高校受験が終わって、僕は地域2番目の高校に進学した。
高校生になっても、僕の生活は大きく変わることはなく、誰もいない部屋でぼんやりする毎日を送っていた。
唯一変わったのは「早くこんな家、出ていってやる」という腹の奥から湧き出る怒りが原動力となり、中学3年生から勉強に没頭するようになったこと。そのお陰なのか、地域でもそれなりの進学校に合格できた。
「実は」
ある日の晩ご飯時。お父さんが急に話を始めたことがあった。
「……何」
何か話かけられれば、別に無視をしているわけじゃない。興味がなさそうに返事をするだけ。
「今度、……自己破産することになった」
「……えっ? 自己破産?」
「あぁ」
「……何それ」
これまで学校で習ったことのない言葉。テレビでたまに聞くことがある言葉。現実味がまったくないので、耳に入って来ない。
「……やってけんの?」
「あぁ。飯が食えなくなる訳じゃ無いから」
お父さんは淡々と僕に話をする。きっと色々あったんだと思う。中学3年生そして受験が終わった僕には何も言ってきたことはない。
「別によ、それで就職が困ることはないから」
「結婚だって問題ない」
まったく頭に入ってこない「ケッコンダッテモンダイハナイ」文字だけが、耳に届いているだけ。「あぁ、そう」と僕も平静を装って話を聞く。内心「大丈夫なのか?」と思いながら。
「自己破産」
まったく未知の、イメージが湧かない言葉が、僕を恐怖に陥れた。お父さんが離婚した時は、目の前からお母さんが消えた。「あぁ、この生活を毎日やっていくしかないのか……」と辛いながらも体感することができた。
しかし、自己破産。「破産」という言葉は、高校1年生になったばかりの僕には何一つ想像ができない。「ご飯すら……食べれなくなるのか?」とすら思っていた。
これでまた、友達に笑顔で隠し通さなくてはならないことが……1つ増えた。
「今度さ、遊びに行こうよ!」
「連休、親と旅行に行ってきたわ」
友達の話を学校で「へぇー! マジで? 良いなぁー」と笑顔で聞いて、僕は誰もいない家の中で泣きながら参考書を……壁に投げつける毎日。
お母さんなのか、お父さんなのか……いったい誰を恨めば良いのかすら、僕にはよく分からなくなってきていた。
高校生になっても、僕の生活は大きく変わることはなく、誰もいない部屋でぼんやりする毎日を送っていた。
唯一変わったのは「早くこんな家、出ていってやる」という腹の奥から湧き出る怒りが原動力となり、中学3年生から勉強に没頭するようになったこと。そのお陰なのか、地域でもそれなりの進学校に合格できた。
「実は」
ある日の晩ご飯時。お父さんが急に話を始めたことがあった。
「……何」
何か話かけられれば、別に無視をしているわけじゃない。興味がなさそうに返事をするだけ。
「今度、……自己破産することになった」
「……えっ? 自己破産?」
「あぁ」
「……何それ」
これまで学校で習ったことのない言葉。テレビでたまに聞くことがある言葉。現実味がまったくないので、耳に入って来ない。
「……やってけんの?」
「あぁ。飯が食えなくなる訳じゃ無いから」
お父さんは淡々と僕に話をする。きっと色々あったんだと思う。中学3年生そして受験が終わった僕には何も言ってきたことはない。
「別によ、それで就職が困ることはないから」
「結婚だって問題ない」
まったく頭に入ってこない「ケッコンダッテモンダイハナイ」文字だけが、耳に届いているだけ。「あぁ、そう」と僕も平静を装って話を聞く。内心「大丈夫なのか?」と思いながら。
「自己破産」
まったく未知の、イメージが湧かない言葉が、僕を恐怖に陥れた。お父さんが離婚した時は、目の前からお母さんが消えた。「あぁ、この生活を毎日やっていくしかないのか……」と辛いながらも体感することができた。
しかし、自己破産。「破産」という言葉は、高校1年生になったばかりの僕には何一つ想像ができない。「ご飯すら……食べれなくなるのか?」とすら思っていた。
これでまた、友達に笑顔で隠し通さなくてはならないことが……1つ増えた。
「今度さ、遊びに行こうよ!」
「連休、親と旅行に行ってきたわ」
友達の話を学校で「へぇー! マジで? 良いなぁー」と笑顔で聞いて、僕は誰もいない家の中で泣きながら参考書を……壁に投げつける毎日。
お母さんなのか、お父さんなのか……いったい誰を恨めば良いのかすら、僕にはよく分からなくなってきていた。



