「で? どうだった」
黒猫がまじまじとわたしの顔を覗き込みながら言う。その目はいつも通り、好奇に満ちていた。
「……本物じゃん……これ」
「だろ」
ふふんと少し黒猫が背筋を伸ばす。表情はどこか誇らしげに見える。
「驚いたよ……わたし」
「これで信じた?」
「そりゃ……信じるもなにも」
「でもさ、1回目……親に使ったんだね」
「うん……テストのつもりだったんだよ」
「……テスト?」
首をかしげて、きょとんとした顔をしている。
「そ。本当はさ、学校の友達に使いたいんだ」
「……そうなんだ」
「うん。でも、いきなり……信じられないよ。こんな話」
「だから、身近な人でテストしたんだ?」
「……ちょっと。その言い方……」
「でも、本当のことでしょ?」
「まっ、まぁ……」
「じゃ、これで学校の友達に使えるね」
にこっと黒猫が笑った気がした。テレビやネットで見る猫と違って……何だろう?黒猫の顔って、人間みたいだなって思う。……この子だけなのだろうか?
「あっ……!」
わたしは黒猫に聞きたいことを急に思い出した。
「何。どうしたの」
「あのさ、聞きたいことがあるんだけど」
「ん? 何」
前にわたしに言っていたこと。実際に今回、体験したけど……まだ理解できてないことがいくつかある。
「確か……何だっけ『入り込める』みたいなこと……言ってなかった?」
「うん。言ったね」
「でも、わたし……入り込んでなかったよ? 宙に浮いてた感じっていうか」
「それは、イメージが足りなかったからだよ」
「……イメージ?」
黒猫は「どうせ砂時計を握っただけだったでしょ?」とわたしに言った。どうやら、その場面を思い浮かべることはもちろん、入り込みたい相手のことを、強く想わないといけないらしい。
「ふぅん……そういうこと……」
「そう。じゃないと、今回みたいに浮遊霊みたいになるね」
「何よ……浮遊霊って」
「例えじゃん。例え」
「でもさ……それはそれで、別に良いってことよね?」
「浮遊霊でもってこと?」
「そう。今回だって……それで上手くいったしさ」
「まぁ。香織ちゃんがそれで良いなら」
「引っかかる言い方ね……」
「だからこの前、言ったじゃん。多分それは無理だよって」
(なるほど……だからこの前、あまり詳しく教えてくれなかったんだ……)
でもわたしは、浮遊霊みたいになれるだけでも、十分スゴイことだと思っているので……そこまでこだわりはない。
「……とりあえず、分かった」
「もう大丈夫?」
「いや、あと一つ」
「まだあるの?」
「うん。これも君が言ったことなんだけど」
「うん」
「『消える』って言ってたよね? これ使うと」
「うん。言ったね」
「それって……どういう意味なの?」
「……じきに分かると思うよ」
「何よ、それ」
「別にさ、命に関わる訳じゃないって言ったでしょ?」
「……うん」
「そしたら、それが理解できたら……使うの止めれば?」
「教えてくれないの?」
「……香織ちゃんはさ」
「……」
「聞きすぎるよ。……ちょっとは考えてよね」
「あぁ、もうこんな時間か。帰らなきゃ! じゃね」
黒猫との時間は、そろそろ終わりらしい。夜の8時50分を過ぎた頃に、わたしの部屋に入ってきた黒猫。ちらりと時計を見ると、そろそろ夜の9時になろうとしていた。
黒猫がまじまじとわたしの顔を覗き込みながら言う。その目はいつも通り、好奇に満ちていた。
「……本物じゃん……これ」
「だろ」
ふふんと少し黒猫が背筋を伸ばす。表情はどこか誇らしげに見える。
「驚いたよ……わたし」
「これで信じた?」
「そりゃ……信じるもなにも」
「でもさ、1回目……親に使ったんだね」
「うん……テストのつもりだったんだよ」
「……テスト?」
首をかしげて、きょとんとした顔をしている。
「そ。本当はさ、学校の友達に使いたいんだ」
「……そうなんだ」
「うん。でも、いきなり……信じられないよ。こんな話」
「だから、身近な人でテストしたんだ?」
「……ちょっと。その言い方……」
「でも、本当のことでしょ?」
「まっ、まぁ……」
「じゃ、これで学校の友達に使えるね」
にこっと黒猫が笑った気がした。テレビやネットで見る猫と違って……何だろう?黒猫の顔って、人間みたいだなって思う。……この子だけなのだろうか?
「あっ……!」
わたしは黒猫に聞きたいことを急に思い出した。
「何。どうしたの」
「あのさ、聞きたいことがあるんだけど」
「ん? 何」
前にわたしに言っていたこと。実際に今回、体験したけど……まだ理解できてないことがいくつかある。
「確か……何だっけ『入り込める』みたいなこと……言ってなかった?」
「うん。言ったね」
「でも、わたし……入り込んでなかったよ? 宙に浮いてた感じっていうか」
「それは、イメージが足りなかったからだよ」
「……イメージ?」
黒猫は「どうせ砂時計を握っただけだったでしょ?」とわたしに言った。どうやら、その場面を思い浮かべることはもちろん、入り込みたい相手のことを、強く想わないといけないらしい。
「ふぅん……そういうこと……」
「そう。じゃないと、今回みたいに浮遊霊みたいになるね」
「何よ……浮遊霊って」
「例えじゃん。例え」
「でもさ……それはそれで、別に良いってことよね?」
「浮遊霊でもってこと?」
「そう。今回だって……それで上手くいったしさ」
「まぁ。香織ちゃんがそれで良いなら」
「引っかかる言い方ね……」
「だからこの前、言ったじゃん。多分それは無理だよって」
(なるほど……だからこの前、あまり詳しく教えてくれなかったんだ……)
でもわたしは、浮遊霊みたいになれるだけでも、十分スゴイことだと思っているので……そこまでこだわりはない。
「……とりあえず、分かった」
「もう大丈夫?」
「いや、あと一つ」
「まだあるの?」
「うん。これも君が言ったことなんだけど」
「うん」
「『消える』って言ってたよね? これ使うと」
「うん。言ったね」
「それって……どういう意味なの?」
「……じきに分かると思うよ」
「何よ、それ」
「別にさ、命に関わる訳じゃないって言ったでしょ?」
「……うん」
「そしたら、それが理解できたら……使うの止めれば?」
「教えてくれないの?」
「……香織ちゃんはさ」
「……」
「聞きすぎるよ。……ちょっとは考えてよね」
「あぁ、もうこんな時間か。帰らなきゃ! じゃね」
黒猫との時間は、そろそろ終わりらしい。夜の8時50分を過ぎた頃に、わたしの部屋に入ってきた黒猫。ちらりと時計を見ると、そろそろ夜の9時になろうとしていた。



