…… ……
… …
…二花が夢海に
魔法のマシュマロキャンディで
蕾と二花が
大人になったことを説明していた。
「…そ‐ゆうこと、だから。」
「…じゃあ、猫カード作らなきゃ。」
…夢海が言った。
…なんだか訳わかんない。
「…どこまで、言葉を知ってるの?」
…夢海が蕾に聞いた。
「…猫だから、ちょっとだけ。」
…蕾が恥ずかしそうに言う。
猫電話が鳴って、bellをとる。
「…はい。蕾です。」
「…夕飯までに帰るから。」
会社勤めの父親の大吾が言った。
「…あれ?新しい子?」
「…親父‐。
話聞いたら猫の国から来たって。」
電話口に呼びかけて、二花が言った。
「…猫の国?」
「…そうです。」
「…帰ったら紹介するから。」
…二花が言った。
「…まぁ、いっか。じゃあ。」
「…なんか、大きくなってない?!」
…大吾が慌てて言った。
「…では。」
炊飯器の白い煙が立って、
ことことお鍋の煮る匂いがする。
「…鎌足‐!」
「…猫とばっかり遊ばない!」
鎌足が猫の手足を持って、
由良ゆらさせてると、蕾が言った。
「…カレースープに粉入れて。」
鎌足が猫をキッチンの床において、
さらさらカレー粉の粉を入れる。
蕾がレシピを net でみて、
大人になった二花がハンバーグの
挽き肉に微塵切りにした
玉ねぎとニンジンを入れると、
卵を割ってくれる。
キッチンに細い腰をおいて
ポケットに手を突っ込んで、
キッチンの取っ手に腰掛けて
鎌足がじっとみる。
「…ハンバーグ、こねれる?」
母親の夢海がハンバーグを
手でこねながら、鎌足に言った。
「…それで、二花も大人になったの?」
「…そう。」
「…二花。」
ハンバーグを手でぱんぱん叩きながら、
二花が蕾に種をぶつける。
「…やったな!」
「…子どものままじゃ、いられない!」
蕾も二花にハンバーグの種をぶつけ返す。
「…そっちこそ!」
「…大人になったろう!」
…ぱんぱん種をぶつけ合う。
できあがったハンバーグの種を
お皿において、カレースープを
杓文字で掬って、コトコト煮た。
ミニトマトを切って、マリネにする。
包丁で納豆サラダの胡瓜を
切ってたら、手を切ってしまった。
「…いたッ。」
蕾が一瞬、
目を瞑って言った。
「…こっち。」
切った手から血が出ているのを
二花がそっと、なめとって
蕾を見上げた。
「…二花、ごめん。」
…蕾がそう言う。
「…私、失敗ばかりで。」
「…いいよ。」
鎌足が一つの納豆を二つで割って、
二つのおかずを作った。
蕾がハンバーグを焼いて、
ホール缶にエリンギを入れて、炒める。
おかげの入った塩コショウをして、
ペースト状のソースを作って、
ハンバーグにかける。
ソースを手で掬って、
二花が舐める。
「…味見。」
「…おいしい?」
…蕾が言った。
「…おいしい。」
リーフレタスを手でちぎって、
鮭フレークに納豆をのせた
サラダを作っていた。
夕飯のメニューが納豆サラダに
カレースープ、トマトソースのかかった
手捏ねハンバーグにロールパンだった。
夕飯をテーブルの上において
全員が席に座るのを待った。
手を合わせて、声を合わせる。
「…いただきま‐す!」
フォークを使って、
お皿を口の近くまで持っていって
ハンバーグを頬張るとトマトソースが
べったりと二花の顔の端についた。
「…うん!うまい!」
蕾がトマトソースのエリンギを
こりこりかじった。
「…美味しいね!」
カレースープを鎌足が飲んで、
夢海が納豆サラダを食べた。
和気あいあいと話をしながら、
夕飯をみんなで食べた。
ボイラーの音が聞こえて、
お風呂の湯気が煙突から上がった。
❀❀❀
…廊下で一人、蕾が立ちすくむ。
「…二花が、いない。」
足元でまとわりつく猫の鳴き声が
聞こえて、静かに胸騒ぎがした。
❀❀❀
「…猫になりたくない?」
…二花に鎌足が言った。
「…は?」
…二花が言った。
「…魔法。」
鎌足が手を振る。…すると、
「…あんまり虐めると、叱るよ。」
夢海がちょっと現れて牽制する。
「…猫は、ちょっと。」
…二花が断ろうとする。
「…まぁまぁ、そう言わずに。」
鎌足が二花に肩を回して、
そう茶化した。
「…ちょっと、ちょっと!」
そう言うと、鎌足が指をなして、
二花を妖猫に変えてしまった。
「…ちょっと!」
❀❀❀
家のなかでテレビをみていて、
鎌足が猫をさわる。
蕾がソファの隣に座っていて、
テレビの音が居間から聞こえてきた。
「…どうして、お前は
そんなに気ままなの。」
鎌足がふぅと一息つく。
「…お風呂入ってるよ‐♥!」
…夢海の声が居間に響く。
「…にゃ‐。」
猫じゃらしを持って、鎌足が
妖猫をあやすと…
二花の魂が抜け出てきて、
…ふわっと蕾に依る。
猫とじっと目が合って、
蕾が二花を想い出す。
「…二花。」
…ふと、蕾が猫にそう呼ぶ。
「…うん?」
…妖猫が言った。
「…猫になったの?」
…蕾が鎌足の手から
猫をとって、
妖猫をあやしながら言った。
「…そう。」
妖猫になった二花が言う。
「…どうして。」
…蕾が呟く。
「…どうしてって、言っても…どうしても。」
…猫になった二花が言った。
「…わがまま、言わない!」
…鎌足が言った。
「……。」
…猫になった二花が黙り込む。
「…わがままなんて、言ってない!」
…蕾が泣きそうになる。
…二花が猫になって、
蕾がその妖猫をあやす。
二人でじゃれ合って、
笑いあったているのをみたら、
猫だった頃のことを想い出して
胸が軋むように痛んだ。
…妖猫がじゃれついてくる。
「…二花が悪いんじゃない!」
…蕾が猫にあたる。
すると、猫から抜け出た
二花の魂が蕾を抱きしめた。
…妖猫がするりと腕から逃げてゆく。
「…付き合う?」
…鎌足が蕾に聞く。
妖猫の魂から抜け出てきた二花が
人の姿に化けて出てきて、鎌足の耳をぎゅ‐っと
引っ張って、喧嘩していた。
「…言いすぎ。」
…二花が泣きそうになる。
「…俺と、付き合って。」
…妖猫になった、二花が蕾に言う。
「…そこまで。」
…夢海が猫を取り上げて、
「…二花は、蕾ね。」
そう言った。
「…付き合っちゃえば、いいじゃん。」
…風呂上がりの火火手が言った。
…髪の毛をタオルでがしがし拭きながら言った。
「…冗談だよ。」
…鎌足が少し笑う。
…鎌足が魂の二人を猫に変えて、
猫になった二人が一緒にねこまんまを食べて、
楽しかった話をするんだけど、
しばらくたってけんかもして、
一人ぼっちになって、猫が鳴く。
そうして、一緒に過ごした
想い出を想い出して、
夕飯を二人で食べた想い出
みたいなのを懐かしく想う…。
「…猫ちゃんたち!
お風呂に入るよ‐♥!」
二花が猫になって、
…泡泡たっぷり…
二人でお風呂に入って、
一緒に眠った。
お布団に入って、二花が言った。
…もともと猫だから返事が
なかなかできなかった蕾がいた。
「…抱きしめてって言って、
抱きしめてくれる…そんな人を
妖猫じゃ変われないから、
抱きしめてくれる人を一番に
大切にするために、妖猫を忘れて。」
そうして、一緒のお布団で
蕾が二花に抱きしめられる。
夢の中でいいからと、鎌足が
妖猫にしたことを少し後悔していた…。
…… ……
… …
… …
…二花が夢海に
魔法のマシュマロキャンディで
蕾と二花が
大人になったことを説明していた。
「…そ‐ゆうこと、だから。」
「…じゃあ、猫カード作らなきゃ。」
…夢海が言った。
…なんだか訳わかんない。
「…どこまで、言葉を知ってるの?」
…夢海が蕾に聞いた。
「…猫だから、ちょっとだけ。」
…蕾が恥ずかしそうに言う。
猫電話が鳴って、bellをとる。
「…はい。蕾です。」
「…夕飯までに帰るから。」
会社勤めの父親の大吾が言った。
「…あれ?新しい子?」
「…親父‐。
話聞いたら猫の国から来たって。」
電話口に呼びかけて、二花が言った。
「…猫の国?」
「…そうです。」
「…帰ったら紹介するから。」
…二花が言った。
「…まぁ、いっか。じゃあ。」
「…なんか、大きくなってない?!」
…大吾が慌てて言った。
「…では。」
炊飯器の白い煙が立って、
ことことお鍋の煮る匂いがする。
「…鎌足‐!」
「…猫とばっかり遊ばない!」
鎌足が猫の手足を持って、
由良ゆらさせてると、蕾が言った。
「…カレースープに粉入れて。」
鎌足が猫をキッチンの床において、
さらさらカレー粉の粉を入れる。
蕾がレシピを net でみて、
大人になった二花がハンバーグの
挽き肉に微塵切りにした
玉ねぎとニンジンを入れると、
卵を割ってくれる。
キッチンに細い腰をおいて
ポケットに手を突っ込んで、
キッチンの取っ手に腰掛けて
鎌足がじっとみる。
「…ハンバーグ、こねれる?」
母親の夢海がハンバーグを
手でこねながら、鎌足に言った。
「…それで、二花も大人になったの?」
「…そう。」
「…二花。」
ハンバーグを手でぱんぱん叩きながら、
二花が蕾に種をぶつける。
「…やったな!」
「…子どものままじゃ、いられない!」
蕾も二花にハンバーグの種をぶつけ返す。
「…そっちこそ!」
「…大人になったろう!」
…ぱんぱん種をぶつけ合う。
できあがったハンバーグの種を
お皿において、カレースープを
杓文字で掬って、コトコト煮た。
ミニトマトを切って、マリネにする。
包丁で納豆サラダの胡瓜を
切ってたら、手を切ってしまった。
「…いたッ。」
蕾が一瞬、
目を瞑って言った。
「…こっち。」
切った手から血が出ているのを
二花がそっと、なめとって
蕾を見上げた。
「…二花、ごめん。」
…蕾がそう言う。
「…私、失敗ばかりで。」
「…いいよ。」
鎌足が一つの納豆を二つで割って、
二つのおかずを作った。
蕾がハンバーグを焼いて、
ホール缶にエリンギを入れて、炒める。
おかげの入った塩コショウをして、
ペースト状のソースを作って、
ハンバーグにかける。
ソースを手で掬って、
二花が舐める。
「…味見。」
「…おいしい?」
…蕾が言った。
「…おいしい。」
リーフレタスを手でちぎって、
鮭フレークに納豆をのせた
サラダを作っていた。
夕飯のメニューが納豆サラダに
カレースープ、トマトソースのかかった
手捏ねハンバーグにロールパンだった。
夕飯をテーブルの上において
全員が席に座るのを待った。
手を合わせて、声を合わせる。
「…いただきま‐す!」
フォークを使って、
お皿を口の近くまで持っていって
ハンバーグを頬張るとトマトソースが
べったりと二花の顔の端についた。
「…うん!うまい!」
蕾がトマトソースのエリンギを
こりこりかじった。
「…美味しいね!」
カレースープを鎌足が飲んで、
夢海が納豆サラダを食べた。
和気あいあいと話をしながら、
夕飯をみんなで食べた。
ボイラーの音が聞こえて、
お風呂の湯気が煙突から上がった。
❀❀❀
…廊下で一人、蕾が立ちすくむ。
「…二花が、いない。」
足元でまとわりつく猫の鳴き声が
聞こえて、静かに胸騒ぎがした。
❀❀❀
「…猫になりたくない?」
…二花に鎌足が言った。
「…は?」
…二花が言った。
「…魔法。」
鎌足が手を振る。…すると、
「…あんまり虐めると、叱るよ。」
夢海がちょっと現れて牽制する。
「…猫は、ちょっと。」
…二花が断ろうとする。
「…まぁまぁ、そう言わずに。」
鎌足が二花に肩を回して、
そう茶化した。
「…ちょっと、ちょっと!」
そう言うと、鎌足が指をなして、
二花を妖猫に変えてしまった。
「…ちょっと!」
❀❀❀
家のなかでテレビをみていて、
鎌足が猫をさわる。
蕾がソファの隣に座っていて、
テレビの音が居間から聞こえてきた。
「…どうして、お前は
そんなに気ままなの。」
鎌足がふぅと一息つく。
「…お風呂入ってるよ‐♥!」
…夢海の声が居間に響く。
「…にゃ‐。」
猫じゃらしを持って、鎌足が
妖猫をあやすと…
二花の魂が抜け出てきて、
…ふわっと蕾に依る。
猫とじっと目が合って、
蕾が二花を想い出す。
「…二花。」
…ふと、蕾が猫にそう呼ぶ。
「…うん?」
…妖猫が言った。
「…猫になったの?」
…蕾が鎌足の手から
猫をとって、
妖猫をあやしながら言った。
「…そう。」
妖猫になった二花が言う。
「…どうして。」
…蕾が呟く。
「…どうしてって、言っても…どうしても。」
…猫になった二花が言った。
「…わがまま、言わない!」
…鎌足が言った。
「……。」
…猫になった二花が黙り込む。
「…わがままなんて、言ってない!」
…蕾が泣きそうになる。
…二花が猫になって、
蕾がその妖猫をあやす。
二人でじゃれ合って、
笑いあったているのをみたら、
猫だった頃のことを想い出して
胸が軋むように痛んだ。
…妖猫がじゃれついてくる。
「…二花が悪いんじゃない!」
…蕾が猫にあたる。
すると、猫から抜け出た
二花の魂が蕾を抱きしめた。
…妖猫がするりと腕から逃げてゆく。
「…付き合う?」
…鎌足が蕾に聞く。
妖猫の魂から抜け出てきた二花が
人の姿に化けて出てきて、鎌足の耳をぎゅ‐っと
引っ張って、喧嘩していた。
「…言いすぎ。」
…二花が泣きそうになる。
「…俺と、付き合って。」
…妖猫になった、二花が蕾に言う。
「…そこまで。」
…夢海が猫を取り上げて、
「…二花は、蕾ね。」
そう言った。
「…付き合っちゃえば、いいじゃん。」
…風呂上がりの火火手が言った。
…髪の毛をタオルでがしがし拭きながら言った。
「…冗談だよ。」
…鎌足が少し笑う。
…鎌足が魂の二人を猫に変えて、
猫になった二人が一緒にねこまんまを食べて、
楽しかった話をするんだけど、
しばらくたってけんかもして、
一人ぼっちになって、猫が鳴く。
そうして、一緒に過ごした
想い出を想い出して、
夕飯を二人で食べた想い出
みたいなのを懐かしく想う…。
「…猫ちゃんたち!
お風呂に入るよ‐♥!」
二花が猫になって、
…泡泡たっぷり…
二人でお風呂に入って、
一緒に眠った。
お布団に入って、二花が言った。
…もともと猫だから返事が
なかなかできなかった蕾がいた。
「…抱きしめてって言って、
抱きしめてくれる…そんな人を
妖猫じゃ変われないから、
抱きしめてくれる人を一番に
大切にするために、妖猫を忘れて。」
そうして、一緒のお布団で
蕾が二花に抱きしめられる。
夢の中でいいからと、鎌足が
妖猫にしたことを少し後悔していた…。
…… ……
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