わたし――近藤香織は、地元の中学校に通う、中学2年生。
これといった趣味もない、特技もない。別に何てことのない普通の中学生だと思う。
(……はぁ)
「……テスト、来月の2日からだって!」
「えー……数学……全然分かんないんだよね」
「うちも。ほんとそれ」
(はぁー……)
1時間目の国語の時間が終わり、10分間の休み時間に入る。クラスは来月の中間テストのこと。部活のこと。好きな人のこと……話題が尽きることはない。
わたしは教科書とノートを机の中に押し込んで、両腕を組む。ため息をつきながら一人顔を伏せる。まるで誰にも興味がないかのように。
1年生の時に失敗してから……わたしに話かけてくる人はいない。
(また今日も同じか……)
(……もう、慣れたけどさ……)
「真衣ちゃんって、悠太くんのこと……好きなんだって!」
この一言。
この一言が、わたしを孤独にした。
「ねえ、香織ちゃん。絶対に言わないでね?」
「ん? 言わないよ。何?」
「私ね……悠太くんのこと……好きなんだよね」
「悠太くん……? 2組の?」
「そうそう! ……カッコ良くて、もう……」
小学校からの親友だった真衣ちゃんは、わたしだけに秘密を明かしてくれた。「絶対に言っちゃ駄目だよ?」という言葉と共に。
ちょっとした会話から、わたしは真衣ちゃんの秘密を……2組の洋子ちゃんにしゃべってしまったのだ。わざとじゃなかった。むしろ「真衣ちゃんの力になりたい!」とすら思っていた。
それ以来……もう真衣ちゃんとは1年間しゃべっていない。
それどころか、クラス中の女子を敵に回してしまっている。誰ひとりとして、わたしと休み時間にしゃべってくれる人はいない。
「さ、やるぞー」
ガラリと勢いよくドアを開けて、斎藤先生が入ってきた。
(……やっとか)
わたしは組んでいた腕を解いて姿勢を正す。机の中から、教科書とノートを取り出した。
授業の時間だけ、わたしは前を向くことができる。
これといった趣味もない、特技もない。別に何てことのない普通の中学生だと思う。
(……はぁ)
「……テスト、来月の2日からだって!」
「えー……数学……全然分かんないんだよね」
「うちも。ほんとそれ」
(はぁー……)
1時間目の国語の時間が終わり、10分間の休み時間に入る。クラスは来月の中間テストのこと。部活のこと。好きな人のこと……話題が尽きることはない。
わたしは教科書とノートを机の中に押し込んで、両腕を組む。ため息をつきながら一人顔を伏せる。まるで誰にも興味がないかのように。
1年生の時に失敗してから……わたしに話かけてくる人はいない。
(また今日も同じか……)
(……もう、慣れたけどさ……)
「真衣ちゃんって、悠太くんのこと……好きなんだって!」
この一言。
この一言が、わたしを孤独にした。
「ねえ、香織ちゃん。絶対に言わないでね?」
「ん? 言わないよ。何?」
「私ね……悠太くんのこと……好きなんだよね」
「悠太くん……? 2組の?」
「そうそう! ……カッコ良くて、もう……」
小学校からの親友だった真衣ちゃんは、わたしだけに秘密を明かしてくれた。「絶対に言っちゃ駄目だよ?」という言葉と共に。
ちょっとした会話から、わたしは真衣ちゃんの秘密を……2組の洋子ちゃんにしゃべってしまったのだ。わざとじゃなかった。むしろ「真衣ちゃんの力になりたい!」とすら思っていた。
それ以来……もう真衣ちゃんとは1年間しゃべっていない。
それどころか、クラス中の女子を敵に回してしまっている。誰ひとりとして、わたしと休み時間にしゃべってくれる人はいない。
「さ、やるぞー」
ガラリと勢いよくドアを開けて、斎藤先生が入ってきた。
(……やっとか)
わたしは組んでいた腕を解いて姿勢を正す。机の中から、教科書とノートを取り出した。
授業の時間だけ、わたしは前を向くことができる。



