黒猫と少女のやさしい奇跡

その日、夏美は学校から帰ると、メランと一緒に庭の花壇を眺めた。

小さな花が雨の雫でキラキラと光っている。
メランは花の間を静かに歩き、時折ウラヌスの手を鼻で突く。

「見て、メラン。小さな命も、雨の後は輝くんだね」

「そうですね。どんなに小さくても、命は美しい」

夏美はふと、メランの存在そのものが自分にとってどれほど大切かを実感した。
日常の何気ない瞬間に、メランの温もりと優しさがあるからこそ、自分は安心して笑えるのだと。

夕方になると、二人は部屋の窓際で星を眺めた。
メランは肩の上で丸まり、静かに夏美を見守る。

「メラン、ありがとう。そばにいてくれて」

「こちらこそ。夏美、あなたが私を助けてくれたから、今こうして一緒にいられるのです」

その言葉に、夏美は胸が熱くなるのを感じた。
友情と信頼が、言葉以上の形で二人を結びつけている。

夜が深まると、夏美は布団に座り込み、膝にメランを抱きながら考えた。

(私の願い……何を選べばいいんだろう……)

数日間の思考の末、夏美は答えを見つけた。
自分の願いを考えるとき、最も大切なのは他の誰でもない、"今そばにいるメラン"だった。

「メラン……私の願いは……」

夏美は小さな声で言葉を続けた。

「これからも、君と一緒にいたい」

メランは一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに柔らかく微笑むように見えた。

「それが、あなたの願いですか?」

「うん。私にとって、君が一番大切だから」

メランは優雅に尾を振り、夏美の頬にそっと触れた。
その瞬間、温かい光が二人を包み込み、部屋の中は柔らかな輝きで満たされた。

願いは叶ったけれど、それはただの魔法ではなく、二人の絆と信頼の結晶のように感じられた。