「それを使うんだ」
そう言うと黒猫は、顎でくいっとわたしの机を指した。何だろう?と思い、自分の机に視線を落とす。
「……あっ」
「それね」
「砂時計……」
雑然と積み上げられた教科書の隣に、わたしは小さな砂時計を見つけた。
「そう。それを使う」
「……」
「香織ちゃんが『変えたい』って後悔している場面があるなら……その場面と、その相手を想い浮かべて」
「えっ?」
「その場面に戻ることができる」
「……戻れるの?」
「そう。戻れる」
「……本当?」
「本当だよ」
にわかには信じ難い。でも……とりあえず話を聞かなくちゃ。わたしは真剣に黒猫の話を聞くことにした。
「それって? どうやるの?」
「変えたい相手がいる時に、思い浮かべれば良い」
「それだけ?」
「うん。砂時計を握り締めながらね」
「なるほど……簡単だね……」
「簡単だよ」
わたしが過去、失敗した場面とか……変えたいなって思う場面を思い浮かべるだけで良いのか……これなら何だってできるんじゃない?って思う。「上手く使えば、その人の中にだって、入ることができるんだ」と言っていたけど、別にそこまではいいかなと思った。
「ただし」
「……?」
「日曜日言ったよね? 3分だけ。そして、3回だけ」
「えー……」
「覚えてないの? 言ったじゃん、一昨日」
「そっか……」
無限に使えるわけがないか……と思うけど、3回もあれば……十分じゃないかなとも思う。
「でもさ、3回しか使えなくても……これ、すごくない?」
「凄いよ。でも気を付けて」
「えっ……? 何かヤバいことがあるの?」
「1回使うごとに、君は『消えていく』」
「消える……? どういうことよ」
「まぁ……使えばわかる。だから、本当は3回以上使えるんだけど……それは止めた方が良い」
「怖……」
「別に命に関わることじゃないよ」
「うん……」
「とりあえず1回使ってみたら、何となく分かると思う」
「消える」その言葉が頭から離れない。黒猫は命に関わることじゃないって言ってるけど……何だか怖くなってきた。冷静に考えたら、そもそも何でわたしの所に来たんだろう?「1回使えば分かる」って……言ってることは分かるけど。
「ま、1回やってみたら?」
「絶対に3回以上やらない方が良いよ?」
そう言い残して、黒猫はベランダから外へ飛ぶように出ていった――
そう言うと黒猫は、顎でくいっとわたしの机を指した。何だろう?と思い、自分の机に視線を落とす。
「……あっ」
「それね」
「砂時計……」
雑然と積み上げられた教科書の隣に、わたしは小さな砂時計を見つけた。
「そう。それを使う」
「……」
「香織ちゃんが『変えたい』って後悔している場面があるなら……その場面と、その相手を想い浮かべて」
「えっ?」
「その場面に戻ることができる」
「……戻れるの?」
「そう。戻れる」
「……本当?」
「本当だよ」
にわかには信じ難い。でも……とりあえず話を聞かなくちゃ。わたしは真剣に黒猫の話を聞くことにした。
「それって? どうやるの?」
「変えたい相手がいる時に、思い浮かべれば良い」
「それだけ?」
「うん。砂時計を握り締めながらね」
「なるほど……簡単だね……」
「簡単だよ」
わたしが過去、失敗した場面とか……変えたいなって思う場面を思い浮かべるだけで良いのか……これなら何だってできるんじゃない?って思う。「上手く使えば、その人の中にだって、入ることができるんだ」と言っていたけど、別にそこまではいいかなと思った。
「ただし」
「……?」
「日曜日言ったよね? 3分だけ。そして、3回だけ」
「えー……」
「覚えてないの? 言ったじゃん、一昨日」
「そっか……」
無限に使えるわけがないか……と思うけど、3回もあれば……十分じゃないかなとも思う。
「でもさ、3回しか使えなくても……これ、すごくない?」
「凄いよ。でも気を付けて」
「えっ……? 何かヤバいことがあるの?」
「1回使うごとに、君は『消えていく』」
「消える……? どういうことよ」
「まぁ……使えばわかる。だから、本当は3回以上使えるんだけど……それは止めた方が良い」
「怖……」
「別に命に関わることじゃないよ」
「うん……」
「とりあえず1回使ってみたら、何となく分かると思う」
「消える」その言葉が頭から離れない。黒猫は命に関わることじゃないって言ってるけど……何だか怖くなってきた。冷静に考えたら、そもそも何でわたしの所に来たんだろう?「1回使えば分かる」って……言ってることは分かるけど。
「ま、1回やってみたら?」
「絶対に3回以上やらない方が良いよ?」
そう言い残して、黒猫はベランダから外へ飛ぶように出ていった――



