朝の光がカーテン越しに差し込む。
夏美はベッドの上で目を覚まし、隣で丸く眠るメランを見つめた。

この数日間、願いを考え続けてきた。
学校の帰り道も、授業中も、夜寝る前も、頭の中には「願い」という言葉が渦巻いていた。

しかし、心の奥には小さな不安があった。

願いを叶えたら、メランはどうなってしまうのだろう?

最初に話してくれたあの夜の言葉を思い出す。

「一つだけ、願いを叶えてあげましょう」

その一言がどれほど特別か、夏美は理解している。
しかし、その願いが叶えられる代償として、メランが自分の元を去ってしまうのではないか。
その恐怖が胸の奥で静かに膨らんでいた。

夏美は窓際に座り、雨上がりの街を眺める。水たまりに映る光は、まるで揺れる星のようで美しかった。

「メラン……もし私の願いを叶えたら……君はどうなるの?」

小さな声で問いかけると、メランはゆっくりと体を伸ばし、夏美の膝の上に飛び乗った。

「私は夏美のそばにいますよ、心配しなくていいのです」

その言葉は柔らかくて温かく、夏美の胸にすっと染み渡った。

けれど、心の奥底ではまだ迷いが残る。

(願いを叶えれば世界が変わるかもしれない。友達も、家族も、私自身も……でもメランは……)

メランはそんな心の葛藤を察してか、じっと夏美の目を見つめた。瞳の奥には不安も迷いも映っている。
しかし同時に、信頼と優しさが輝いていた。