「……にゃおぉーん……?」

艶やかでスラリとした体型。ピンと伸びた尻尾をくねくねと波のようにくねらせながら、ゆっくりとわたしに近づいてくる。

(えぇぇ……)

恐々身構えるわたしをよそに、ひざ元までやってきて、コツンッ……と膝頭に頭をぶつける。

「あははっ! ご挨拶よ? それ」
けらけらと春おばちゃんがキッチンでお皿を拭きながら笑う。

「えっ……? 挨拶なの?」
「そうよ。歓迎されてるみたいね。良かったじゃない!」
「……」
「……嫌いな人には、寄り付かないからね。この子」
「……そうなんだ」
「うん。猫ちゃんってね、正直なんだよ」
「へぇ」
「……人間と……違ってね」

ちらりと視線を落とすと、純粋な瞳でまじまじとわたしの顔を見つめる黒猫。

「か……可愛いね……この子」
小刻みに振るえる人差し指で、そっと頭に手を添えた。

(うわぁ……ふっさふさ……)

おばちゃんの家に来てから……横浜では体験したことないことばっか。