まだ暗い朝の夜明けから、
起き抜けに窓の灯が周りを照らす。
冷えた室内に明かりを灯して、
ぶるっと震えた、肌寒い朝に
ガスストーブのスイッチを入れる。
給油切れのマークに
殻になったガスストーブの
灯油入れを掴んで、
一階まで階段を降りた。
キッチンに入ると、
裏口から出て灯油を入れる。
灯油入れに透明の油が
入ってくる。
灯油を入れ終わると、
コルクを閉めて、灯油入れを持った。
一階から二階に上がると、
灯油を入れて、スイッチを入れる。
茶色のロングワンピースが
ガスストーブの火に揺れる。
彼が蕾のゆるふわパーマの
ロングヘアをさわって、声をかける。
「…寒くない?」
「…大丈夫。」
ブランケットを肩から羽織って、
子どものお化けが後ろから抱きしめる。
「…どうしたの?」
「…なんでもない。」
隣の部屋から鎌足がでてきて、
コーンスープを飲みながら扉の前に立った。
「…コーンスープあるよ。」
「…うん。」
キッチンに行って、コーンスープの
袋を切って、お湯を沸かす。
「…おはよう。」
夢海がパジャマのまま
キッチンに入ってきて、挨拶する。
…大好きな人たちに囲まれて、
みんなの顔が揃って幸せ…。
コーンスープにお湯を入れて、
また二階へ上がると、部屋のストーブの
前に立って、コーンスープをすする。
「…今日はどんな予定?」
「…今日は猫遊園地に行こう!」
「…猫遊園地?」
…子どもの妖怪たちが言う。
「…そう。」
…キラキラした顔で言った。
コーンスープを飲み終わると、
コップをベッドの脇の棚において、着替えをする。
蕾が茶色のリボンの模様のついた
タイツをはいて、茶のチェックの入った
ロングスカートに深緑のカーディガンを着た。
二花がお揃いのカーディガンを着て、
白いシャツに茶のローアップした
サロペットを着ていた。
朝ご飯を食べに三人で階下へ降りてゆく。
翁の顔をしたお化けが
朝方玄関前を掃き掃除する。
ニットワンピ姿の夢海が目玉焼きを
焼いて、ウインナーを転がす。
野菜サラダに昨日の余りの
カレースープ、ミニメロンパンだった。
お皿に盛り付けて完成っ!
「…いただきま‐す!」
二花がメロンパンを一口食べると、
蕾が隣から一口かじる。
鎌足が野菜サラダを食べて、
夢海がウインナーを頬張る。
火火手が目玉焼きをかじって、
妖猫がねこまんまを食べる。
「…今日は、映画行くって?」
「…うん‐。」
火火手がトーストを
かじったまま言う。
「…花鈴ちゃんと‐?」
「…そう、だけど。」
そう言ったら、
「…おはよう!」
大吾がやってキッチンに来る。
「…先、食べてる。」
「…いいよ‐。」
「…ごちそうさま‐!」
二花が食べ終わったお皿を
洗い物の中に入れる。
「…で、今日行く?」
「…行く行く‐♥!」
…蕾がぎゅっと、手を握りしめる。
「…じゃあ、8時待ち合わせね。」
「…分かった。」
火火手がミニトマトを
頬張りながら言った。
「…えっ?俺は‐?!」
「…映画、行くんでしょ?」
…夢海が言った。
「…え‐、遊園地は?」
「…じゃあ、
遊園地の映画館にする?」
…鎌足が言った。
「…普通の上映ってあるの?」
「…なくても、あるの!」
「…なにそれ。」
火火手が腕を後ろに組み、
椅子に背中を預けて言った。
「…じゃあ、
花鈴に連絡してみる。」
「…駅前に8時ね。」
…鎌足が言った。
「…分かった。」
❀❀❀
… 8時 にゃんこ駅前…
…待ち合わせで待ちぼうけしてる
二花に蕾が手をつないで、kissする…。
「…どうしたの?」
「…お待たせ♥!」
彼の周りをくるっと回ってダンスする。
「…可愛い?」
今日のお揃いのカーディガンをみせる。
「…うん。可愛い…。」
「…行くぞ。」
鎌足が風を切って、駅に入る。
電車の切符を買って、
車掌さんの窓口を通る。
階段を降りて、電車に乗る。
「…ちょっと、ちょっと!」
火火手や花鈴が
どやどやと電車に乗ってくる。
「…花鈴も?」
「…そ。監督。」
電車のホー厶で缶ジュースの
メロンソーダを買って、飲む。
「…入園時間、何時だっけ?」
「…ん‐、10時。」
「…10時かぁ。まだ2時間あるね。」
…電車がゆっくり動き出す…。
…タタン。…タタン。タタン。
「…辻󠄀ノ浦‐。辻󠄀ノ浦‐。」
…途中の各駅停車駅で立ち止まる。
…プッシュボタンの音がして、ドアが開く。
…蕾は立ったまま、向かい駅を眺めた。
…人が流れ込んできて、
押し流されそうになる。
「…蕾。」
「…こっち。」
二花は蕾の手を掴んで、
座席に座らせる。
手を絡ませると、あたたかい。
…ドキドキして、
心の居場所がなくなってしまう…。
…ドアが閉まる。
…電車の音がして、鼓動の音がする。
ふと、離れた指先…。
…眺めた視線で追いかけると、
なにか話して、すると、気づいたら
彼の機嫌が悪くなる。
「…なんか不機嫌。」
…電車の音がする。
鎌足の肩に手を置いて、
子どもの妖怪がゆさゆさ揺さぶる。
…流れる景色から海が見える。
…鎌足がまんざらでもない様子になる。
「…なんでもないよ。」
…イライラしたように、二花が言った。
手を握ろうとして、話しかけられる。
「…二花。」
「…何。」
彼女のよく動く唇をみると、
kissしたいなって想う。
「…なんでもない♪」
…降りる前、優しく唇にkissする。
「…ん?」
「…嬉しい。」
猫が「…にゃ‐。」って鳴いた。
海の見える街を電車で通って、
メープルの並木道の続く遊園地までの
道を二人と一匹、そして、四人で歩いて行った。
…… ……
… …
開園の前のゲート前に猫が集まってて、
すると、鎌足がゲートに寄りかかって、
時間が来て、チケットを切ると、遊園地に入る。
ゲートを通って、
クリスマスマーケットを抜けて、
はれはれ広場に出る。
始めにツンデレラ城で写真をパチリ♥!
「はい、デェズニー♥」
…ほんとだったら、そばにいたかったけど…
猫だったから、分からないなんて言わないで…
「…ねぇ。」
蕾が肩をちょんちょん突いて、
振り向いたとこに指の先をぷすっと刺す。
「…なにしてんの。」
「…なにって、写真。」
…二花がカメラの中を覗く。
「…どれどれ‐♥!」
「…これ。」
変顔の写真を鎌足がみせる。
「…変なの。」
「…ちょっと、やめてよ!」
鎌足に蕾が手を伸ばして、
両手でほっぺたをむにっとして、甘く言う。
「…だめ。」
「…もう。」
少しふてくされて、鎌足を
上目使いで見上げる。
「…まぁ、いっか。」
すると、二花が蕾を隣から抱きしめて、
写真をパチリ!
「…うわっ!」
「…なっ!」
二花が火火手とタッグを組んで、笑う。
「…仕返し!」
…パチリ!
火火手と花鈴が二人で写真をとって、
ふかふかのストールに花鈴が顔を埋めて、
火火手を抱きしめる。
隣でそんな二人を横目でみてると、
直ぐ側にいるのに、心のなかで遠くでいた
あなたのことを想い出す。
「…音楽流れてきた♪」
猫のミュージカルがやってきて、猫が歌を歌う。
でも、こうやって、
あなたを抱きしめてくれた写真をとると、
猫だったころのことを想い出す…。
〈 …日向のあたる窓際の向こうで
座布団に包まって猫が欠伸する…。
…1日海を眺めて、大きな魂で
人に化けて、魚を釣ったり、
魚を食べたりしてた…。
公園に行って、猫アイス食べたり、
電車にのって、猫遊園地に行ったり、
二人でdateしたね♥ 〉
‐…たくさんの猫たちがダンスをする…‐
〈 …猫の手でぎゅうと抱きしめたら、
あたしが猫になってて、
あなたが猫を茶化すけど、
…あたしは一人やきもち焼いて、
あなたを一人占めしたかった…
❀❀❀
…一緒に楽しく作った夕飯を、
二人で美味しくご飯食べて
結局けんかして、泣いて、
…次の日、夕飯欲しくないって
言ってご飯食べなかった…
…そうして、寂しさが募って…
…猫に餌をやる楽しさが…
他の人にとられてしまった
ように感じるあなたのことを想うと、
料理とかしてるの?って
聞くあなたが私を締め付ける
…二人で楽しかった頃のことを想い出した…
…二人、付き合ってから、
なかなかほんとのことが話せなくて…
たまに彼が茶化しては、
あたしが猫にあたる…
それでも、猫がじゃれてくれない。
…当たり前にゃ…
…なによ!てなって、
猫とケンカして、
と、想うと、
あそこの彼と彼女が仲直りする…。
…彼がちがうってって、笑うけど、
ほんとはウソつくくせに、
悪戯ばっかりで、ただ、
…抱きしめてほしかった…
❀❀❀
…手を握って、抱きしめて…
二人、繋いだ手が、はなれていく
けど、
付き合うってどういうこと?
結婚って言うけど、猫と結婚するの?
…ちがう…
…そうして、また、
けんかして、疲れて眠っては…
…しとしと心に猫ノ雨が降ってくる…
…だめよ… 〉
‐…猫の王子様が姫の
手を取って、くるっと回る…‐
〈 「…魂どろぼう?」
「…そ。」
…彼が言った。
「…どろぼう猫じゃあるまいし。」
抱きしめたら、体が重かったこととか、
彼女が華奢な体だったこととだったりとか、
…一緒に楽しく作った夕飯を、
二人で美味しくご飯食べて
結局けんかして、泣いて、
…次の日、夕飯欲しくないって
言ってご飯食べんかった…
…そうして、寂しさが募って…
…猫に餌をやる楽しさが…
他の人にとられてしまった
ように感じるあなたのことを想うと、
料理とかしてるの?って
聞くあなたが私を締め付ける
…二人で楽しかった頃のことを想い出した… 〉
…蕾が不思議と楽しい気持ちになる。
パレードが終わって、
猫のメンバーが離れていくと、
みんなで移動した。
猫コーヒーカップに乗って、
くるくる回る。
「…次!次!」
花鈴が火火手の手をひいて、連れてゆく。
「…ん‐。」
「…次!猫お化け屋敷!!」
猫お化け屋敷の妖の列に
並んで、立って待っていると…
「…もう一度、
マシュマロキャンディをあげるから、
1時間だけ子どもになってて。」
「…1時間だけ?」
「…なにそれ。」
ひそひそ声で二花と蕾が話をする。
「…いいから、いいから。」
鎌足が二花の肩に手を回して、
マシュマロキャンディを一つ手に乗せる。
(…ぱくっ。)
…柔らかいマシュマロキャンディを食べると、
大人だった二花と蕾が子どもになってゆく。
「…二花!」
「…蕾!」
二人、きゃあきゃあと抱きしめ合う。
お化け屋敷の順番が回ってきて、
洋館のなかに入ってゆく。
子どもの手で大人の鎌足の手を探して、
ぎゅっと手を握りしめる。
心配そうに二花が鎌足を見つめた。
…お化け屋敷に入ると、
ヨーロッパのハロウィン仕様で
棺の中の骸骨が動いたり、
「…きゃ‐!」
二花と蕾が叫び声をあげる。
手をつないで走っていくと、
洋館のなかでいたお化けが追いかけてきた。
「…わ‐!!」
子どもの足で一生懸命走る!
火火手に「…あおぞら教室(保育園)の
運動会のかけっこで一等とったんだよ!」って
二花が嬉しそうに言った。
出口が近くなると、二花が
火火手にだっこされて、
ぎゅっと火火手に抱きしめられて
お化け屋敷を出た。
可愛いオープンガーデンの広がる街並みを
てくてく歩いて、通りながら蕾が鎌足に話しかけた。
「…お腹減ったね。」
…ぐ‐。
…お腹が鳴っている。
「…じゃあ、レストラン入ろう!」
…カラリ‐ン♪
お昼ご飯に可愛いレストランに入って、
チェアガーデンに座る。
…赤と白のパラソルが二人の姿を包む…。
「…何頼むの?」
「…ん‐。そうなだな。」
と、一言おいて、次に何か言う前に…
ぼん!と白いポップキャンディの
混ざった綿菓子の煙に包まれて、
二花と蕾が大人に戻った。
「…私、まぐろ膳!」
と大人に戻った蕾が言った。
「…子どものままじゃん。」
…二花が蕾の頭を小突いて、笑いながら言った。
「…時間切れか。」
…鎌足が独り言のように呟いた。
「…何頼んだの。」
「…まぐろ膳!」
二花が顔を赤らめて言った。
「…あれ。一緒だ!」
「…恥ずかし‐。」
二花が口に手を当てて、顔を隠した。
同じ席に座って、
同じ席だなぁって彼を眺めてたら、
注文してたメニューがやって来て、
同じメニュー頼んだんだって想うと
嬉しくて心が暖まったよ…。
「…二人、付き合ってんじゃないの。」
火火手に二花が言われる。
「…火火手に言われたくない!」
…二花が噛みつく。
「…あんまりケンカしないで。」
…花鈴が止めに入る。
…注文したメニューが届いて、
たまたま一緒なこと考えてたなぁって想って。
…考えてた予定にあわせてくれた
猫神様に感謝しなきゃね…。
…そうして、鰻重膳を二人で一緒なの食べた。
花鈴と映画をみる火火手と二手に別れて、
二花と蕾と鎌足は猫ジェットコースターに乗った。
…カタン。…カタン。
猫ジェットコースターに乗ると、
動き始めに二花が蕾の手を繋いだ。
「…蕾。」
「…ん?」
「…大好き。」
…猫ジェットコースターが
航路を切って、空を走ってゆく。
…涼しい風が耳元で早鐘を打つ
鼓動をさらって、線路を切ってゆく。
…たくさんの妖の悲鳴が聞こえて、
猫ジェットコースターがトンネルをくぐる。
…手を握る手が、温かい。
…握り返すと、握りしめてくれる。
「…二花‐!」
「…私も大好き‐!!」
…猫ジェットコースターが
ぐるっと一回転して、歓声が走る。
「…俺も‐!」
…二花が叫んで、
猫ジェットコースターが静かに止まった。
「…二花、一緒に猫アイス食べよう!」
二花が蕾と約束して、
おもちゃの国の積み木で
できたカフェに入った。
ほんとだったら、
近くのもう一つのカフェで
鎌足が一人で猫アイスを食べてた。
猫がみてたら
鎌足と二人がすれ違って、
なんだかとっても切なかった…。
アイス食べてたら、
二花ったら…
猫ばっかり可愛がって、もう!
…猫をみて、
そんなふうに想うなんて…。
クリスマスの雰囲気の
誘う街並みのなか、
…楓の葉の舞う夕暮れで…
ゆっくりイルミネーションの光が
灯り始めて、凱旋門の前で…
…二人、kissをした。
…… ……
… …
起き抜けに窓の灯が周りを照らす。
冷えた室内に明かりを灯して、
ぶるっと震えた、肌寒い朝に
ガスストーブのスイッチを入れる。
給油切れのマークに
殻になったガスストーブの
灯油入れを掴んで、
一階まで階段を降りた。
キッチンに入ると、
裏口から出て灯油を入れる。
灯油入れに透明の油が
入ってくる。
灯油を入れ終わると、
コルクを閉めて、灯油入れを持った。
一階から二階に上がると、
灯油を入れて、スイッチを入れる。
茶色のロングワンピースが
ガスストーブの火に揺れる。
彼が蕾のゆるふわパーマの
ロングヘアをさわって、声をかける。
「…寒くない?」
「…大丈夫。」
ブランケットを肩から羽織って、
子どものお化けが後ろから抱きしめる。
「…どうしたの?」
「…なんでもない。」
隣の部屋から鎌足がでてきて、
コーンスープを飲みながら扉の前に立った。
「…コーンスープあるよ。」
「…うん。」
キッチンに行って、コーンスープの
袋を切って、お湯を沸かす。
「…おはよう。」
夢海がパジャマのまま
キッチンに入ってきて、挨拶する。
…大好きな人たちに囲まれて、
みんなの顔が揃って幸せ…。
コーンスープにお湯を入れて、
また二階へ上がると、部屋のストーブの
前に立って、コーンスープをすする。
「…今日はどんな予定?」
「…今日は猫遊園地に行こう!」
「…猫遊園地?」
…子どもの妖怪たちが言う。
「…そう。」
…キラキラした顔で言った。
コーンスープを飲み終わると、
コップをベッドの脇の棚において、着替えをする。
蕾が茶色のリボンの模様のついた
タイツをはいて、茶のチェックの入った
ロングスカートに深緑のカーディガンを着た。
二花がお揃いのカーディガンを着て、
白いシャツに茶のローアップした
サロペットを着ていた。
朝ご飯を食べに三人で階下へ降りてゆく。
翁の顔をしたお化けが
朝方玄関前を掃き掃除する。
ニットワンピ姿の夢海が目玉焼きを
焼いて、ウインナーを転がす。
野菜サラダに昨日の余りの
カレースープ、ミニメロンパンだった。
お皿に盛り付けて完成っ!
「…いただきま‐す!」
二花がメロンパンを一口食べると、
蕾が隣から一口かじる。
鎌足が野菜サラダを食べて、
夢海がウインナーを頬張る。
火火手が目玉焼きをかじって、
妖猫がねこまんまを食べる。
「…今日は、映画行くって?」
「…うん‐。」
火火手がトーストを
かじったまま言う。
「…花鈴ちゃんと‐?」
「…そう、だけど。」
そう言ったら、
「…おはよう!」
大吾がやってキッチンに来る。
「…先、食べてる。」
「…いいよ‐。」
「…ごちそうさま‐!」
二花が食べ終わったお皿を
洗い物の中に入れる。
「…で、今日行く?」
「…行く行く‐♥!」
…蕾がぎゅっと、手を握りしめる。
「…じゃあ、8時待ち合わせね。」
「…分かった。」
火火手がミニトマトを
頬張りながら言った。
「…えっ?俺は‐?!」
「…映画、行くんでしょ?」
…夢海が言った。
「…え‐、遊園地は?」
「…じゃあ、
遊園地の映画館にする?」
…鎌足が言った。
「…普通の上映ってあるの?」
「…なくても、あるの!」
「…なにそれ。」
火火手が腕を後ろに組み、
椅子に背中を預けて言った。
「…じゃあ、
花鈴に連絡してみる。」
「…駅前に8時ね。」
…鎌足が言った。
「…分かった。」
❀❀❀
… 8時 にゃんこ駅前…
…待ち合わせで待ちぼうけしてる
二花に蕾が手をつないで、kissする…。
「…どうしたの?」
「…お待たせ♥!」
彼の周りをくるっと回ってダンスする。
「…可愛い?」
今日のお揃いのカーディガンをみせる。
「…うん。可愛い…。」
「…行くぞ。」
鎌足が風を切って、駅に入る。
電車の切符を買って、
車掌さんの窓口を通る。
階段を降りて、電車に乗る。
「…ちょっと、ちょっと!」
火火手や花鈴が
どやどやと電車に乗ってくる。
「…花鈴も?」
「…そ。監督。」
電車のホー厶で缶ジュースの
メロンソーダを買って、飲む。
「…入園時間、何時だっけ?」
「…ん‐、10時。」
「…10時かぁ。まだ2時間あるね。」
…電車がゆっくり動き出す…。
…タタン。…タタン。タタン。
「…辻󠄀ノ浦‐。辻󠄀ノ浦‐。」
…途中の各駅停車駅で立ち止まる。
…プッシュボタンの音がして、ドアが開く。
…蕾は立ったまま、向かい駅を眺めた。
…人が流れ込んできて、
押し流されそうになる。
「…蕾。」
「…こっち。」
二花は蕾の手を掴んで、
座席に座らせる。
手を絡ませると、あたたかい。
…ドキドキして、
心の居場所がなくなってしまう…。
…ドアが閉まる。
…電車の音がして、鼓動の音がする。
ふと、離れた指先…。
…眺めた視線で追いかけると、
なにか話して、すると、気づいたら
彼の機嫌が悪くなる。
「…なんか不機嫌。」
…電車の音がする。
鎌足の肩に手を置いて、
子どもの妖怪がゆさゆさ揺さぶる。
…流れる景色から海が見える。
…鎌足がまんざらでもない様子になる。
「…なんでもないよ。」
…イライラしたように、二花が言った。
手を握ろうとして、話しかけられる。
「…二花。」
「…何。」
彼女のよく動く唇をみると、
kissしたいなって想う。
「…なんでもない♪」
…降りる前、優しく唇にkissする。
「…ん?」
「…嬉しい。」
猫が「…にゃ‐。」って鳴いた。
海の見える街を電車で通って、
メープルの並木道の続く遊園地までの
道を二人と一匹、そして、四人で歩いて行った。
…… ……
… …
開園の前のゲート前に猫が集まってて、
すると、鎌足がゲートに寄りかかって、
時間が来て、チケットを切ると、遊園地に入る。
ゲートを通って、
クリスマスマーケットを抜けて、
はれはれ広場に出る。
始めにツンデレラ城で写真をパチリ♥!
「はい、デェズニー♥」
…ほんとだったら、そばにいたかったけど…
猫だったから、分からないなんて言わないで…
「…ねぇ。」
蕾が肩をちょんちょん突いて、
振り向いたとこに指の先をぷすっと刺す。
「…なにしてんの。」
「…なにって、写真。」
…二花がカメラの中を覗く。
「…どれどれ‐♥!」
「…これ。」
変顔の写真を鎌足がみせる。
「…変なの。」
「…ちょっと、やめてよ!」
鎌足に蕾が手を伸ばして、
両手でほっぺたをむにっとして、甘く言う。
「…だめ。」
「…もう。」
少しふてくされて、鎌足を
上目使いで見上げる。
「…まぁ、いっか。」
すると、二花が蕾を隣から抱きしめて、
写真をパチリ!
「…うわっ!」
「…なっ!」
二花が火火手とタッグを組んで、笑う。
「…仕返し!」
…パチリ!
火火手と花鈴が二人で写真をとって、
ふかふかのストールに花鈴が顔を埋めて、
火火手を抱きしめる。
隣でそんな二人を横目でみてると、
直ぐ側にいるのに、心のなかで遠くでいた
あなたのことを想い出す。
「…音楽流れてきた♪」
猫のミュージカルがやってきて、猫が歌を歌う。
でも、こうやって、
あなたを抱きしめてくれた写真をとると、
猫だったころのことを想い出す…。
〈 …日向のあたる窓際の向こうで
座布団に包まって猫が欠伸する…。
…1日海を眺めて、大きな魂で
人に化けて、魚を釣ったり、
魚を食べたりしてた…。
公園に行って、猫アイス食べたり、
電車にのって、猫遊園地に行ったり、
二人でdateしたね♥ 〉
‐…たくさんの猫たちがダンスをする…‐
〈 …猫の手でぎゅうと抱きしめたら、
あたしが猫になってて、
あなたが猫を茶化すけど、
…あたしは一人やきもち焼いて、
あなたを一人占めしたかった…
❀❀❀
…一緒に楽しく作った夕飯を、
二人で美味しくご飯食べて
結局けんかして、泣いて、
…次の日、夕飯欲しくないって
言ってご飯食べなかった…
…そうして、寂しさが募って…
…猫に餌をやる楽しさが…
他の人にとられてしまった
ように感じるあなたのことを想うと、
料理とかしてるの?って
聞くあなたが私を締め付ける
…二人で楽しかった頃のことを想い出した…
…二人、付き合ってから、
なかなかほんとのことが話せなくて…
たまに彼が茶化しては、
あたしが猫にあたる…
それでも、猫がじゃれてくれない。
…当たり前にゃ…
…なによ!てなって、
猫とケンカして、
と、想うと、
あそこの彼と彼女が仲直りする…。
…彼がちがうってって、笑うけど、
ほんとはウソつくくせに、
悪戯ばっかりで、ただ、
…抱きしめてほしかった…
❀❀❀
…手を握って、抱きしめて…
二人、繋いだ手が、はなれていく
けど、
付き合うってどういうこと?
結婚って言うけど、猫と結婚するの?
…ちがう…
…そうして、また、
けんかして、疲れて眠っては…
…しとしと心に猫ノ雨が降ってくる…
…だめよ… 〉
‐…猫の王子様が姫の
手を取って、くるっと回る…‐
〈 「…魂どろぼう?」
「…そ。」
…彼が言った。
「…どろぼう猫じゃあるまいし。」
抱きしめたら、体が重かったこととか、
彼女が華奢な体だったこととだったりとか、
…一緒に楽しく作った夕飯を、
二人で美味しくご飯食べて
結局けんかして、泣いて、
…次の日、夕飯欲しくないって
言ってご飯食べんかった…
…そうして、寂しさが募って…
…猫に餌をやる楽しさが…
他の人にとられてしまった
ように感じるあなたのことを想うと、
料理とかしてるの?って
聞くあなたが私を締め付ける
…二人で楽しかった頃のことを想い出した… 〉
…蕾が不思議と楽しい気持ちになる。
パレードが終わって、
猫のメンバーが離れていくと、
みんなで移動した。
猫コーヒーカップに乗って、
くるくる回る。
「…次!次!」
花鈴が火火手の手をひいて、連れてゆく。
「…ん‐。」
「…次!猫お化け屋敷!!」
猫お化け屋敷の妖の列に
並んで、立って待っていると…
「…もう一度、
マシュマロキャンディをあげるから、
1時間だけ子どもになってて。」
「…1時間だけ?」
「…なにそれ。」
ひそひそ声で二花と蕾が話をする。
「…いいから、いいから。」
鎌足が二花の肩に手を回して、
マシュマロキャンディを一つ手に乗せる。
(…ぱくっ。)
…柔らかいマシュマロキャンディを食べると、
大人だった二花と蕾が子どもになってゆく。
「…二花!」
「…蕾!」
二人、きゃあきゃあと抱きしめ合う。
お化け屋敷の順番が回ってきて、
洋館のなかに入ってゆく。
子どもの手で大人の鎌足の手を探して、
ぎゅっと手を握りしめる。
心配そうに二花が鎌足を見つめた。
…お化け屋敷に入ると、
ヨーロッパのハロウィン仕様で
棺の中の骸骨が動いたり、
「…きゃ‐!」
二花と蕾が叫び声をあげる。
手をつないで走っていくと、
洋館のなかでいたお化けが追いかけてきた。
「…わ‐!!」
子どもの足で一生懸命走る!
火火手に「…あおぞら教室(保育園)の
運動会のかけっこで一等とったんだよ!」って
二花が嬉しそうに言った。
出口が近くなると、二花が
火火手にだっこされて、
ぎゅっと火火手に抱きしめられて
お化け屋敷を出た。
可愛いオープンガーデンの広がる街並みを
てくてく歩いて、通りながら蕾が鎌足に話しかけた。
「…お腹減ったね。」
…ぐ‐。
…お腹が鳴っている。
「…じゃあ、レストラン入ろう!」
…カラリ‐ン♪
お昼ご飯に可愛いレストランに入って、
チェアガーデンに座る。
…赤と白のパラソルが二人の姿を包む…。
「…何頼むの?」
「…ん‐。そうなだな。」
と、一言おいて、次に何か言う前に…
ぼん!と白いポップキャンディの
混ざった綿菓子の煙に包まれて、
二花と蕾が大人に戻った。
「…私、まぐろ膳!」
と大人に戻った蕾が言った。
「…子どものままじゃん。」
…二花が蕾の頭を小突いて、笑いながら言った。
「…時間切れか。」
…鎌足が独り言のように呟いた。
「…何頼んだの。」
「…まぐろ膳!」
二花が顔を赤らめて言った。
「…あれ。一緒だ!」
「…恥ずかし‐。」
二花が口に手を当てて、顔を隠した。
同じ席に座って、
同じ席だなぁって彼を眺めてたら、
注文してたメニューがやって来て、
同じメニュー頼んだんだって想うと
嬉しくて心が暖まったよ…。
「…二人、付き合ってんじゃないの。」
火火手に二花が言われる。
「…火火手に言われたくない!」
…二花が噛みつく。
「…あんまりケンカしないで。」
…花鈴が止めに入る。
…注文したメニューが届いて、
たまたま一緒なこと考えてたなぁって想って。
…考えてた予定にあわせてくれた
猫神様に感謝しなきゃね…。
…そうして、鰻重膳を二人で一緒なの食べた。
花鈴と映画をみる火火手と二手に別れて、
二花と蕾と鎌足は猫ジェットコースターに乗った。
…カタン。…カタン。
猫ジェットコースターに乗ると、
動き始めに二花が蕾の手を繋いだ。
「…蕾。」
「…ん?」
「…大好き。」
…猫ジェットコースターが
航路を切って、空を走ってゆく。
…涼しい風が耳元で早鐘を打つ
鼓動をさらって、線路を切ってゆく。
…たくさんの妖の悲鳴が聞こえて、
猫ジェットコースターがトンネルをくぐる。
…手を握る手が、温かい。
…握り返すと、握りしめてくれる。
「…二花‐!」
「…私も大好き‐!!」
…猫ジェットコースターが
ぐるっと一回転して、歓声が走る。
「…俺も‐!」
…二花が叫んで、
猫ジェットコースターが静かに止まった。
「…二花、一緒に猫アイス食べよう!」
二花が蕾と約束して、
おもちゃの国の積み木で
できたカフェに入った。
ほんとだったら、
近くのもう一つのカフェで
鎌足が一人で猫アイスを食べてた。
猫がみてたら
鎌足と二人がすれ違って、
なんだかとっても切なかった…。
アイス食べてたら、
二花ったら…
猫ばっかり可愛がって、もう!
…猫をみて、
そんなふうに想うなんて…。
クリスマスの雰囲気の
誘う街並みのなか、
…楓の葉の舞う夕暮れで…
ゆっくりイルミネーションの光が
灯り始めて、凱旋門の前で…
…二人、kissをした。
…… ……
… …



