…二人で帰った帰り道、
猫の待っている花琴宮へ…。

花鈴と火火手が別れて帰ってから、
鎌足が猫と一人で帰ってくる。

秋風が吹いた帰り道は、人肌淋しく想う。

蕾が玄関前で手を握って、振り返る。

「…今日はお鍋だから。」

居間に入り、テレビをつける。

猫がテレビをみていて、
ソファで転がる。

ぐつぐつとお鍋があったまって、
すき焼きを二人で突く。

「…お肉買ってきたっけ?」

「…お肉お肉‐♥」

彼の近くで机に両肘をついて、
可愛く言う。

「…買ってきた。」

「…よし!入れよう!!」

すき鍋に箸が進むと共に、
鍋将軍の鎌足がやって来る。

「…肉。」

「…ほい。」

…二花がお肉を手渡す。

「…今日はdate♥、どうだった?」

…花鈴が言った。

「…ん‐、楽しかったよ♥」

…蕾が言った。

「…そっか、分かった。」

「…行くぞ。」

…火火手が言った。

「…じゃあ、出かけてくるから。」

「…夕飯?」

…二花が言った。

「…そ。」

「…行ってくる。」

…そう言って、
花鈴と火火手が玄関から出ていった。

「…ど‐したの?鎌足。」

「…俺は機嫌が悪いの!」

すき鍋を二人で食べてるのを
みながら、鎌足が言った。

「…俺も一緒に食わせて。」

猫が言うように、鎌足が言った。

ぐに‐と猫を鎌足があやす。

すき鍋の匂いがキッチンに広がって、
三人と一匹の話した笑い声が聞こえてきた。

……                     ……
 …                     …

二花と蕾がお風呂に入って、
二人で小さな部屋に行く。

鎌足が隣の部屋で、

「…じゃあ、おやすみ。」

って言って、部屋に戻ると、
二花が鍵をしめて、部屋に入った。

猫が一匹お布団にくるまって、
蕾が二花と一緒に毛布に包まれる。

蕾の髪の毛からシャンプーの
甘い香りがする。

「…今日は楽しかったね。」

「…うん。」

お布団に二人で包まりながら、
二花が蕾の手を握る。

「…猫の手だ…!」

握った蕾の手が猫の手になってゆく。

「…手を握らせてください。」

猫の手になる彼女の手を追いかけて、
握ればドロン!と消える。

…握った手が猫の手になる。

「…いいよ。」

猫になる手を差し伸べて、
彼を握りしめれば、人の手になる。

…ぎゅうっと、抱きしめた。

抱きしめれば抱きしめるほど、
猫になっていって、丸まってゆく。

ベージュのワンピースが
猫の毛に揺れて、猫返りする。

…彼を抱きしめたくて、
猫を抱きしめる。

ベリーのジャムを頬にのっけて、
そうして、猫がジャムを舐め取る。

二人、猫みたいな甘いkissをする。

「…にゃ‐」って、鳴いてみたり、
おどけて、ふざけて笑ったり。

…猫になって、あなたに茶化され、
…あなたにさわってもらって、

…あなたになでてもらいたかった。

…もっと、抱きしめて。

「…お前だけ。」

…あなたの声が聞きたい。

あなたの低くて甘くて優しい声がする。

…お互いのことを考えてて、

気持ちが通じ合ったら、

絡む目と目が一瞬で
分かり合える瞬間があった。

…嬉し涙でぬれて、
泣き腫らした頬をぬぐってくれる。

「…猫よりも君が好き。」

猫になった彼女を布団にくるめて、抱きしめた。