わたしの心は踊っていた。人生で初めての猫。しかも……頭をよしよしすることができた。たった2本の指だったけど。でも、ふかふかした、絨毯のような感触はずっとわたしの指に残っていた。
「なぁ。知ってるんだぞ?」
学校から帰って、ごろんとベッドでスマホを触っていると、突然お兄ちゃんが声をかけてきた。
「何を?」
「猫だよ。猫」
一瞬ドキッとした。
「猫? 何のこと?」
「あれだろ? 毎晩、カーテンでこそこそしてるの……猫だろ?」
お兄ちゃんにバレていた。夜の8時になると、お兄ちゃんやお父さん達の様子をちゃんとチェックしていたのに……と思い、何だかショックだった。それじゃあ、お父さん達にもバレているのかなと不安になる。
「何よ……知ってたんだ」
冷静に、落ち着いて……お兄ちゃんに返す。
「やっぱそうか」
「……」
「俺は嬉しいんだよ」
「……は?」
「美穂も、猫の魅力がようやく分かってくれたみたいでさ」
自慢げに腕を組み、うんうんと頷いている。
「……言わないでよ? お父さんとお母さんに」
「言わないって。だってあれだろ? 内緒で進めてるんだろ?」
「……そうだけど」
「今度さ、猫に会いに行こうぜ」
「えっ? どいうこと?」
予想外のお兄ちゃんの提案。「お母さんに言っちゃおうかな」みたいな感じだと思っていたから。
「あのさ……」
お兄ちゃんは小声でわたしに提案してきた。
――
――
――
「ここだよ。甲斐の家」
「へぇ……おっきいね……」
思わず見上げる程の大きさ。お庭も広い1軒家。お兄ちゃんの友達のお家らしい。
「友達がさ、猫飼っててさ……見せてくれるって言ってるんだよ」
「美穂も行こうよ」
昨日の夜、お兄ちゃんから誘われた。
「……わたしも来て良かったのかな……」
「大丈夫大丈夫! ちゃんとDMで言ってあるからさ!」
「なら良いけど……」
甲斐という人に、わたしは会ったこともない。「猫、見れるぞ」というお兄ちゃんの言葉につられて、ここまで来たけど……帰った方が良いかなという気持ちになっていた。
お兄ちゃんが門のところにあるボタンを押すと、インターフォンから「はい」と声が聞こえてくる。
「あ、遠藤です」
お兄ちゃんが丁寧な声で答える。
「あ、はーい。ちょっと待ってね」
優しそうな女性の声が聞こえた。甲斐っていう人のお母さんみたい。
ガチャっという音と共にドアが開き、中から綺麗な女の人が出てくる。「おー……綺麗」わたしは思わず声が出た。
「あ、正人くんの友達の……賢吾です」
「どうぞどうぞ」
門を開けて、玄関まで歩く。うちには門なんてないからビックリ……「きっとお金持ちなんだろうなぁ」と思いながら、お兄ちゃんの後ろを歩く。
「あっ、妹の美穂です。一緒に良いですか?」
お兄ちゃんが女性にわたしのことを紹介してくれた。
「あら、可愛いわね。何年生?」
「5年です」
「あ、1つ下なんだね。入って入って」
女性は優しく微笑みながら、わたしとお兄ちゃんを家の中に入れてくれた。
(うわぁー……天井が高い……)
天井が低い「ひらや」とは全然違う。テレビで見るようなシャンデリアもあって……何だかお城みたい。
「おう! 待ってたぜ」
正面のドアから男の子が一人出てきた。……猫を抱っこしながら。
(あっ! 猫ちゃん!)
パッと男の子の顔を見て、すぐに視線は猫ちゃんにくぎ付けになる。
「ほら。猫」
お友達の正人くんは、お兄ちゃんに向かって猫ちゃんを見せてきた。「うわぁー……」とお兄ちゃんの目が輝く。
「とりあえず、2人とも靴脱いで」
お母さんがわたし達に言葉をかけてくれた。靴を脱いで、わたし達はリビングに向かう。
「なぁ。知ってるんだぞ?」
学校から帰って、ごろんとベッドでスマホを触っていると、突然お兄ちゃんが声をかけてきた。
「何を?」
「猫だよ。猫」
一瞬ドキッとした。
「猫? 何のこと?」
「あれだろ? 毎晩、カーテンでこそこそしてるの……猫だろ?」
お兄ちゃんにバレていた。夜の8時になると、お兄ちゃんやお父さん達の様子をちゃんとチェックしていたのに……と思い、何だかショックだった。それじゃあ、お父さん達にもバレているのかなと不安になる。
「何よ……知ってたんだ」
冷静に、落ち着いて……お兄ちゃんに返す。
「やっぱそうか」
「……」
「俺は嬉しいんだよ」
「……は?」
「美穂も、猫の魅力がようやく分かってくれたみたいでさ」
自慢げに腕を組み、うんうんと頷いている。
「……言わないでよ? お父さんとお母さんに」
「言わないって。だってあれだろ? 内緒で進めてるんだろ?」
「……そうだけど」
「今度さ、猫に会いに行こうぜ」
「えっ? どいうこと?」
予想外のお兄ちゃんの提案。「お母さんに言っちゃおうかな」みたいな感じだと思っていたから。
「あのさ……」
お兄ちゃんは小声でわたしに提案してきた。
――
――
――
「ここだよ。甲斐の家」
「へぇ……おっきいね……」
思わず見上げる程の大きさ。お庭も広い1軒家。お兄ちゃんの友達のお家らしい。
「友達がさ、猫飼っててさ……見せてくれるって言ってるんだよ」
「美穂も行こうよ」
昨日の夜、お兄ちゃんから誘われた。
「……わたしも来て良かったのかな……」
「大丈夫大丈夫! ちゃんとDMで言ってあるからさ!」
「なら良いけど……」
甲斐という人に、わたしは会ったこともない。「猫、見れるぞ」というお兄ちゃんの言葉につられて、ここまで来たけど……帰った方が良いかなという気持ちになっていた。
お兄ちゃんが門のところにあるボタンを押すと、インターフォンから「はい」と声が聞こえてくる。
「あ、遠藤です」
お兄ちゃんが丁寧な声で答える。
「あ、はーい。ちょっと待ってね」
優しそうな女性の声が聞こえた。甲斐っていう人のお母さんみたい。
ガチャっという音と共にドアが開き、中から綺麗な女の人が出てくる。「おー……綺麗」わたしは思わず声が出た。
「あ、正人くんの友達の……賢吾です」
「どうぞどうぞ」
門を開けて、玄関まで歩く。うちには門なんてないからビックリ……「きっとお金持ちなんだろうなぁ」と思いながら、お兄ちゃんの後ろを歩く。
「あっ、妹の美穂です。一緒に良いですか?」
お兄ちゃんが女性にわたしのことを紹介してくれた。
「あら、可愛いわね。何年生?」
「5年です」
「あ、1つ下なんだね。入って入って」
女性は優しく微笑みながら、わたしとお兄ちゃんを家の中に入れてくれた。
(うわぁー……天井が高い……)
天井が低い「ひらや」とは全然違う。テレビで見るようなシャンデリアもあって……何だかお城みたい。
「おう! 待ってたぜ」
正面のドアから男の子が一人出てきた。……猫を抱っこしながら。
(あっ! 猫ちゃん!)
パッと男の子の顔を見て、すぐに視線は猫ちゃんにくぎ付けになる。
「ほら。猫」
お友達の正人くんは、お兄ちゃんに向かって猫ちゃんを見せてきた。「うわぁー……」とお兄ちゃんの目が輝く。
「とりあえず、2人とも靴脱いで」
お母さんがわたし達に言葉をかけてくれた。靴を脱いで、わたし達はリビングに向かう。



