちゃんと暮らし始めてから……お客さんが増えたのも事実。でもそれはたまたまタイミグがそうだったんだろうと思っていた。松野さんも言っていた通りで、キャットタワーを買いに行かなければ……出会っていない。
(そういうこともあるよ)
「はい、お待たせしました」
僕はお客さんの前に、そっとチーズケーキを置いた。
にゃーちゃんは賢い。僕は動物と暮らすのは初めてだったけれど……色々と僕に合せてくれているようにも感じる。
「猫は一緒に暮らす人間に、色々と合せてくれるようになる」これもネットで学んだ知識だ。本来は夜行性の動物らしく……夜から明け方にかけて活動が活発になるらしい。でも僕は夜の0時には寝てしまう。にゃーちゃんはしぶしぶなのかは分からないけれど、僕と一緒に朝まで眠る。
「でも猫ちゃんは、変なモノを遠ざけてくれますからね」
「そうそう。何か……うちも猫ちゃんと暮らしてて、運が良くなった気がするもん」
月に何度か開かれる、松野さんが講師のフラワーアレンジの会。参加されている方は、猫と暮らしている方が多いらしい。僕に猫に関することを色々と教えてくれる。
「黒猫ちゃんと仲、良いですか?」
「まぁ……そうですね……悪くはないと思いますけど……」
「それって斎藤さんのお世話が良いからですよ」
「……そうなんですかね」
フラワーアレンジの会は、意外と忙しい。皆さんコーヒーはもとより、ケーキも注文して下さる方が多いから。僕は豆を挽いたり、冷蔵庫をバタンバタン開け閉めしながら、会話に応じる。
「そうですって。嫌だったら……近づかないですよ。猫って」
「そういうもんなんですか……」
「そうよ? 下手したら逃げちゃいます。隙を見つけて」
僕が仕事が終わると、鳴いて甘えてくる。今のところは……そんな気配はない。
「きっと斎藤さんが『良い人』だからです」
「あー! それ分かる。斎藤さん『良い人』って感じですもん」
「ね。滲み出てるから。猫ちゃんも分かるんだと思いますよ?」
良い人……
良い人……
(『良い人』って……何だ? 僕は……『良い人』なのか?)
そんなに僕は……「良い人」なのか?
商談前なのか……1人でノートパソコンを開くサラリーマン風の男性。女子会を楽しむ40代と思われる女性達……のんびりと本を広げる男性もたまに来る。
1日に10人くらいは来店してもらえるようになり、何とか……ご飯も食べられるようになっていった。
「このお店って、猫がいるんですか?」
よく分からないけれど、猫目当てで訪れてくれるお客さんも少しいるらしい。
「えっ? あ、はい。2階にいますけどね」
「えー! ほんとですか? 見てみたいなぁー……」
もちろん、衛生上の問題があるので、営業中にお客さんの前ににゃーちゃんを下ろすわけにはいかない。それに、ドアを開けた時に逃げてしまう可能性もある。
「今、2階で寝てると思いますよ」
僕はチーズケーキにフォークを添えながら、お客さんに伝える。
「絶対、福の神だと思うなぁ。黒猫ちゃん」
「……福の神」
「商売繁盛って言うじゃないですか」
「それって白猫だろ?
一緒に来ていたお客さんがつっこむ。
(……確かに)
にゃーちゃんと暮らし始めてから……お客さんが増えたのも事実。でもそれはたまたまタイミグがそうだったんだろうと思っていた。松野さんも言っていた通りで、キャットタワーを買いに行かなければ……出会っていない。
(そういうこともあるよ)
「はい、お待たせしました」
僕はお客さんの前に、そっとチーズケーキを置いた。
にゃーちゃんは賢い。僕は動物と暮らすのは初めてだったけれど……色々と僕に合せてくれているようにも感じる。
「猫は一緒に暮らす人間に、色々と合せてくれるようになる」これもネットで学んだ知識だ。本来は夜行性の動物らしく……夜から明け方にかけて活動が活発になるらしい。でも僕は夜の0時には寝てしまう。にゃーちゃんはしぶしぶなのかは分からないけれど、僕と一緒に朝まで眠る。
「でも猫ちゃんは、変なモノを遠ざけてくれますからね」
「そうそう。何か……うちも猫ちゃんと暮らしてて、運が良くなった気がするもん」
月に何度か開かれる、松野さんが講師のフラワーアレンジの会。参加されている方は、猫と暮らしている方が多いらしい。僕に猫に関することを色々と教えてくれる。
「黒猫ちゃんと仲、良いですか?」
「まぁ……そうですね……悪くはないと思いますけど……」
「それって斎藤さんのお世話が良いからですよ」
「……そうなんですかね」
フラワーアレンジの会は、意外と忙しい。皆さんコーヒーはもとより、ケーキも注文して下さる方が多いから。僕は豆を挽いたり、冷蔵庫をバタンバタン開け閉めしながら、会話に応じる。
「そうですって。嫌だったら……近づかないですよ。猫って」
「そういうもんなんですか……」
「そうよ? 下手したら逃げちゃいます。隙を見つけて」
僕が仕事が終わると、鳴いて甘えてくる。今のところは……そんな気配はない。
「きっと斎藤さんが『良い人』だからです」
「あー! それ分かる。斎藤さん『良い人』って感じですもん」
「ね。滲み出てるから。猫ちゃんも分かるんだと思いますよ?」
良い人……
良い人……
(『良い人』って……何だ? 僕は……『良い人』なのか?)
そんなに僕は……「良い人」なのか?



