「私が勉強する理由はさぁ」
秋穂がお椀に手を伸ばしながら、ちらりとこちらを向く。
「……何よ」
「お姉ちゃんみたいにならないようにってのも、あるんだよ」
「はぁ?」
「だってお姉ちゃん見てると、つまんなそうじゃん」
「……」
「疲れてるっていうか。人生終わった……みたいな顔に見える」
良く見てるんだな……と思い、何も言い返すことができない。うつむくわたしに見かねたのか、お母さんが口を挟む。
「雪乃にも……色々あるんじゃない? 高校生なんだし」
「……」
「学校だって色々あるでしょ。きっと。雪乃だって頑張ってるんじゃない?別にサボってる訳じゃないと思うし」
お母さんは優しい。わたしだって頑張ってるんだ。
学校では少しずつ将来に向けた話題が出始めている。「専門学校に行って簿記の資格を取る」「歯科衛生士になりたい」……でもわたしは社会に出ても、あの満員電車に乗らないといけないと思うと、「何のために生きているんだろう?」と毎日考え込んでしまう。
「せめて……電車に乗らない生活ができれば」と思ってしまうのだ。でも、きっと言っても理解してもらえないような気もする。
「……悩んでるみたいだしね。ちょっと後で聞いてみるかな」
お母さんは「ごちそうさま」と手を合わせ、食器をキッチンに運びながら呟いた。
秋穂がお椀に手を伸ばしながら、ちらりとこちらを向く。
「……何よ」
「お姉ちゃんみたいにならないようにってのも、あるんだよ」
「はぁ?」
「だってお姉ちゃん見てると、つまんなそうじゃん」
「……」
「疲れてるっていうか。人生終わった……みたいな顔に見える」
良く見てるんだな……と思い、何も言い返すことができない。うつむくわたしに見かねたのか、お母さんが口を挟む。
「雪乃にも……色々あるんじゃない? 高校生なんだし」
「……」
「学校だって色々あるでしょ。きっと。雪乃だって頑張ってるんじゃない?別にサボってる訳じゃないと思うし」
お母さんは優しい。わたしだって頑張ってるんだ。
学校では少しずつ将来に向けた話題が出始めている。「専門学校に行って簿記の資格を取る」「歯科衛生士になりたい」……でもわたしは社会に出ても、あの満員電車に乗らないといけないと思うと、「何のために生きているんだろう?」と毎日考え込んでしまう。
「せめて……電車に乗らない生活ができれば」と思ってしまうのだ。でも、きっと言っても理解してもらえないような気もする。
「……悩んでるみたいだしね。ちょっと後で聞いてみるかな」
お母さんは「ごちそうさま」と手を合わせ、食器をキッチンに運びながら呟いた。



