…ブゥゥゥン。

「…二花‐!着いたよ‐♥」

「…うん!」

自家用車から二花と蕾が降りて、
猫スーパーへ入る。

走ってスーパーまで行くと、
お母さんに抱っこされて

買い物カゴをとって、
カラカラを引いていく。

二花はスーパーへ着くと、

「…手!」

片手を出して、蕾に言った。

「…恋人。」

「…恋人?」

…蕾が頭を傾げて言った。

「…そう♥ 恋人!」

「…恋人…。」

…蕾が嬉しそうに呟いた。

「…毎日、何してたの?」

「…毎日、海をみてたよ。」

「…海かぁ…。」

二人、手をつないで歩いていくと、
猫キャベツをとる。

「…海で毎日、泳いでたりしてたよ。」

「…猫なのに?」

「…そう!猫なのに!」

…蕾がぎゅう‐って二花を抱きしめる。

「…蕾!大好き!」

二花もぎゅう‐って抱きしめた。

「…二花も大好き!」

「…そうだ。猫だったから、
言葉を知らないと思って。」

…思いついたように、二花が言った。

「…言葉?」

「…そう。」

「…言葉を教えてあげる。」

二花は蕾の手を握って、そう言った。

……                      ……
 …                      …

猫キャベツを両手で持って、
二花がお母さんのほうを振り向く。

「…お母さん。
今日の晩ごはんは、何?」

「…ん‐、今日はポトフ。」

「…お母さん。」

蕾がお母さんを見上げる。

「…ん?」

…母親の夢海(ゆめみ)がニコッと笑う。

猫スタンプのついた
猫ウインナーをとって、

カゴの中に入れる。

猫じゃかいもと猫ニンジンをとって
猫玉ねぎを入れると、コンソメを

買って、カートを引いた。

蕾と一緒に手を引いて、
お菓子コーナーへ二花は行く。

「…二花‐!」

…二花がいない…。

…ちょこまかちょこまかと!


❀❀❀


猫には不思議な力がある。

…猫神がみせた、
二人の幸せな夢をみせる…。

花琴宮の妖猫が遠くで見守っている。


…猫夢をみる…。大人になった夢を…。

…二花と蕾が大人になったら…

…冬のクリスマスイブ…

「…買い物、
一緒にできるの久しぶりだね♪」

「…そうだな‐。」

「…そういえば、子どもの頃‐、

初めて出会った日に
一緒に出かけたよね。」

「…ん‐、買い物行ったな。」

「…何作ったっけ。
あの日のメニュー♪」

「…ポトフじゃなかった?」

「…ポトフか。」

「…じゃあ、ポトフね♪」

…カートをひくときに、
蕾の後ろに回って、抱きしめるように

カートを引いていく。

「…ちょっと、早いよ。」

「…そう?」

カートをコロコロコロ…。
引いてゆく…コロコロコロ…。


❀❀❀


…カートを引いて、右へ回ると
インスタント麺やマヨネーズを

置いている商品棚の前を通り、
お菓子コーナーへ行く。

「…いた!」

…カートをひいて、
走ってくると…二花が

妖猫キャンディを手にとって、
カゴの中に入れた。

蕾は妖猫スナック菓子を
両手で握っていた。

「…蕾は、これね。」

夢海が両手で握っていた
スナック菓子を手にとって、

カートに入れた。

他にもヨーグルトや卵や牛乳、
鶏肉に豚肉、牛肉ミンチにアイスバー、

野菜に果物などを買った。

…猫レジに並んで買い物をする…。

…ピッ。「…5864猫円になります。」

一万円払うと、お釣りを貰って
買い物猫袋に猫品を入れる。

自家用車に乗って、家に帰る。

後ろの席で手をつないで眠る二人が、
静かに揺れていた。

……                      ……
 …                      …

「…帰ってきたよ‐!」

花琴宮に車を入れて、
出待ちしていた猫たちに手を振る。

どっさりと買い込んだ買い物猫袋を
玄関先において、二花がおトイレに走る!

「…トイレ!トイレ!」

「…もっちゃう!もっちゃう!」

可愛い西洋トイレに入ると、
二花はおしっこをして、水を流した。

野茨の洗面台で手を洗って、紙を
とって、拭き取る。

「…お昼作ってるよ‐♥!」

ほこほこあったかいラーメンができている。

「…ただいま‐!」

ユリーカ高校から自転車で帰ってきた
火火手がキッチンで二花に聞く。

「…どしたの?その子?」

「…二花、彼女?」

肩に背負った学生鞄を
玄関先において言った。

「…うん!」

「…こんにちは‐!」

花鈴がにょっと顔を出す。

「…あら。花鈴ちゃん。」

「…お世話になってます。」

花鈴が火火手の学生帽を
とって、ぽすっと頭においた。

「…なに。」

「…なんでも。」

…花鈴が言う。

「…ないです、よ‐だ!」

ヤカンのお化けが真っ赤になって
沸騰した音がキュ‐って鳴る。

…まるで漫画みたいな描写だ。

「…お昼食べておいで!」

「…は‐い!」

二花と蕾が返事をした。

「…はい!お待ち!
猫キャベラーメンできたよ!」

猫キッチンでキャベツのたっぷりのった
猫ラーメンを机の上においた。

「…ちは‐す。」

背の高い端正な顔立ちの学ラン姿の
火火手の友達が窓から乗り込んでやって来た。

「…二花、彼女?」

「…うるせえ!」

…火火手がぼやいた。

…二花がきょとんとする。

「…に‐ちゃん!
蕾に言葉を教えてあげるんだよ!」

「…ん‐?」

「…蕾が猫だったからね、」

「…言葉を知らないと思って。」

二花が恥ずかしそうに言った。

「…言葉か、賢いな。」

…友達の裕二が言った。

「…良い子良い子。」

…花鈴が二花の頭を撫でながら言った。

「…いっただっきま‐す!」

両手を合わせて、食べ始める。

猫の形をした猫かまぼこが入っていて、
とても美味しいっ!

…ずずずっ!

「…みんなのもあるよ‐!」

「…あざ‐す。」

…裕二が返事をする。

秋のお宮の境内でのんびり座る
猫の後ろ姿がキッチンからみえていた。

……                      ……
 …                      …

…秋の昼下がり…

花琴宮の本殿で二花と蕾が座って
火火手と言い合っていた。

「…だめだ!」

「…に‐ちゃんが悪いんじゃないか!」

火火手が腰に手をおいて、叱りつける。

「…に‐ちゃんは悪くない。」

「…うわぁぁぁん!」

二花が大声で泣いた。

「…あんまり叱っちゃ駄目じゃない。」

やってきた花鈴が二花を抱きしめて慰める。

…むっ。

「…そんなこと、
言われなくても分かってる!」

…火火手が言った。

「…なんでそんなこと言うの?」

「…まず、説明して!」

…花鈴が言った。


❀❀❀


花琴宮の本殿で箒を筆にして、
十二星座の魔法陣の絵を描く。

「…だから、
封じ込めれてなかったって言われたから!」

「…だから?」

「…あっ!」

…途中で二花は、
魔女に口止めされたことを思い出す。

「…むぐっ!」

二花は、両手で口を押さえた。

……                    ……
 …                    …

「…私が願いを叶えてあげよう。」

魔女の老婆が呪文を唱える。

「…4日間、
猫神様を女の子に変えてあげる。」

…魔女は続けて言った。

「…時間は4日後の夜中の0時まで。」

…老婆は笑って言う。

「…そのかわり、
誰かにこのことを話すと…

魔法がとけて、
女の子は猫に戻ってしまうからね。」

……                    ……
 …                    …

…魔女と約束したことを。

「…にぃちゃんなんて、大嫌いだ!」

「…ど‐ゆうことだよ。」

…訳わかんないって言うように
火火手が首を傾げる。

「…星を降らせるぞ。」

火火手が呪文を唱えると、
魔法陣に星屑が落ちて、流れ星が流れる。

魔法陣の真ん中に二花が座っていて、

その流れ星に両手を合わせて
お願い事を唱えた。

幾千もの流れ星が頭上を流れる。

「…3つだけ、
お願い事を叶えてあげよう。」

…流れ星の精が言う。

「…一つ目は、
蕾と結婚すること。」

「…二つ目は、
蕾とdate♥すること。」

「…三つ目は、
星座になって永遠に生き続けること。」

…昼なのに夜空の星がきらきら輝いて
十二星座の乙女座が天国にお願い事を届けた。

「…鎌足、召喚!」

…ボン!とハートの煙がでてきて、

中臣鎌足がくぐつ人形で
でてくると、糸で縫い合わせられた

おもちゃの人形がコロン…て、転がる。

そして、すらっと背の高い
ホクロのある綺麗な顔をした鎌足がいた。

…黒いスーツ姿の人だった。

「…どうしたの?」

…鎌足は大人しくて静かな雰囲気だった。

そして、ポケットに手を入れると
いくつかのキャンディを手にとって、

二花にあげた。

「…これ。」

「…魔法のマシュマロキャンディ。」

「…魔法のマシュマロキャンディ?」

「…何が起きるの?」

…二花が言った。

「…変身。」

…鎌足が言った。

「…猫変身?」

「…変身‐!」

仮面ライダーのキメポーズをして
二花が笑った。

「…蕾のは?」

「…蕾のもあるよ。」

「…うわ‐い♥!」

…蕾が魔法のマシュマロキャンディをもらう。

魔法のマシュマロキャンディを食べると、

なかは薄い膜の張った
キャンディでジャムが入っていた。

マシュマロがふわっとして、
キャンディがカリッとしていて、

なかはジャムで美味しかった。

マシュマロキャンディを食べると、
二花も蕾も体がどんどん大きくなって、

大人になってしまった。

「…変身‐!」

二花と蕾がそう言って、
仮面ライダーのキメポーズをしながら

マシュマロキャンディを食べる…。

すると、茶の大きな猫手に長い尻尾、
ふわふわの猫耳がついた紅葉柄のワンピ型の

ミニドレスと紅葉柄のワンポイントがついた
タキシードを着た二人に変身した。


❀❀❀


「…これは。」

二花は、手をぐ‐ぱ‐しながら
びっくりして言った。

「…大人?」

「…二花、大人になってる!」

「…え?」

「…明後日、
彼女とdateしに遊園地に行くといいから。」

「…俺も一緒について行くし。」

…鎌足がひょうひょうと言った。

「…はい。チケット。」

…遊園地のチケット二枚を受け取る。

「…大人になって良かったじゃん。」

…鎌足が言った。

「…ど‐ゆ‐こと?!」

…二花が言う。

「…そ‐ゆ‐こと。」

…蕾が続けて言った。

夕日の差し込む花琴宮に
紅葉の風が舞い込んで、石焼き芋の

車の声が響いていた。

夢海が石焼き芋を買って、
花琴宮の鳥居前にいる猫たちに

あげると、

ほくほくと美味しそうに
食べていた…。